smaragd | ナノ

Zauber Karte

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近いようで、遠い


「…ん…あれ…?」


ここ、ドコ…?


「……あっっ!!」


そうだ!
隠れんぼしてたんだ!


「うっかり寝ちゃった!早くみんなの所に戻らないと!」


時計を見ると既にお昼ご飯の時間なんてとっくに過ぎていた。
朝から今までずっと眠ってた自分に一瞬驚いたけど、すぐに納得できた。


「うぅ…最悪…」


体が物凄く怠く、全身が熱くなっていた。
熱、上がってるじゃん…。
これはもう微熱なんて呼べないレベルの高熱だ…。
体感温度からして、多分40℃位かな…?
あははは…。


「…みんな、どこ行ったんだろ…?」


園子じゃないけど、この広い船内を1人で探すなんて到底無理な話だ。
しかもこんな体調で…。


「優月っ!!」
「…え?」


後ろからとんでもない怒鳴り声が聞こえたのは気のせいにしたい。
でもそれは不可能な事で。


「し…新一」


あぁ、絶対怒ってるなって感じた。
だってあんな物凄い形相でダッシュしてくるコナン君見たら、誰だってそう思う。
さすが100メートル走12.2秒の速さなだけあって、豆粒くらいの大きさに見えた新ちゃんが、あっという間に見慣れたサイズに早変わりした。
犯人を追い掛ける時より速かったと思う。


「はぁ、はぁ…オメー今までどこで何してたんだ!?事件に巻き込まれたんじゃねーかと思って心配してたんだぞ!?」
「あ、あの…ご、ごめんなさい?」


事件って言ったのは気のせい…?


「ったく!園子が襲われたってーのに何やってんだよ!!」
「…は?そ、園子が襲われた!?」
「ああ、オメーと蘭を探しにマリーナまで行った時に誰かに襲われた後、犯人に霊安室に閉じ込められたんだよ」
「れ、霊安室!?」
「けどアイツ、探偵バッジ持ってたからな…何とか助け出す事は出来た。今は部屋で休んでる…」
「…そっかぁ…よかったぁ…」


探偵バッジが無かったら凍死してたわね…。


「だが貴江社長が殺された…」
「えっ!?貴江社長が!?」
「ああ…ついでに八代会長も行方不明だ…マリーナに会長の鉄扇が落ちていたし、搬入口付近から会長の血痕と指紋も検出された…それに搬入口の開閉された形跡もあった事から考えて、恐らくそこから海に突き落とされたんだろうな…」
「………」


やっぱり勘が当たった…
15年前の沈没事故と、八代英人氏の事故死が関係してるんだ…


「つーかオメーどこに隠れてたんだよ!?何で時間になっても出て来なかったんだ!?」
「あ、えっと…」
「はぁ…まぁいい、その話は事件の詳細話すついでに聞くから!」
「あ、はい…」
「んじゃ、ここで立ち話は色々とマズイからオメーの部屋行くぞ…って」
「…え?」
「お、お…」
「お?」
「オ、オメー何だこの熱はっ!!めちゃくちゃ上がってんじゃねーか!!」
「あ、えへへ…つい寝ちゃって…」
「…つい、寝ただと…?」


あ、ヤバ…!


「バーロォ!!!」
「ひぃっ!」
「ふ、ふざけんじゃねーよ!!オメーはどこまで俺を心配させりゃー気が済むんだ!?ほんっと手がかかりすぎる女だなっ!!自分の体調ぐれぇ管理しねーとダメだろーがっ!!オメーもう17だろ!?そんなんでどーすんだこの先!?俺がいなかったらどーしてたんだよこのバカ女!!」
「…」


新一の言ってる事は間違ってない。
私が100%悪いんだ。
小さい頃からずっと新一に迷惑かけてるのは十分わかってるから。
だから、こういう事言われても何も言い返せないし言い返すつもりもない。


「…ごめんなさい」
「ったく、園子といいオメーといい…やっぱり蘭だけだぜ、俺の周りで唯一手ぇかからねぇ女は…」


心臓がうるさいほどドクンドクンって鳴って、息が苦しくなる。


「ほら、部屋まで送ってやっから行くぞ」
「…」


じゃあ私はどうすればいいの?
蘭みたいになれって事なの?
今の私には、言い返す気力も体力も残っていないけど、これだけは理解できた。
新一は、無意識のうちに私と蘭を比較しているんだ。
これは予想でしかないけれど、何となく新一の言いたい事はわかる。
コイツが蘭みたいにしっかりしてくれれば楽なのに…って言おうとしたんだ…。
私は、ただ黙って新一に手を引かれながら廊下を歩く。
大した距離でも無いのに、部屋までの道のりがすごく遠く感じる。
それだけじゃない。
私の手を握りながら先を歩く新一も、何故だか遠く感じた。


bkm?

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