smaragd | ナノ

Zauber Karte

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不法行為


PM 6:30


ここがファーイーストオフィス…か。


「関係者以外の無断立入りを禁ずる…だって。残念ね」


さてどうしようかな…。
他に行く場所なんてあったっけ…?


「禁じられると…」
「え?」
「入ってみたなるんが…」
「は?」
「探偵の性…」
「……」


前から思ってはいたけど、実は探偵と犯罪者って紙一重…?
ってゆーか快斗は探偵じゃなくて怪盗じゃん。


「あのー、お三方知ってます?正当な理由がないのに人の住居もしくは人が看守する邸宅、建造物、廃墟に侵入した場合、住居侵入罪が成立するのよ。ちなみにこれを犯した場合、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金…」
「まぁまぁ!そう堅い事言わんでもええやないか!」
「……」


まぁ、いっか…。
ここを調べないと行き詰まりそうだし…。


「殺害されたのは西尾正治。ファーイーストオフィスの営業部長。ライフルで狙撃されたらしい」
「ふーん…」
「社長の伊東とは、大学時代の同級生…」
「えっ、じゃあ…」
「西尾も犯罪研究会におったんとちゃうか!?」
「ご明察…。来たまえ」
「来たまえって…おい!それ、俺の携帯やないか!?いつの間に…」
「あはは…」


まぁ本職は泥棒ですから…。


「見たまえ」
「どれどれ?」
「この写真の最前列中央にいるのが、当時部長だった伊東末彦。その右隣が殺害された西尾だよ」
「ふーん…」


何かチャラ男って感じ…。


「ねぇ、伊東さんの左隣の女の人は?」
「ああ、その女性は清水麗子。彼女もこのオフィスに勤めてたらしいけど、5月15日に自殺しているよ…」
「「えっ!?」」
「自殺やて!?」
「警察から任意での事情聴取を受けてた期間中にね…」
「西尾さんの射殺事件の事で?」
「かなりキツく取り調べられたらしいよ?」
「……」


それは何か理由があったからよね…。
何で警察は清水麗子に目をつけてたんだろう…?


「ここがその狙撃事件の現場…」
「へぇ…」
「少しホコリをかぶってるけど」
「事件当日のまんまみたいやな…」
「まあ、その時はこのブラインドも窓も開いてたらしいけどね…」
「ふーん…」


快斗の話を聞きつつ、西尾さんが座っていた椅子や、倒れていた床を調べた。
そういえば、私の本来の目的って快斗の命を狙う奴らを突き止める事よね…。
私の推理だと、現金輸送車を襲撃した犯人は伊東、清水、そして西尾…
そしてあのドMな依頼人の正体は、恐らく伊東末彦…ってところかしら。


「…ねぇ」
「ん?」


窓際に立ってる快斗にコッソリ話しかけた。


「深山と伊東って無関係じゃないわよね…?」
「ああ、それもさっき分かった」
「……」


となると…。
もう私の出番は無いって事か…。


「平次くん」
「ん?」
「私、今回はこの辺で降りるね…」
「えっ…」
「降りるって…何でや?」
「だって、平次くんと新一が解決してくれるんでしょ?なら私は必要ないじゃない…それに今日は頭がうまく働かないんだ…」


新一と一緒にいると、色々考えちゃって集中できないよ…


ピリリリリリリ


「げっ…!」


とうとうあのドMからかかって来ちゃったよ…!


「も、もしもし…」
「やぁ、花宮さん…。次のステップに進んだようだね」
「……」
「解決して欲しい事件がわかったかな?」
「…西尾正治氏射殺事件、でしょ?」
「ほう…」
「ねぇ、貴方の正体ってまさか」


ツーツーツー


「…図星ね」


ガシャーーーンッ!!


「えっ!?」
「何や!?」
「バイク!?」
「いい展開じゃない事だけは確かだね…」


私達は大急ぎで部屋を飛び出した。


「何よこれ!最悪な展開じゃない!」


何で建物の中にバイクで入ってくんのよっ!


「何やコイツら!?」
「ゲームを面白くするってヤツなんじゃないのかな!?依頼人が言ってた…」
「オモロすぎるで!」
「やーだー!あ…ちょ、待ってよ!」


この3人速すぎだよっ!
どんだけ運動神経良いワケ!?


「このままじゃマズい!二手に別れよう!」
「わかった!」
「よっしゃ!」
「えっ!?」


ど、どっちに行こう…


「優月!こっちに来い!」
「あ…待って!」


とりあえず新一と快斗が逃げる方向に走ったものの……


「ふぇーん!2人共速いよー!待って…わぁっ!」


ズザァッ!!


「いったぁー…」


何でこんな時に転ぶのっ!


ブルンブルンッ!!


「あ…」


もうダメだ…!


ブイィイィィインッ!!


轢き殺されると感じて目を瞑った直後、後ろから盛大に何かが崩れる音がした。


「え…?」


振り返るとバイクに乗った怪しい人の姿は無く、ペンキ缶の山が出来ていた。


「あ…」


新一が、助けてくれたんだ…


「いつまでそうやってんだよ…」
「え…?」
「ほんっと、いつまで経っても手がかかるよなオメーは…」
「……」


私に手を差し出す新一をキッと睨む。
何だか悔しい気持ちが込み上げてきた私は、新一の手を借りないで自分で立ち上がった。


「悪かったわね!蘭みたいにしっかりしてなくて!」
「…はぁ?何で蘭が出てく」
「参ったな…ペンキがシャツに飛び散って台無しだ」


ブルン…


「「「!?」」」


バイクの音!!


「くそっ!」
「あ、新一っ!」


新一はスケボーに乗って部屋を飛び出して行ってしまった。
1人で大丈夫かな…。


ガサッ


「…え?」
「これ、2人乗りへーきか?」


快斗は私が背負ってたスケボーを床に置きながら言った。


「…うん!」


快斗も新一が心配なんだよね…。
ライバルじゃなかったら、きっといい友達になれると思うんだけど…って


「か、か、快斗っ!」
「んー?」
「は、速いっ!飛ばしすぎっ!」
「…振り落とされねー様にしっかり掴まってろよ!」
「ぎ、ぎゃあーーっ!!」


bkm?

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