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Zauber Karte

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炭酸は失恋の味


「いらっしゃいませー」


馬車道に着き、目についたコンビニに入った。
そして適当に雑誌を手に取り、パラパラとページを捲る。
周りから見れば、ありふれた迷惑な立ち読み狙いの客でしかない。
でも今の私は雑誌なんて興味が無いし、読んでも無かった。
頭の中は新一との想い出ばかりがグルグルと駆け回るばかり。


「追って来て…くれなかった…」


それがどういう意味なのかは一目瞭然。
新一は、もう私に対して恋愛感情は無いっていう事。
本当に惨めだ。
こんな試すような事をして、1人で感傷に浸って…。


−名探偵、まだオメーの事好きだと俺は思うけどな…−


快斗…。
何を根拠にそんな事を言ったのか分からないけど、残念ながらその予想はハズレだったみたい…。
あの怪盗キッドも、読みを間違える事ってあるんだね。
ま、それはそうよね。
だって人間の心はその人にしか分からないもの。
新一の気持ちだって、新一本人にしか分からないんだから…。


カタン


雑誌を戻して飲み物を買い、外に出た。


「何でコーラなんて買ったんだろ…」


新一の嘘つき…。
私がいないと生きていけないって…。
私しか愛せないって、言ったじゃない…。


「よぉ優月!」
「え…?」


顔を上げるとそこには、お節介な色黒関西人が新一と仲良くベンチに座っていた。


「平次くん…何で…」


嫌な人物に会ってしまった。
…やっぱり今日は最悪な1日だ。
新一と仲の良い平次くんにすら嫉妬してしまう今の私は、何て心が醜いんだろう…。


「俺もお前とおんなじ仲間や…」
「え…?」


平次くんの腕を見ると、私と同じ忌まわしき物体が嵌まっていた。
あのドMが言ってた調査中の1人って平次くんだったんだ…


「…和葉ちゃん、来てるの?」
「あぁ…ま、本人は今頃ノンキに遊園地で遊んでるやろな…それより優月」
「うん?」
「工藤から面白い事が聞けたでぇ…」
「…面白い事?」


私は西の探偵から詳しく話を聞いた。
新一が向かった廃ホテルには、目だし帽、手袋、拳銃、それと4月4日の日付が印刷されたレシートが入ったバッグが発見されたそう。
更にその日、廃ホテルの前に怪しい車が停まってたそうで、夕方には車が入れ替わっていた…


「っちゅーワケや。なぁ工藤?」
「え?あぁ…」
「ふーん…廃ホテルにそんな物が…」


なるほどね。
だから刑事達は、そのバッグを持った小五郎ちゃんをキッドの仲間だと思って捕まえたんだ…


「バッグの中身と入れ替わっていた車…か。明らかに強盗しましたって臭いがするわね…」
「あぁ…あと依頼人は知ってるみたいやで?」
「え?」
「お前の元カレが工藤新一やっちゅう事をな…」
「は、服部!」
「あ、多分それは…」


指紋から分かったんだよって言おうと思った時、私達の横を一台の現金輸送車が通った。


「「あっ!」」


私と新一は同時に走り出し、車を追った。


「お、おい!どないした!?」
「あの車でピンと来たの!」
「目出し帽、拳銃に逃走用車両…!」
「そうか!現金輸送車襲撃!」


快斗が何故発砲されたのか大体解ってきたわ…!
現金輸送車を襲った犯人は、キッドに自分達の顔を見られたと思い込んで口封じをしようと…!


「あの現金輸送車って、襲われた事あるんじゃないの?」
「ええ、あるわよ…確か、4月4日じゃなかったかしら…」


道でお店を出してる易者に話を聞くと、やっぱりその日に現金輸送車襲撃事件が起きていた事がわかった。
それに犯人はガードマン1人を銃殺していた事も…


「ほんの一瞬に思えたわ。夢が現実か分からないくらいのね…」
「手際が良かったっちゅう事やな」
「ありがとうございました」
「ちょっと待って!」
「?」


易者は私達に言った。
今日は私達の人生の中で最悪の日だと…
でも私はそうは思えなかった。
何故ならもう既に、この前一番最悪の日は訪れたんだから…
あの日は私にとって、人生最悪の日として胸に突き刺さってる…
そして今でも、夢であって欲しいと受け入れられずに苦しいんだ…


bkm?

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