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Zauber Karte

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探偵の勘


席についたはいいものの…


「はぁ……」


ダルいし寒気がする…。
熱、上がってきたかもしれない…。
ってゆーか何?これ…


「何で私だけ子供側の席なのよ…」
「あはは…まぁ人数的にも仕方ないよ、優月姉ちゃん…」
「確かにそうだけどさ…」


まぁでもいっか。
新一の隣だし、向かいには蘭と園子がいるし…。


「実は俺、今、豪華客船を舞台にした連続ドラマの企画書を書いてましてね…その取材で美波子さんと知り合ったんすよ!」


ふーん…


「ところで毛利さんと花宮さんは当然招待されたんすよね?それとも……何かの調査の依頼でも…?」
「いやぁ、招待というか何というか…」
「…」


日下さんの今の言い方、なんか引っ掛かる…。
でも体調悪くてそれどころじゃないや…。


「園子くんが、ワシら9人分の招待も取り付けてくれたんじゃよ!」
「そういう事だったんですか…」
「ま、保護者代わりみたいなもんすかね…」
「なるほど…なるほどね…」
「…?」


何かさっきからいちいち気になるなぁ…。


「…え?」


私の左手に小さな手が乗っかってるって事は…。


「…ねぇ優月姉ちゃん」
「うん?」
「さっきと比べて熱が上がってきてるんじゃない?」
「えっ…何でわかるの?」
「だって優月姉ちゃんの手、さっきより熱いから…」
「あ」


そっか…。
だから、さっき…。


「クスッ、あの時と同じだね…」
「え?何があの時と同じなの?」
「あ、ううん何でもないよ園子…」
「何よアンタまでそんな事言っちゃって…」


ああ、そういえばさっき蘭も同じ事…。


「沈没といえば、前に八代商船の貨物船が氷山と衝突した事故がありましたなぁ…」
「はい、15年前の冬です…」


そんな事故があったんだ…。
まぁ、私がまだ2歳の時だから覚えてるわけないか…。


「原因は船長の判断ミスで、確か乗組員が1人亡くなって、船長も船と運命を共にしたんじゃ…」
「ほんとですか!?」
「この船も沈んだらどうしよう…」
「俺、7メートルしか泳げねーよ!」


元太くん…。
せめて25メートルは泳げるようになるといいね。


「大丈夫!アフロディーテ号の船長は優秀だし、この辺りの海には氷山も無いから!」
「沈没、か…」


タイタニックみたいになったら洒落にならないな…。


「まぁ、船が沈んだ時真っ先に救助されんのはあの連中だろうな…」
「え?」


少し離れた席を見ると、元首相とご令室がいた。


「あとはタレントの…」
「麗姉妹じゃねーか!」
「……」


小五郎ちゃん、鼻の下が伸びきってるし…。


「あの連中は、八代グループ会長の招待客で…あ、噂をすれば…八代会長親子の登場だ…」


あの和服姿の2人が…。
ふーん。
なーんか会長ってワルそうな顔つき…


「娘の貴江は、婿をとって八代客船の社長を継いだ…」
「そういえば、あの貴江社長の旦那さん、ついこの間交通事故で亡くなったのよね…」
「えっ…」
「八代英人先生…私の上司で、この船の設計チームのリーダーだったわ…」
「確か、車を運転中に心臓発作を起こして崖から転落したらしいですな…」
「……」


根拠は無いんだけど、何か…引っ掛かる…。


「あっ船長さんだ!かっこいいー!」
「彼は海藤渡船長…さっき話に出た、15年前の事故の時、彼はその船の副船長だったんですよ…」
「……」


船長といい、会長といい…。
何だろう…。
スッキリしない…。
本当に貨物船が沈没したのは判断ミスが原因だったの?
15年前の事が気になる…
……ああダメだ、頭痛くなってきた。
あ〜あ…。
警部に電話で詳しく聞きたいけど、海の上だからケータイは使えないし…。
このまま、何事もないといいけど…。


bkm?

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