smaragd | ナノ

Zauber Karte

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ありのままの貴方


「寺井さんのご飯、凄く美味しかったー!」
「だろ?じぃちゃん、あぁ見えて調理師免許持ってんだぜ!」
「そうなの!?へぇ〜だからあんなに美味しかったんだ…」


この前のお礼として快斗にチョコアイスを奢ってあげた後、私は何故か快斗にビリヤード場に連れて行かれた。
そこで盗一さんの元付き人の寺井さん(通称じいさん)を紹介され、盗一さんの写真とか遺品とか、色々な物を見せてもらった。
ビックリしたのは、盗一さんの顔が優作さんにそっくりだった事!
まさか親子で似てるなんてね〜…。
実は親戚とか?
それと私は寺井さんに、快斗が麻酔銃で撃たれそうになった事を新一の代わりに謝った。
ええ、ただひたすら謝りました。
もう二度と空中では撃たせませんってね!
その後寺井さんが作った夕食をご馳走になり、快斗にピッキングのやり方をレクチャーして頂き、今は快斗に家まで送ってもらってる途中。


「あ、快斗ちょっといい?」
「へ?痛てててて!」
「おーよく伸びる伸びる…」


これだけ伸びるのは中森警部のおかげね〜。


「痛ってぇー!いきなり何すんだよ!?」
「だって、青子ちゃんパパが引っ張った時よく伸びたから気持ち良さそうだなって思って!」
「…仕返しだっ!」
「いひゃいいひゃいいひゃいっ!」
「おっ、オメーもよく伸びんじゃねーか!」
「いひゃいよっ!もう!」
「俺はやられたらやり返す主義なんでね!」
「…べーっ!」


女の子なんだから手加減しなさいよ!


「…あのさ」
「え?なぁに?」
「俺…近々青子に告ろうと思ってんだ」
「えっ、本当!?」
「ああ…ホント」


やっと…!
やっっっと快斗に彼女が出来るなんて…!


「頑張って快斗っ!絶対にOKもらえるよ!」
「そ、そうか?」
「うんうん!絶対に大丈夫よ!自信持っていいって!」
「…優月がそう言うんなら、頑張って伝えねーとな!」
「うん、頑張って!あ、返事どうなったか教えてね?」
「ったりめーだろ?オメーに1番に教えっから!」
「ありがと!じゃあまた連絡してね?」
「おう!じゃあな!」
「ばいば〜い!」


わぁ〜!
とうとう快斗も彼女持ちかぁ!
うふふ!
こーゆー甘酸っぱい青春って、何だかいいなぁー…。
私と新一なんて、小2でチューまでしちゃったし…。
どんだけませてたんだと今更ながら思う。


「ただいまー…」


まぁ誰もいないの分かってて言ってるんだけどね。


「…よぉ、おかえり」
「えっ?新一来てたの!?」
「おー」
「来てたんならメールしてよー!そしたら急いで帰ってきたのに!」
「…ああ、悪ぃな。オメーはどこ行ってたんだ?」
「私?私は快斗と出掛けてたの〜」


新一の問いかけに、冷蔵庫の中にある麦茶を出しながら答えた。


「…黒羽と?」
「うん」
「……」
「……っはぁ〜!最高っ!!」


喉が乾いてる時に飲む麦茶って本っ当美味しい!


「あ、それより夕飯は?食べた?」
「冷蔵庫のモン適当に食った…オメーは?黒羽と食ってきたのか?」
「うん」
「……そっか」


あれ?
何か新一、元気ない…。
実は妬いてるけど我慢してるとか?
んもう、可愛いなぁー!!


「あ、そういえばさ」
「…ん?」
「この前慌てて哀ちゃんちに行ったけど何かあったの?」
「……」


あれ?
どうしたんだろ新一…。
突然思い詰めた顔して俯いちゃって…。


「…新一?」
「……」
「…おーい」
「……」
「工藤新一さん!!」
「…えっ!?あ、悪ぃ…」
「もう、どうしたの?急に黙っちゃって…」
「……」
「…何かあったんなら話して欲しいな…」
「…え?」
「新一、今にも泣きそうな顔してるよ…?」
「……っ!」
「えっ…ちょ、どしたのホント?」


一瞬新一が顔を歪ませたかと思うと、突然私に抱きついてきた。


「優月…」
「うん?」
「…もし」
「うん」
「もし…俺が」
「新一が?」
「…高校生の…工藤新一が居なくなったら…オメーは寂しい…か?」


心なしか、新一の体が震えてる…?


「……そんなの、寂しいに決まってるでしょ?」
「っ…そう、だよな…」
「…でもね」


私は新一から体を少しだけ離し、顔を覗き込む。


「江戸川コナンくんがいれば寂しくないよ?」
「っ……!」
「意味、わかる?」


瞳を揺らし、驚きの表情を浮かべる新一の顔が、徐々に歪んでいく。


「優月っ…!!」


私に必死でしがみつく新一は、今きっと泣いているんだろう。


「優月っ…ごめんな…っ…俺っ…」
「よしよし、泣かないの…」


新一の背中を優しく撫でながら、私は思った。
私も新一も、だんだんお互いに似てきたなぁ…と。
前はこんなに感情を表に出す事無かったもんね、新一…。
これが素の新一なのかもしれない。


「…もう…」
「うん?」
「当分…戻れねぇんだ…」
「え…?」
「組織を倒すまで…もうこの姿には戻れねぇんだよ…」
「……」
「だから…オメーの事、もうこうやって抱き締めてやる事も出来ねぇんだ…」


新一は普段、私に解毒剤の事や組織の事は決して言わない。
だってそれは新一の事件であって、私の事件ではないから。
でも何となく事情は理解できた。
多分、何らかの事情で哀ちゃんからストップがかかったんだろう。


「…じゃあさ、私がコナンくんを抱き締めてあげればいいじゃない」
「え…」
「そしたら、私の大好きな新一の匂いがするし、この温もりだって感じられる…。その声が恋しくなったら、変声機でいつだって聞ける…。仲良ししたくなったら、深いキスをすれば1つになれる…」
「…」
「ね?何も心配する事なんてないでしょ?」
「……優月っ!!」
「わあっ!」
「俺はもう優月がいねぇと生きてけねぇ!オメーしか愛せねぇよっ!」
「フフッ!もう新一ったら…それはお互い様よ?」


私だって新一がいないと生きていけないもん…。


「っし!決めた!」
「えっ?」
「今日はオメーの言うこと何でも聞いてやるよ!」
「…ほんと?」
「ああ!俺に何して欲しいか言ってみろ!」
「う〜〜ん…あっ!眼鏡!」
「は…?」
「コナンの眼鏡かけて!」
「…今?」
「うん、今!」
「………これでいいか?」
「わぁ…!!いいっ!いいよ新一くん…!」


かっこいいよ!
黒ぶち眼鏡かけた新一、すっっっごくかっこいい!!


「…オメー顔からキラキラしたもん出てるぞ?」
「ねぇ!優月姉ちゃんって言って!」
「はぁ?」
「コナンくんが高校生になったらどんな感じか見たいの!」
「…優月姉ちゃん」
「な、何かしらコナンくん…!」
「……」
「……」
「……フッ」


え?
今、大きいコナンくんが笑った気がしたのは気のせい?


「優月姉ちゃん…」
「はいはい何かしら?」
「新一兄ちゃんなんかより、俺と仲良くしない?」
「え…?」
「俺の方が優月姉ちゃんを悦ばせてやる自信があるんだけど?」


き、気のせいなんかじゃなかった…!


「うんっ!じゃあお手並み拝見しちゃう!」
「じゃあ優月姉ちゃんの部屋に行こっか?」
「うんうん!おいで!私も新一に教えて貰った事、色々教えてあげるっ!」


(何やってんだ?俺たち…)
(何やってんだろ私達…)


bkm?

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