smaragd | ナノ

Zauber Karte

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ことわざ対決


「クライ、クライ…授業の名前か省略か…」
「部活は?」
「そやな…」
「……」


あのー、私達すぐ後ろにいるんだけどなー…。


「他に考えられるのは…」
「…横浜犯罪研究会じゃない?」
「っ!?」
「クライム・リサーチ・オブ・ヨコハマ…」
「あん?」
「僕はこのクラブが限りなく正解に近いと思いますけど…」
「何や自分?優月の新しいコレかぁ?」


親指立ててコレって…。


「ち、違うよ平次くん…。彼は昔ロンドンのとある事件で知り合った白馬探くん。ただの友達だよ」


ホントは黒羽快斗だけど。


「フッ、僕はキミと同じ立場の人間ですよ。色々な意味でね…」
「同じ立場やと?」
「警視総監の息子で、高校生探偵やってるんだよね?」
「ああ、小学生探偵のキミには負けるけどね」
「なるほど…。親父が大阪府警本部長の俺と同じっちゅーワケか」
「それだけじゃないさ…」


快斗(見た目は探くん)が自慢げにIDを見せつけた。
…園子からスッたIDがこんな所で役に立つとはね。


「ほんならお前も…」
「僕の大切な人もミラクルランドにいてね…」


快斗は何でこうも嘘がうまいのかなぁ…


「まぁ、無駄話は歩きながら…。時間の浪費はそれこそCRY…泣くハメになる」
「…そやな」
「あはは…」


そういえば探くんもこんな事言ってたような気がする…。


「なぁ優月」
「うん?」
「この白馬っちゅー男…ホンマにただの友達なんか?」
「うん、友達だよ?」


本物にはまだ1回しか会った事ないけど。


「ホンマかぁ?じゃあ何でさっきからお前ら手ぇ繋いでんのや?」
「えっ!?あー、えーっと…」
「迷子になってしまうと困るからですよ…ね?優月さん?」
「そ、そうなの!探ったら心配性で…」
「ふーん…」


危ない危ない…


「おい、誰か居ぃひんのか?おい!」
「…居ないなら出直」
「入んでー!」
「……」


この前といい今日といい…
平次くんって何事にも平気でズカズカ入ってくる人だよね…


「大した資料やな…」


へぇ〜…。
大学ってこんなクラブもあるんだぁ…。
あれ?
あの写真、何で外されてるんだろ…。


「なあ、見ろやこの写真…」
「研究会のメンバーのスナップらしいね」


この中に犯人がいるのかな…


「ねぇ、この写真一応撮っといた方がいいんじゃない?」
「せやな…」


ピリリリリリリ


「依頼人?」
「あぁ…」


ピッ


「なんや」
「想像以上だよ、服部平次くん…。YOUCRYでそこまで突き止めるとは…。キミ達には驚かされてばかりだ」
「あんなぁ!どーでもえぇけど、事件解いて欲しいんやったらヒントぐらいもっと簡単にしてくれへんか?」
「そう簡単に解決されたんじゃ、私は面白くない…。それに試しているのだよ。キミ達の探偵としての技量と、私の事件を解く資格があるのかをね…」
「何やと!?」
「ここから先はノーヒント…。期待しているよ、若き探偵諸君…」
「おいこら!ちょー待て!…くそ、切りよった…」
「ノーヒントか…」
「どないせーっちゅうねん!」


まさかあのドM、平次くんに罵倒されたくて電話かけたんじゃ…?


ガチャッ…


「あれ?キミ達…」
「「!?」」


あーあ。
私、知ーらない。


「何か用かい?」
「あはは…あ、いや…俺達はその…」
「来年、この大学を受験するつもりなのでちょっと見学を…」
「へぇ〜」
「じゃあ、入学したら是非うちのクラブに入ってね!」
「えぇ、もちろん」


あ、そっか!
快斗が嘘をつくのが上手い理由がわかったかも!
この人の人生、色んな嘘の固まりで作られてるからだねきっと。


「ねぇねぇお姉さん!あそこに並べてある写真、なぁに?」
「え…?あぁ、左から歴代の部長の写真よ」
「じゃあどうして3代目の部長の写真、外したんですか?」
「「え!?」」
「だってほら、1番最後の写真の横に止め金具が付いてるし、3番目の写真よりも後から写真の横からちょっとずつ日焼けしてない壁が見えてるじゃない?」
「これ、何か理由があって3代目の部長の写真が外されて、後の写真を順番にずらしたんですよね?」
「…除名処分になったんだ。3代目の伊東さんは…」


除名処分?


「あぁ、確か伊東次郎さんでしたっけ?」
「いや…伊東末彦さんだけど知ってるの?」
「えぇ、まぁ…確かこの人ですよね?」
「違うわ…この人よ」
「あは、そうでしたか…すいません、どうやら僕の知ってる伊東さんとは別人の様ですね」
「役者やの〜…」
「あははは…」


快斗ったら何つー聞き方してんのよ…
もしかしてナンパでよく使ってる手口の応用なんじゃないの?


「今から白馬のオヤジとジィちゃんに電話すっから、オメーはその辺適当にぶらついてろ」
「はーい」


私達は大学の中庭に出た。
多分快斗も平次くんも、伊東末彦の事について調べて貰うんだろうな〜と思いつつ、階段に座りながら空をボーッと眺めてた。


「……」


新一はきっと、快斗が探くんに変装してる事、分かってるんじゃないかな…。
証拠はないけど…
何となく、そう感じる。


「…なぁ」


隣を見ると、何故だか思い詰めた様な表情を浮かべた新一が私の横に立っていた。


「……何?」


な、何だかドキドキする…。


「…オメー、どう思ってんだ…?」
「…え?」
「だから…アイツの事…」
「どう、学食で食事でもしないかい?血糖値が下がると、どうにも頭の回転が…」
「あ…」


何か分かった事あったのかな?
そう思いながら快斗の方に駆け寄った。


「アホ、そんな暇あるかい!こっちは電話待ってんねん…武士は食わねど高楊枝っちゅーしな」
「でも、腹が減っては戦は出来ぬ…とも言いますよ」


口で快斗に勝てる人がいたら見てみたいかも。


「それに…キミが調べようとしている事は、もう分かりましたし…」
「えっ?」
「大阪府警より横浜に近いからな、警視庁の方が…」
「ムカつくやっちゃなー…」
「さ、そうと決まれば食堂に行きましょう」


私達4人はテーブルを囲った。
ちなみにあんなことわざを言ってのけた平次くんは、何故かカレーを注文し、血糖値がどーのこーの言ってた快斗はコーヒーだけ。
そしてホームズオタクの新一は、予想通りアイスコーヒーのみ。
……多分この人、最後に食べ物を口にしたのは今朝だと思う。
何だか見慣れないメンバーで少し、いやかなり違和感満載で居心地が悪い。


「マズっ!何やこのカレー!小麦粉だらけやんけ!」


…と言いつつ口に運ぶ平次くんを見て、少しだけ感心した私がいたりいなかったり。


「で、伊東末彦ってどんな人?」
「伊東は今年の4月4日、馬車道で起きた現金輸送車襲撃事件の犯人として、指名手配されてるようだよ…」


そっか、だから写真が無かったのね…


「興味深いのはそれだけじゃない…」
「え?」
「彼は大学を卒業後、投資顧問会社を経営していたんだが、その会社、ファーイーストオフィスでも殺人事件が起きてるんだ…」
「何っ!?」
「ほんとに!?」
「どうだい?興味深いだろう?」
「うんうん!」
「よっしゃ!早速行ってみようやないか…そのファーイーストオフィスっちゅー会社にな!」
「……」


さすが平次くん…
完食、お疲れさまでした…


bkm?

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