「でさ、そん時の青子がすっげー可愛くてさぁ〜」
「あははは…。モップ振り回しながら追い掛けてくる青子ちゃんをそんな風に思うなんて、快斗ったら相当青子ちゃんが好きなんだね!」
「へへへ、まぁな!」
快斗が青子ちゃんとのラブラブ合戦の話をして、私はそれを笑いながら聞く。
これはいつもの風景。
でも今日は違った。
何故なら、もう目と鼻の先には自宅ってタイミングで、いつもはそこにいない人物が突然現れたから…。
「…あ」
「え?」
「あれ、オメーの彼氏じゃねぇか?」
「はっ!?」
げっ!!
新一が向こうから歩いてきてる!
鉢合わせとか最悪…!!
「や、ヤバい!どどどどうしよう…!!」
「え?何そんなに焦ってんだよ?」
「だだだだって!快斗の事新一に内緒にしてるんだよ!?」
「…何で?」
「な、何でって…。快斗だって知ってるでしょ!?新一がめちゃくちゃ嫉妬深いって事を!」
「…ふーん?でももう遅いと思うぜ?」
「え?……ひいっ!」
し、新一が鬼の形相で見てる…!!
ヤッバイよこれホントに!!
あ、でもよく考えたらさ?
別に浮気してるワケじゃないし…!
ふ、普通に紹介して平然としてれば大丈夫よね!?
「コ、コナン君…」
「…優月姉ちゃん、コイツ誰?」
コ、コイツ呼ばわりしてる!!
相当キテる証拠だっ…!!
「あ、えっと、コ、コナン君に紹介するね!この人、私の親友の黒羽快斗!で、この子、私のお気に入りの江戸川コナン君よ!」
「よろしくな坊主!」
「………ふーん」
うわー…。
めちゃくちゃ睨んでる…。
ああもう逃げ出したい気分だわ…。
「じゃ、俺帰るな!」
「あ、ちょっと快斗くん待ちたまえ」
「あ?」
「うちでお茶でもいかが…?」
今2人になったら殺されるかもしれない!!
「……俺用事あるからまたな!」
「えっ!?ちょ、待って!!」
あ、あいつ…!!
今ニヤッてした!
ニヤッて笑ったよ!?
絶対楽しんでるでしょ!?
「…おい」
「へっ!?」
「…アイツとはどういう関係だ?」
「…ただの友達です…」
「……ホントか?」
「え?うん…」
「……」
「……」
「……」
「……」
な、何この沈黙…!
気まずすぎるんだけど!
「……そっか」
「え…?」
「オメーがそう言うんなら俺は別に疑わねぇよ…」
「えっ?何で!?」
「は?疑って欲しいのかよ?」
「そっ、そーゆーワケじゃなくて…」
「…んだよ?」
「いや…。私の予想してた反応と180度違ったから、つい拍子抜けしちゃって…」
「…何で疑わねぇのか知りたいか?」
「え?うん…」
「じゃあしゃがめ」
「えっ?」
「理由教えてやっから」
「う、うん?」
言われた通りにしゃがんだ途端、視界いっぱいにコナンくんの顔が広がった。
「……あ…」
「…これが理由だ」
もう付き合って1年半くらいになるのに、今さら顔を真っ赤にする新一が可愛くて。
「…新ちゃん可愛いっ!」
「ぐぇっ…」
何も聞かずに信じてくれた新一が、とっても愛しくて。
「新ちゃんありがとう!大好きよ!」
「…んな事わかってるっつーの」
それに初めて実感した。
唇同士でするキスの意味って、ただ愛を確かめ合うだけの行為じゃないんだって。
「あ、そういやオメー早く支度しろ!」
「え?何で?」
「いいから!汐留行くぞ!」
「し、汐留ぇ!?」
何が何だか分からないまま、私はコナンくんに急かされながら急いで着替えを済ませ、駅へと走るはめになった。