長い長い夏休みも昨日で終わり、今日から2学期が始まる。
「行ってきまーす…」
いつもの時間に家を出て、いつもの様に蘭と園子、そして愛しのコナン君と一緒に登校する為、私は探偵事務所へ来た。
「蘭!おっはよー!」
「あ、おはよう優月」
「あれ?蘭それって…」
蘭が持ってるのは氷枕。
小五郎ちゃん、風邪でもひいたのかな?
「あぁこれ?実はコナン君、今朝から熱出して寝込んでるのよ」
「えっ!?コナン君が?」
新一が熱出すなんて珍しい!
「そ!全く…何で私が看病しなきゃならないのよ」
「……」
最近思う。
もしかしたら蘭は、コナンの正体に気付き始めてるんじゃないかって。
だって以前と比べて、コナンに対しての態度が180度変わった。
まるで新一と接してるような…
でもまさか…
「ねぇ優月」
「うん?」
「この氷枕、コナンくんに持ってってあげて?」
「えっ、何で?蘭が持って行けば…」
「だってきっとコナンくん、優月に持ってきて貰った方が喜ぶと思うし!」
「……」
冷や汗が背中を伝ったのが分かる。
これはもう決定的だ…!
明らかに蘭はコナンが新一だって気付いちゃってる!!
何で!?
何で何で何で!?
アイツまた何か口走っちゃった!?
前回は誕生日を口走ったからバレそうになって…
今回は何を口走ったの!?
こ、こんな時はどうしたら…
「はい、よろしく!」
「でっ、でも」
「あ、お昼ご飯はお父さんに頼んであるからってコナン君に言っといてね?じゃあ私、階段の所で待ってるから」
「あ、ちょっ…」
私の抵抗(になってたかわからないけど)も虚しく、蘭は颯爽と私の前からいなくなった。
「……しょうがないなぁ」
諦めた私は、上にあがって小五郎ちゃん(兼コナン)の部屋をノックしてドアを開けた。
「コナンく」
「ハーックション!!…あれ?優月…」
盛大なくしゃみと鼻水ね…。
バタン…
「新一、具合大丈夫…?」
「あぁ平気だよ。熱もそれほど高くねーしな…今日1日寝てたら治るだろ」
「そう?…はい、氷枕」
「サンキュ」
何かこうやって弱ってる新一見ると泣きそうになっちゃう…
「それにしても新一が熱出すなんて珍しいね?」
「あぁ、多分疲れが溜まってたんだろ…最近おっちゃんに依頼が結構来てたしな」
「そっか…でもあんまり無理しちゃダメだよ?」
「わりぃな、心配かけて…」
「ううん。あ、ねぇ新」
「優月ー!!そろそろ行かないと遅刻しちゃうよー!!」
「あ…今行くー!!」
園子、もう来ちゃったんだ…
「今何か言いかけなかったか…?」
「あ…えっとね、蘭がお昼ご飯は小五郎ちゃんに頼んであるからって言ってたよ!」
「おー、わーった…」
蘭の事言おうと思ったけど、多分新一も気付いてるよね?
「じゃあ…ゆっくり休んでね?」
「あぁ、サンキュ…」
チュッ
「…行ってきます」
「おー、気を付けてな…」
バタン…
私は階段を降りて、蘭と園子の所に向かった。
「ごめんね待たせちゃって」
「ガキンチョ、風邪ひいたんだって?」
「うん。本人は大丈夫だって言ってたけど…」
それは嘘だと思う。
だって新一の頬にちゅうした時、結構熱かった。
でも敢えて咎めるつもりは無い。
だって、私を思いやってくれた証拠だもん。
「そういえば、新一君から最近連絡あった?」
「え…?あ、ううん無い…よ?」
「全くしょうがないわねー。ねぇ、あんな薄情な奴やめて他の男にくら替えしたら?」
「く、くら替えって…」
「例えば…あ、江古田の黒羽くんとか!」
「えー!?」
何でここで快斗が出るのよ!?
「だってさ、優月の話聞いてるとすごく優しそうだし、頼りになるんじゃない?おまけに新一くんに似てるって噂聞くし!」
「ちょっと園子!優月に変な事言わないの!」
「そうよ園子ったらー!確かに快斗って、パッと見は新一に似てるかもしれないけど全然違う顔つきよ。性格だって180度真逆だし」
「そうなの?でも噂では新一くんに瓜二つって聞いたんだけど」
「所詮、噂は噂!それに快斗に乗り替えるだなんて有り得ないよ!」
危ない危ない…
本当は新一に瓜二つだって事がバレたら仕事の邪魔しちゃいそうだもんね。
そんな今日は、私が1番憂鬱に感じていた進路調査。
まぁとりあえず第一希望だけ書いて提出し、蘭と園子と楽しくランチタイムを繰り広げていた。ら、
−2-B花宮っ!2-B花宮っ!!至急!大至急だ!!大急ぎで!生活指導室に来いっ!!…ガチャッ!−
機械が爆発するんじゃないのっていう位の勢いで校内に轟く担任の怒号。
「あは、やっぱり?」
「ちょ!アンタ何したのよ!?」
「うん、ちょっとね…」
「は、早く行った方がいいよ優月…」
「はーい…」
大至急と言われると歩いて行きたくなっちゃうのが探偵のサガ。
バンッ!
「お前!何なんだこのふざけた進路はっ!!」
担任のゴリラが両手を机に叩きつけて吠えた。
…ホントにゴリラみたい。
「あーうるさいなぁ。いいじゃないこれが第一希望なんだから」
「こんなふざけた進路があってたまるか!!」
「ふざけてないわよ!いいじゃない別に!何で新一のお嫁さんになっちゃいけないワケ!?」
「ダメだダメだ!お前は東都大!俺ん中ではそう決定してんだよ!」
「はぁ!?ふざけないでよこのゴリラ!何で私が大学なんか!」
「お、お、お前今俺の事ゴリラっつったな!?」
「ええ言ったわよ?ゴリラにゴリラって言って何が悪いのよこのゴリラ!!」
私が成績優秀じゃなかったら即刻退学だろうなって思うくらいの大喧嘩を繰り広げた。
その内他の先生達も続々入ってきて、みんなで私に東都大を薦めてくる。
しまいには校長まで出てくる始末。
何て人権を無視した学校なの!?
「東都大だ!」
「いやよ!」
「絶対に東都だ!」
「嫌です!」
「お願いだから受験しなさい!!」
「嫌と言ったら嫌です!!」
「頼むからわが校の為にも東都大を…」
「はい、進路相談しゅーりょー!!」
「ちょ、おい花宮っ!まだ話は終わっ」
バタンッ!
全くもう!!
何で私があんなつまらない大学に入らなきゃいけないの!?
学費が勿体無いじゃない!
東都行く位ならハーバード行くわ!