smaragd | ナノ

Zauber Karte

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解読完了?


「…実を言うとさ」
「うん?」


お風呂から出てワシャワシャと新一の濡れた髪を拭いてあげていた時、不意に新一が口を開いた。


「俺、あの日撃たれて良かったって思ってんだぜ?」
「…えっ!?し、新一って実はドMだったの!?」
「なっ、何言ってんだバーロォ!!んなワケねーだろ!!」
「ご、ごめん…」


でもまぁ、確かにそうだよね。
この人がMとか絶対に有り得ないもん。


「じゃあ何でそんな風に思うの?」
「そ、それは…」
「それは?」
「だ、だからそのー…」
「うん?」
「…お、」
「お?」
「……オメーに」
「うん?」
「してもらえたから。輸血…」
「…」


思わず言葉に詰まってしまった。
こんなに真っ赤な顔で照れた新一、久しぶりに見たかも…。


「…そっか」
「……オメー何ニヤニヤ笑ってんだよ?」
「別に?ただ…」
「あん?」
「可愛いなぁ、って思っただけだよ?顔を赤くしてる新一が!」
「かっ、可愛いってオメーなぁ!」
「あ、朝刊来てるよ!一緒に読も?」
「……ったく」


っていうか、新一も恥ずかしいんだったら初めっから言わなきゃ良かったのに。
…ふふっ、でもこういう変な所で素直なところがまた可愛いんだよねー…。


「「ハーデス・サバラ…」」


朝刊を読みながら昨日見つけたアルファベットとその過程を新一に教えていると、その暗号を作ったホームズオタクの写真と名前が新聞にデカデカと掲載されていた。
暗号に付いてた指紋から割り出したらしいけど…。
何か行動遅くない?
ロンドン警視庁…。
ちゃんと仕事してんのかな…。
いや、それは野暮な話ね。
そもそも仕事してたらラディッシュなんかに頼まないわ。


「逃亡中の連続殺人犯かぁ…」
「ああ…。コイツの事を調べてみる必要があるな…」
「あ、私パソコン持ってきたよ!…はい、これ使って」
「サンキュ」


早速カチャカチャと音を立てながらパソコンを高速タイピングで弄りだした新一。
こうやって目をキラッキラさせながら事件の調査をしてる時の新一って、ホントかっこいいんだよなぁ…。


「……なぁ」
「うん?」
「…そんな事されると集中出来ねぇんだけど」


新一の言う、そんな事とは…。


「えへへ。だって新一がかっこいいのがいけないんだよ?」


画面と睨めっこしてる新一の顔に、いっぱいキスの雨を降らせる事だったりする。


「……優月っ!!」


新一はガバッ!と私に飛び掛かってきて、あっという間に2人でベッドに沈んだ。
…もしかして、私も新一に似て性欲が強くなってきた?
いや、それはそれでちょっとショックだなぁ…。


「……あ、そうだ!」
「あん?」
「残りの解いてない暗号が何なのか調べないと!」


すっかり忘れてた…!
気合い入れてベルトを外してた新一には申し訳ないけど、今はこんな事してる場合じゃないよ!


「…あー、それもそうだな。残りは何だっけ?」
「マイセンともう1つのビッグ・ベン」
「ビッグ・ベン?…あっ、そうか!」
「どしたの?」
「フッ、なるほどな…」
「え?」


新一は締め直したばかりのベルトを素早く外し、私の両足を開いて覆い被さってきた。


「ちょっ、新一何し、てっ!?」


バッ、バカ!
何やってんのこの男は!!
今はのんきにこんな事してる場合じゃないっていうのに!!


「新一ダメだよっ…!ビッグ・ベンに行かない、とっ…」


さっきまでの知的な表情はどこへやら。
不敵な笑みで腰を動かしながら見下ろす新一は、すっかり獣の顔になっていた。


「はっ…とりあえずコレが終わってからでいいんじゃね?」
「あっ、で…でもっ!」
「いつ体が縮むか分かんねぇんだぜ?だったら…!」
「んああぁっ!」
「今しか出来ねぇ事をやっといた方がいいだろ?」


何だかんだ言っても快楽の波に逆らうだなんて到底無理な話で。
徐々に自分の理性が崩れていくのを感じた。


「んじゃ、気を付けて行ってこいよ」
「…行ってきます」


この満足げなケダモノ探偵に気絶寸前まで弄ばれた後、若干痛む腰を労りつつ、ビッグ・ベンへと向かった。
…もう当分しない!


「えーっと、」


恐怖の谷、恐怖の谷…あ、あった!


−ウエスト・ミンスター橋の途中に蓋の取れた排水口があるからオメー見てこい。その排水口の脇にThe Valley of Fearって書かれてんのを見たんだよ−
−ふっ…恐、怖のっ、谷といえ、ばっ…!−
−ああ。『水のそばで重い物が無くなっていたら、水の中に何かが沈められてると見てまず間違いない。』だから何かが蓋と一緒にテムズ川に沈められてるはずだ−


仲良くしてる時に関係無い事話さないでって言ったのに……。
新一のバーカ!
今回だけだからねっ!
次また余計な事話したら半年間接触禁止令出してやる!
1人ブツブツ言いながら、橋の欄干に付いてる街灯に結ばれていた釣糸を手繰り寄せると、排水口のフタにAの文字が刻まれているのを見つけた。
…ビッグベンが2回出てきたって事は、このAも2つって意味かな?
えっ、でも何でわざわざ2回も…?
ビッグベンを2回出さなきゃいけない理由って一体…。


「…ま、いいか」


この辺は新一に推理してもらお。
えーっと、次はマイセンか…。
あ、そういえばあのお店、前にラディッシュに連れられて行った記憶がある…。
確かサウス・ケンジントン駅で降りて、ウォルトン・ストリート沿いにあったはず…なん、だけど…。


「…ビンゴ!」


お店の人に話を聞くと、何者かに毎日変な飾りを看板に付けられてて困ってるらしい。


《今日もあったから貴女にあげるわ》
《あ、ありがとうございます…》


何かよく分かんないけど、交渉する手間が省けてよかった!


「ふーん…」


お店を出た私は、その飾りをよく見てみた。
色んな色の糸の先に小さなベルが付いていて、そのベルには一文字ずつアルファベットが書いてある…。
糸を束ねてる部分にも字が書いてあるけど、汚れてて読めない。


「糸、ホームズ…」


とくれば、A Study in Scarlet…。
緋色の研究しか無い!


−There’s the scarlet thread of murder running through the colourless skein of life,−
(人生という無色の糸の束には、殺人という緋色の糸が一本混じっている)
−and our duty is to unravel it,and isolate it,and expose every inch of it.−
(僕達の任務は、その糸の束を解きほぐし、緋色の糸を引き抜き、端から端までを明るみに出す事なんだ)


ホームズの言葉に従って赤い糸を取ると、ベルにはRの文字が書いてあった。
これで暗号は無事に解読完了。
今まで見つけたアルファベットは…U、T、N、S、R、A、A…。
仮に1つの単語を導くとすれば…。


「…SATURN、土星?」


土星といえば、ローマ神話に登場する農耕神のサートゥルヌスが真っ先に思い浮かぶんだけど…。
英語だとSATURNって呼ぶし。
じゃあつまり、この暗号の意味は土曜日…って事かな?
SATURDAYの語源はここから来てるし…。
…あれ?
でもそしたらAが1個余っちゃう…。
どういう事??


《…チェックメイト》
《くそっ!…もう一回勝負だ!》
《テメェ!もういい加減にしろよ!》
「…」


結局、もう1つのAが何なのか一向に答えが出ないままホテルに帰った。
…ら、何でここにいるのか知らないけど、3代目キッド候補のジェイデンが新一と仲良くチェスをしていた。


bkm?

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