「え?クルーズ船に!?」
「そうよ!どう、嬉しいでしょ?」
「も、もちろん嬉しいけど何でまた…?」
夏休みも終盤に差し掛かったある日。
新一からのキスマークも消えかかってきたなぁ…って名残惜しく感じながらメイクをしてたら、突然園子がうちにやってきた。
…蘭とコナンくんを引き連れて。
うち、オートロックなのにって一瞬思ったけど、新一が開けたんだろうなって分かったから敢えて突っ込まなかった。
そして開口一番、
「飛行機の次は船よ優月っ!豪華クルーズ船の旅が出来るわよ!」
と言いながらドカドカとうちに侵入してきた。
親友とはいえ、結構迷惑だったりする。
「本当はうちの親が招待されたんだけどさ、どうしても都合がつかなくって…だから私が行く予定なんだけど、どうせならみんなで行った方が楽しいじゃない?だから優月も誘おうと思って今日来たワケ!」
さすが鈴木財閥っ!!
「ありがとう園子!愛してるよっ!」
「あんたってホント現金なヤツよね…」
「何とでも言えっ!わぁーい!船だっ、船だっ」
あっ!
そうと決まれば…
あーしてこーして…
「うんうん、いいかもいいかも!うふふふふっ!」
「優月どうしたの?さっきからニヤニヤしちゃって…」
「ううん!何でもなぁーい!クルーズ船、楽しみだねコナンくん!」
「そ、そうだね…」
「あ、そうそう!今日来たのは船の話だけじゃないのよ!」
「えっ?他に何かあるの?」
「ほら、2学期入ったらすぐ進路相談でしょ?蘭と優月はどうするのかなぁと思って…」
「ああ、進路ね…」
さすが進学校だなって思う。
2年の夏休み明けから進路について考えなきゃいけないなんて憂鬱になる。
「私はもちろん大学行くけど、蘭はどうするの?」
「私もとりあえず大学進学かなぁ…優月は?」
「う〜ん…私は大学はちょっとね…」
「「「えーっ!?」」」
「な、何よ3人共…」
何でそんなに驚くのよ…?
「あ、あんた大学行かないの!?無駄に頭いいのに勿体無い!」
「そうよ!どうして!?」
「あ〜、ごめん言い方悪かったかも…」
「えっ?どーゆー事?」
「多分ね、アメリカに住んでたら大学に行こうって決めてたと思う。ほら、あっちは入るのは簡単だけど出るのはとても難しいじゃない?だから毎日が発見の連続で刺激的だと思うの。それって楽しそうでしょ?」
「あ、そっか…」
「なるほど…。つまり、こっちの大学は入るのは大変だけど出るのは簡単だから、入った後つまらなさそう…って事ね」
「そうそう!」
「じゃああんた、進路はどうするのよ?まさかフリーターにでもなるワケ?」
「やだなぁ、そんなワケないでしょ?まだ具体的にはわからないよ。もしかしたら気が変わってこっちの大学に入りたいって思うかもしれないし…」
正直言って今日が初めてよ。
進路の事、真面目に考えたのなんて…
「そういえば新一は進路どうするのかな?」
「どうなんだろ…聞いてないけど今はそれどころじゃないんじゃない?」
「ふーん…ま、アイツの事だから事件事件で進路の事なんか全く考えてないでしょうね!」
「あははは…」
小学生になってるから考えたくても無理だしね…。
「あ、ねぇ前から聞こうと思ってたんだけどさ、優月と新一君っていつ結婚するか話し合ってるの?」
話し合い…?
「……あぁっ!!」
は、話し合ってないっ!!
「優月のその反応は話し合ってないのね…」
「だっ、だって今あの人小さ」
「優月姉ちゃん僕のど乾いたっ!!」
「うぇっ!?あ、えっと…オレンジジュースでいいかしら…?」
「うん…」
あー危ない危ない…。
「じゃあさ、うちのお父さんとお母さんみたいに学生結婚しちゃえば?」
「そういえば、蘭のおじさまとおばさまって大学生の時に結婚したんだったわよね?」
「うん!しかも在学中に私が産まれたのよ!」
「でも結構苦労したんじゃない?小五郎ちゃんと英理ちゃん…。はい!コナンくんジュースどうぞ!」
「あ、ありがと…」
うんうん!
やっぱりコナンくんにはオレンジジュースが1番ね!
「まぁそれなりに苦労はしたみたいだけど…でも新一が相手だったら学生結婚もアリだと思うよ?」
「え?何で?」
「あんたねぇ…あんな推理オタクの新一君でも一応お坊っちゃんよ?玉の輿って事忘れちゃダメよ!」
「た、玉の輿って…」
「うんうん!金銭面は新一の両親が面倒見てくれると思うし!」
「いや〜それはちょっと…」
チラッとお坊っちゃんの新一さんを見ると、顎に手を当てて何やら考えてるご様子…。
ま、まさかホントに学生結婚狙ってないでしょうね?
「…まぁ、私はなるべく早く結婚したいな〜とは思うけど…新一次第じゃないかなぁ?」
「全く新一ったら…さっさとプロポーズすればいいのに!」
「あの新一君がいつあんたに2度目のプロポーズするか、これから目が離せないわね…」
「……」
この2人、どうしてそんなに早く私と新一に結婚してほしいのかしら…。