smaragd | ナノ

Zauber Karte

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愛の石


最近頻繁に私を呼び出してくる快斗さん。
その理由は…


「なぁなぁ…」
「…何」
「マジで俺さぁ、青子にどーやって告ったらいいんだ?」
「…快斗くん」
「へ?」
「そのセリフ、耳にタコが出来る位聞いたんだけど」
「マジで?ちょっと耳見せてみ?」


ポンッ!


「あ、ホントにタコ出来てたぜ!」
「うわぁ本物のタコだぁ!じゃないわよこのバ快斗っ!」
「痛ってぇーっ!」
「早くそのタコどうにかして!」
「は?これはオメーが夕飯で美味しく食べてやれよ!」
「1人で食べきれるワケないでしょ!?」
「じゃあ俺も付き合ってやっから!」
「…ならいい」
「俺、タコの唐揚げがいいっ!」
「はいはい、ついでにお刺身もね!」
「っしゃあ!!」


よし、話がうまく逸れたからこれを上手く利用…


「それよりマジで何て言えばいーんだよ!?」


…出来なかった。


「あのねぇ!男ならストレートに好きだって言えばいいじゃない!何百回もアドバイスしてるこっちの身にもなってよね!」


このバ快斗に頻繁に呼び出されてるせいで、学校にまで噂が飛び交ってる状態よ!
やんなっちゃう!


「だって緊張して言えねぇって!」
「じゃあキザな怪盗キッドの姿で言えば?」
「んなの無理に決まってんだろ!?」
「じゃあもう諦めたら?」
「それはやだっ!」
「はぁ…じゃあ快斗の姿で素直に"俺は青子が好きだ"って言うしか無いじゃない…」
「…やっぱそれしか無いよな〜」


実は快斗がこんなにシャイだったなんてね〜。
私には平気でキザな事言ってくるクセに。
やっぱり本命には素直になれないってのがピュアな証拠よね!
…あれ?
じゃあ小さい頃からキザな事言ってた新一ってピュアじゃないって事…?
あ、そっか。
ピュアじゃなくて当たり前よね。
だって無駄に生意気だったしSっ気あったし。


「でもそんなに悩む必要ないと思うよ?話聞く限りだと青子ちゃん、絶対快斗の事好きだって!」
「…マジ?」
「うん!だから早く伝えてあげな?青子ちゃん待ってるよ?快斗が言ってくれるの…」
「…オメーマジで大好きっ!」
「私に言ってどーすんのよ!ってゆーか抱き着かないでよね!」
「いーじゃねぇか!オメー慣れてんだろ?」
「…何かその言い方嫌かも」
「へへへ!でも強ち間違っちゃいねーよな?」
「まぁね…」


どっかのドSのお陰で"男の扱い"には手慣れたものになったわ。


「あ、そういや優月さ」
「うん?」
「コンクール1位取ったんだって?」
「…はぁ!?何で知ってるの!?」
「バーロォ、俺は天下の怪盗キッドだぜ?ジャンル問わずに色んな情報が入ってくんの!」
「ああ、そうでしたね…」


快斗には何も隠し事は出来ないなぁ…。


「しっかしオメーすげぇな!あのコンクールで優勝するなんて…将来バイオリニスト目指せば?」
「バカね!前から何回も言ってるでしょ?それはあまりにも無謀すぎるって!上には上がいるのよ?それに、いくら1位取ったからって音楽でご飯食べていけるかなんてわからないもの…路頭に迷う人だって沢山いるんだから…」


私は自分の演奏に関しては全く納得してない。
色んな人の演奏を聞いてきて実感した。
私くらいの腕を持つ人なんて山の様にいるんだって…。


「ふーん…まぁそれはどうでもいいけどさ」
「うわ、ひっどい!少しは慰めるとかしないの?」
「前にも言っただろ?俺は気の利かねぇ男なんで!」
「…ふんっ!」


じゃあもう悩み聞いてあげないんだから!


「それよりさ、さっきからオメーの首に何かついてるぜ?」
「え?」


首元を触ると、冷たくて固い感触が。


「えっ!?な、何これ!」


慌てて首からぶら下がってるものを外す。


「わぁ…!」


私の掌の上には、薄いピンク色の石がついたネックレスが乗っていた。


「快斗いつのまに…!」
「へへ、俺からのプレゼント!コンクール優勝祝いと、ついでにこの前の飛行機操縦お疲れ記念って事で!」
「…飛行機は取って付けたんでしょ?」
「あ、バレた?」
「…」


よく見るとそのネックレスについてる石は、とっても可愛らしいハート型になっていて、シルバーのチェーンにも小さくピンク色の石がちりばめられていた。


「可愛いネックレスだねー…でも随分凝った作りしてるし珍しいデザイン…」
「まぁな!だってこの世で1つしか無いんだし」
「…え?どういう事?」
「それさ、俺が作ったんだ」
「…ウソッ!?快斗にそんな特技があったなんて知らなかった!」
「へへへ!俺結構器用だからさ!ちなみにこの石をハート型に削ったのも俺!」
「ええっ!?」


そういえば最近、アクセサリーを自分で作る趣味を持つ人が増えてるってテレビでやってた。
でもかなりの技量がないと難しいって言ってたのに…


「す、すごいよ快斗っ!さすがキッドやってるだけあるじゃん!」
「へへ、サンキュー!ちなみにその石、何だかわかるか?」
「えーっと……ごめんわかんない…」
「まぁそりゃそーだよな!ピンク色の石なんて結構種類あるし…」
「うん…で?この石はなぁに?」


私が聞くと、快斗はネックレスを手に取りながら答えた。


「これはな、ローズクォーツってんだ」
「ローズ…クォーツ?」


あ、そういえばどこかで聞いた事あるかもしれない…
意味とかはわからないけど。


「このローズクォーツはな、自分に自信がない人がこれをつけると、内面から自分を愛することが出来る。つまり自信がつくようになるんだ」
「自信が…?」
「そっ!だから、将来に対して悲観的なオメーにはピッタリの石っつー事だ!」
「へぇ!そうなんだ…」


…あれ?


「でもさ、自信がつくようになる宝石なら他にもいっぱいあるんじゃない?例えばカルサイトとか…」
「いや、これじゃなきゃダメなんだ…」
「え?」


快斗はそう言った後、私の首に手を回してネックレスをつけながら言葉を続けた。


「ローズクォーツはな、鉄より硬くて衝撃にも強いんだ。その性質から"真実の愛"、"永遠の愛"を象徴してて、特に恋愛に対しては効果がすっげー高くてな、これを身に付けてると、幸せな結婚が出来るって言われてんだぜ?」
「幸せな、結婚…?」
「そっ!」


快斗の顔が離れたと思ったら、人懐っこい笑顔を私に向けた。


「やっぱ親友には恋愛も将来も全部うまくいって幸せになって欲しいからさ!まぁ、あの名探偵なら心配いらねぇと思うけど…一応お守りとして!」
「快斗…」


ぎゅっとその想いの象徴を握りしめると、自然に涙が溢れた。
首に感じてるこの重さは、快斗の想い。
私の幸せを願った想いがいっぱい詰まってるんだ。


「…ありがとう、快斗」
「おー、気に入ったか?」
「うん!大切にするね!」


改めて感じた。
快斗に出逢えてホントに良かったって。


「つーかオメーはホント泣き虫だな!これ位で泣くなって!」
「ぶっ…ちょっ、そんな乱暴に拭かないでよっ!ってゆーか袖じゃなくてハンカチ渡すでしょ普通!」
「いや〜それがハンカチ忘れちゃって…」
「もうっ!」


せっかく感動に浸ってたのに!


「あ、そういやオメー、今度八代商船のクルーズ船に乗るんだったよな?」
「うん、そうだけど…」
「じゃあやっぱこの石にして正解だったな!」
「えっ?どういう意味…?」
「ローズクォーツの別名は、愛と美の女神アフロディーテの石ってんだぜ!」
「あ、それって…」
「そ!オメーが乗る船の名前とおんなじ!このネックレスつけてったら何か良い事あるぜきっと!」
「…うん!そうだといいな!」


bkm?

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