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Zauber Karte

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メタボの命令


「Hello〜優月!」
「…Helloじゃないわよラディッシュ…今何時だと思っ」
「え?今は昼の1時だろ?いやぁ〜、カミさんが作ってくれた弁当は今日も絶妙な味付けでうまかったぞ〜!」


ぷっつーんと何かが切れる音がした、気がする。


「ねぇラディッシュ、ランチの後の脳トレ代わりにいい事教えてあげる…」
「いい事?」
「1つ、世の中には時差っていうものが存在するっていう事…2つ、こっちは今、夜中の3時だって事をね!」
「あっ…そ、Sorry優月!わざとじゃないんだ許してくれ!」
「わざとじゃなかったら何したっていいのか!?ああ!?」
「いや、それは…」
「ああ、そうか。テメェあまりにもメタボになりすぎたせいでとうとう脳ミソにも脂肪がつき始めたか!どうりで頭が働かないわけだ!」
「ヒ、ヒドイ…」


たっぷり説教をかました私は、いつの間にかすっかり目が覚めてしまった。
覚醒ついでに何で電話したのかを聞いたら…


「えーっ!?また行くのぉ!?」


メタボ警部の話を纏めると、NY市警署長(つまりラディッシュの上司)の親戚の少年(名前はジェイデン)が住むロンドンで、奇妙な事が起こっているらしい。
その奇妙な事とは、怪しい男が色んな場所で謎の暗号文が書いてある紙を渡しているとか。
で、その暗号を私に渡欧して解いてきて欲しいと…。


「その暗号文が書いてある紙はな、ジェイデンだけじゃなく色んな子供にも配ってる様なんだ。もうすぐロンドンで人が死ぬ、どうしても解けなかったらホームズに泣きつけ…と耳元で囁きながらね。まったく、Scotland Yardの奴らも親の対応で大変だろうに…」
「ふーん…」


ホームズの聖地、ロンドン…か。


「…どうでもいいけど、なーんでわざわざ渡欧しなきゃなんないワケ?今ここで解いてあげるわよ」
「あー、えーっと、そ、それがなぁ…。ジェイデンのヤツ、優月に直接会って暗号を渡すまでは、我々アメリカの警察には教えないって言って聞かないんだ…」
「はぁ!?」


何だその暴君少年、ジェイデンってヤツは!?
子供のクセに警察を踊らせるなんてただ者じゃないよ!


「で、でも学校あるし」
「おや?次の週末、帝丹高校は4連休だろ?」
「…はぁ?何でラディッシュが知ってるのよ?」
「あ、いや…そ、その話は置いといてだな…」
「ラディッシュ」
「えっ?」
「私に何か隠してない?」
「……いや?」


コイツ…。
しらばっくれる気ね。


「ふーん、そう…。じゃあ今度そっち行った時に」
「OK、OK!全て話すからそれだけはやめてくれ!」


ラディッシュが何故、帝丹高校が4連休という事を知っていたのか。
それは…


「えっ?優作さんに聞いたの?」
「ああ…」


実は私に頼む前、優作さんに相談していたらしい。
でも締め切り前で忙しく、それどころじゃないから私に頼んだらどうかと言われたと…。


「なるほどね…」
「ちなみにもう飛行機もホテルも手配済みだからな」
「ちょ、勝手に決めないでよ!てゆうかラディッシュが手配したわけ!?」
「いや、ジェイデンの両親だよ」
「りょ、両親?」
「息子をかなり溺愛していてなぁ…愛する息子の願いならと進んで手配してしまった様で…」
「…」


子が子なら、親も親よね…


「はぁ…。分かったわよ、行けばいーんでしょ?行けば」
「Thank You優月っ!本当に助かるよ!これで私も署長に怒鳴られずに済む!」
「ねぇ、その怪しい男ってどんなヤツなの?」
「ああ、詳しくは知らないが…何でも色黒で帽子を被った男らしいぞ」
「…」


まさか、平次くん?
…あははは、そんなワケないか。


「あ、それと…」
「え?」
「ジェイデンの両親、かなり気合い入れた様でな…。優月が乗る飛行機は特別にファーストクラスを予約したそうだ」
「…へー」


親は一体どんなボンボン生活送ってるワケ?


「それだけじゃないぞ!泊まるホテルはあのサヴォイのスイートだ!」
「サ、サヴォイ!?」


イギリスを代表する超名門、超高級一流ホテルじゃない!


「行く行く!喜んで行くわ!やったぁー!あのサヴォイに泊まれるなんて!」


神様は私に微笑んでくれた!


「ラディッシュも一緒に行くでしょ?」
「えっ!?いや、私は…」
「…まさかラディッシュ、女1人で行かせる気だったワケ?」
「ええっ!?あー、えーっと…」
「どうなのよ?んー?」
「……わ、分かった」
「うふっ!じゃあそういう事でよろしく頼むわね!」
「…OK、じゃあおやす」
「警部!クィーンズ区の住宅で殺人事件です!」
「…らしいからついでに頼むよ、優月」
「……」


この後、私は一睡も出来ずに朝の授業を受けるハメになったのは言うまでもない。


bkm?

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