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Zauber Karte

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暴かれた真犯人


「ま、舞衣…?」
「まさかお前が…」
「……」


鴻上さん、青い顔をして立ち竦んでる…。
まさか練りに練った犯行が忽ち暴かれるだなんて、夢にも思わなかったみたいね…。


「飲み物を買った貴女なら、模擬店のテーブルでミルクとガムシロップを入れるフリをして、毒入りの氷を入れる事が出来ます」
「ちょっと待ってよ!舞衣はミルクもガムシロップも入れて無かったわよ!?」
「そ、そうだ!蒲田のポケットから、使ってないやつが出てきたじゃないか!」
「それは鴻上さんが、毒の入った氷を入れた後で中身がコーラだと気付いたからよ…。それを入れてしまったら、蒲田さんが飲まないかもしれないでしょ?」
「飲み物を皆さんの席へ持って行くのを、劇が始まる直前に持って行ったのは返品させない様にする為…。中身が違う事に気づいても、館内が暗くなってしまえば取り替えに行くのは面倒になってしまいますからね…」
「し、しかしそんな毒入りの氷を、どうやって持ち歩いていたと言うんだね?」
「ああ、その方法ならさっき、高木刑事が外へ出ている間にトイレの前のゴミ箱で見つけておきました…」


そう言って新一は何かを取り出した。


「このビニール製のガマ口の財布を…」


そっか…。
あの時外に出て見つけたんだ…。


「この財布の中に、毒入りの氷を小さなドライアイスと一緒に入れておけば、長時間氷を溶かさずに持ち運べます。つまり鴻上さん、貴女は毒の氷を入れた飲み物を、他の飲み物と一緒に三谷さんに渡した後トイレに行き、ドライアイスをトイレに流し、財布をゴミ箱に捨てたんです。どうですか?違いますか…?」
「さすが工藤新一君と花宮優月さん。噂通りの名探偵ぶりね…。でも忘れちゃったの?」
「…え?」
「私も蒲田君と同じアイスコーヒー。それをみんなの飲み物と一緒に三谷君に渡したのよ?彼がどっちのアイスコーヒーを蒲田君に渡すかわからないのに、毒なんて入れられるかしら?」


…最後の悪足掻きってヤツね。


「それとも、私が50%の確率に賭けたって言うんなら彩子ちゃんだって」
「バッカじゃないの?」
「…え?」
「私と新一をナメて貰っちゃ困るわね。分かってるのよ?貴女が毒入りの氷を、自分と蒲田さんの両方のアイスコーヒーに入れた事ぐらいね!」
「バ、バカな!?彼女は自分の飲み物も全て飲み干しているんだぞ!?」
「あのねぇ…その氷が溶ける前に全部飲んじゃえば済むハナシでしょ!」
「いや仮にそうだとしても、彼女のカップから毒物反応が出るはず!それを避ける為に無理に氷を出せば、周りの客に不審がられて…」
「彼女も蒲田さんの様に氷を食べるフリをして、毒入りの氷を口に含んだとしたら?」


ナイスタイミング、新一!
警部ったらギャーギャーうるさいよ!
今度また口を出してきたら、誰かさんみたいにガムテープで塞いじゃうんだから!


「そう…。彼女はその後、氷を手のひらに出して、こっそりとある場所に隠したんです。それは恐らく…」


ピン…


「鴻上さんが着ているパーカーの…」


スポッ…


「フードの中よ…」
「毒入りの氷を口に含むのは極めて危険な行為ですが、毒を氷の中心に入れていたのならやってやれない事はありません」
「し、しかし本当にフードの中に?」
「嘘ちゃうでー!」


平次くんは、さっき新一が弾き飛ばして入れた10円玉をハンカチで取り出した。


「ホーラ見てみ!10円玉の錆が取れてピカピカになっとるやろ?銅が青酸カリに触って酸化還元反応が起こった証拠やで!」


そうそう!
さっすが平次くん!
でも今日は珍しくでしゃばって来ないな…。


「しかしよく分かったな、フードの中に毒入りの氷を隠したなんて…」
「ああ、それは」
「雨が降ったから…」
「…」


鴻上さん、やっと観念した様ね…。


「外は雨が降ってるのに、さっき刑事さんを蒲田くんの車に案内する時にフードを被らなかったのを見て、不審に思ったんでしょ?」
「ええ。氷が溶けてフードの中に溜まっている青酸カリを、頭から被ってしまうのを避けたんだろうって…」
「それじゃあ、やっぱり舞衣が蒲田を…」
「ええ、そう…。私が彼を毒殺したのよ…。医者の風上にも置けない、あの男をね!」


bkm?

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