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愛と憎しみ


さすが夏休み!
列に並んでる人数が尋常じゃない…!
かれこれ2時間経過。
蘭と新一は口喧嘩で忙しいからいいものの、私なんて貧血でクラクラ…。


「あ、そういえばこのジェットコースター…」
『「え?」』
「ほら、優月がアメリカに行っちゃった時!新一と2人で乗ったら殺人事件が起きちゃったの思い出して…」
『あ、その事件なら新一から少し聞い…』
「あぁあれだろ?首がスパーンって飛ん」
「もう!気持ち悪くなるから言わないでよっ!」
『そうよ新一!蘭が可哀想でしょ!?』
「わ、わりぃ…」


蘭はあーいうの苦手だもんね。


「それに!私が思い出したのは、死体の話じゃなくて犯人の動機よ…」
『動機?』
「あぁ、確か恋人だった自分をフって、他の女に乗り替えた元カレを殺しちまったんだよな…」
「うん…しかもね、その乗り替えた相手っていうのが自分の友達だったの…」
『………』
「ま、犯人のバッグの中から大量の睡眠薬が出てきた事から考えると、彼女は後追い自殺を考えてたみてーだけどな…」
『………』
「なんか切なくなるよね…一度は愛した相手を自分の手で殺しちゃうなんて…」
『……ねぇ蘭…』
「え…?」
『知ってる?愛と憎しみは紙一重ってよくいわれるように、愛が深ければ深いほど強い憎しみに変わる可能性が高くなる…。こんな風に、愛と憎しみのような相反する感情が突然入れ替わることを、心理学の言葉ではカタストロフィー理論って呼ぶの…』
「カタス、トロフィー?」
『うん……私ね、その犯人の女性の気持ち、痛いほどわかるわ…』
「え…?」


私は俯いていた顔をあげ、新一を真っ直ぐ見据えながら言う。


『もしも新一が、他の女性に心変わりしてしまったら…私の手で貴方を葬り…そして自らの人生に終止符を打つでしょうね…』

「…!?」

『そう…他の女性のものになる位なら…私の手で…貴方を………』

「優月……」


私は満面の笑みを浮かべた。


『えへっ!なーんちゃって!!』
「「…えっ?」」
『たまにはこーゆー事も言っとかないとね?』
「おいおい…」
「なんだビックリした〜!もう優月ったら…」
『あはは、ごめんね?』


それからすぐに順番が来て、私と新一は隣同士に座った。


『…さっきの話』
「え?」
『強ち冗談でもないかもよ?』
「……本望だな」
『…え?』
「万が一、俺が他の女に心変わりしたらオメーの手で俺を殺してくれよ…」
『…新一…』
「その時は俺も…自分自身が嫌で嫌で死にたい気分になってると思うからさ…」
『………』


私は、微笑む事しか出来なかった。
仮に…仮にその時が来たとしたら…
私には、出来るのだろうか…
愛する人の命を、自分の手で消してしまう行為を…
そんな勇気が、自分には存在するのだろうか…
その答えが出ないまま、私達を乗せたソリは急斜面を走り出した。


bkm?

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