smaragd | ナノ

Zauber Karte

http://nanos.jp/968syrupy910/

女ホームズの推理劇


「ダメだ…」
「この臭い…青酸カリだわ」
「ああ…」


チョコを食べた直後、樹里さんが突然苦しみだし、そのまま息をひきとった。
これは何者かによって毒殺されたんだわ。
どうやって犯人は樹里さんに毒物を…?


「チョコレートだ!チョコレートに毒が入ってたんだ!」
「んなワケないでしょ!?私だってさっき同じ物を食べたけどピンピンしてるわ!」


よく考えるのよ…!
まずは樹里さんが口に入れた物を思い出さないと…。
えーっと…ビタミン剤、チョコレート…だけか。
他に何か…。
何か見落としてる、絶対…!
何だろう…えっと……わ…わかんないっ!
ああーーーイライラする!


−わからないのは見えないからじゃなくて、不注意だからさ。見るべき場所を見ないから、それで大切なものを全て見落とすのさ−


そういえば、花婿失踪事件でホームズが言ってた…。
うん、確かにそうよね!
さすがホームズ!
……な、何か私、最近新一に似てきた…?
い、いやいやそんな事ない!
有り得ないっ!
あんなホームズオタクとは違うわっ!
とりあえず見るべき場所を見る、か…。
あ、そういえば!
樹里さんが苦しみだしたのは、チョコをつまんで食べた後よね?
青酸毒物は即効性があるから、チョコが怪しいわ…。
でも毒入りではないみたいだし…。
これは調べてみる必要があるわね。


「小五郎ちゃん?」
「ああ?どうした?優月…」
「さっき預かったチョコ、見せてくれない?」
「別にいいが…つまみ食いはダメだぞ?」
「もうっ!しないよ〜」
「そうかぁ〜?お前、食いしん坊だからな!」
「…ぶー」
「ははは…チョコは俺の席の荷物入れに置いてある」
「ありがとう!」


えーっと…あった!
…んー…。
特に怪しいところは見当たらないなぁ…。
ココアパウダー付きのチョコって事くらいしか…。
…あれ?
ココアパウダー…?
指、耳抜き、鼻、ダイビング…。
私の頭の中に散らばったパズルのピースが、まるで磁石で引き寄せられたかのように、一瞬で完成した。


─────────


「この飛行機内で、樹里さんを殺害した犯人は…」


あら、小五郎ちゃんが毎度のごとく突っ走ってるわ…。


「天子さ」
「ちょっと待って!」
「えっ…優月!?」
「こんな単純な事件、わざわざ天下の名探偵、毛利小五郎様が出る必要はないと思うけど?」
「優月!」
「まさか、もうわかったの!?優月姉ちゃん!」
「当たり前でしょ?ダテに名探偵、工藤新一の彼女やってないわよ!」
「だ、誰なの!?樹里を殺した犯人は!?」


さーて、久しぶりに喋りますか!
あ、その前に…。


「…ねぇ新一」


私はひそひそ話でコナンくんに話しかけた。


「…なに?」
「私がやっていい?」
「俺まだわかんねーから頼む…」


よーし、新一の許可も貰ったし!
これで大丈夫ね!


「じゃあまず…樹里さんに毒を接種させた方法から話しますね」
「「優月頑張れ〜!!」」
「はーい、頑張りまーす!」


蘭と園子、遊びじゃないんだから…。


「樹里さんは、耳抜きをした事によって、自らの体内に毒を取り込んでしまったの…」
「耳抜き!?」
「そう…犯人は樹里さんが飛行機に乗ると、必ず耳抜きをする事を知っていたんですね…」


歩きながら、事件を解決へと導いてゆく。
着実に、ゆっくりと。


「私もダイビングはよくやっていたから分かるの…上級者は鼻をつままなくても出来るんだけど、樹里さんはまだ初心者…鼻をつまんで息を吐く方法を、右手の親指と人差し指で行っていたでしょうね…。ねぇ歩美ちゃん、異性の前で耳抜きするのって、少し恥ずかしいよね?」
「うん…」
「樹里さんは女優だし、隣には小五郎ちゃんが座ってた…じゃあ、どうやって耳抜きをすればいいのか?」
「はい!僕わかる!」
「どうぞコナンくん!」
「トイレへ行って、隠れて耳抜きをしたんでしょ?」
「正解!そして席に戻り、右手の親指と人差し指でチョコをつまんで食べたの…丹念にココアパウダーがついた指を舐めてね…」


あれ…?
自分で言っといて何だけど、どこかが引っ掛かる…。
何だろう。
樹里さんの手に何か…。


「優月?」
「あ、ごめんね!」


いけない、いけない!
今は早く終わらせないと!


「樹里さん、飛行機に乗った後、気分が悪くなったの。その原因は…」
「原因は?」
「毒物入りの、ファンデーション…」
「ファ、ファンデーション!?」
「えっ!?じ、じゃあまさか…!」
「そう…空港の駐車場に止めた車の中で、それを鼻の両側に塗った、酒井なつきさん!あなたが犯人よ!」
「…有り得ないわ!そりゃ推理としては面白いけど!あははは!」
「証拠ならあるわ!」
「えっ!?」
「毒を混ぜたファンデーションとスポンジ…私があなただったら、機内には持ち込まないし、ゴミ箱にも捨てないわ…郵送するわね、自宅宛に…」
「っ!!」
「空港の郵便局に連絡すればわかる事よ…もう観念なさったらどうかしら…?」
「……」


これで、終わった…わね。


「酒井さん…」
「え…」
「私ね、理由はよくわからないんだけど、犯罪を企ててる人物を前にすると胸騒ぎがするタイプなの…」
「…」
「殺人を犯す理由はどうであれ、命を消した罪は重いわ…でもね、あなたと初めて会った時、いつもの邪悪な胸騒ぎはしなかった…」
「っ…」
「よかったら…聞かせてくれないかしら?あなたが樹里さんを殺めた理由を…」


bkm?

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -