楽しい時間はあっという間に過ぎ、夜になった。
私達の目の前には今、キラキラと輝く電球の数々。
「キレイ…!」
「ほんと!やっぱパレードは夜がいいわよね〜!」
「あ、そういえばこの前新一と2人で仕方なくトロピカルランドに来た事があってね…」
「え?新一さんとですか?」
「そう!その時新一ったら、1日中優月の話しかしなかったのよ!」
「嘘っ!あのホームズオタクの新一くんが!?」
「意外でしょ?私もね、ああ、またホームズの話しかしないんだろうなぁ、って思ってたから、すごくビックリして…」
「でも私の話って、一体どんな事だったんですか?」
「あ、それはね…」
「優月お姉さん逃げて!」
「拳銃が狙ってんぞ!」
「えっ!?」
「危ないっ!!」
ドシュッ!
「くっ!!」
「博士っ!!」
阿笠博士のお腹から流れる血。
これ、きっと私…前にも見た。
ああ…。
また、私のせいで人が傷ついてしまった。
「はぁ、はぁ…!」
一生懸命走って、みんなから離れた。
これ以上、私なんかの為に犠牲者が出るなんて、耐えられなかったから。
「はぁ…はぁ…」
ここまで来れば、もう、平気かな…。
ぱしっ!
「えっ!?…コ、コナンくん!?」
いつの間に来ていたのか、コナンくんが私の手を強く掴んできた。
「もう大丈夫だよ優月姉ちゃん!ここは人が多いし、この人混みに紛れて行けば…」
ぱんっ!
「えっ!?」
ふ、風船が…!?
「こっちだ!!」
「あっ…」
コナンくんに連れられ、私は全速力で走った。
「助けてーっ!変な人が!!…ボートに飛び乗るんだ!」
「えっ!?」
と、とりあえず飛び乗らないと…!
「コナンくん、一体どこで操縦を…?」
「ハワイで親父に教わったんだ!」
「ハ、ハワイ…?」
ハワイで…。
何か…どこかで聞いたような…。
ううん、行ったような気が、する…。
「ねぇコナンくん…」
「ぁん!?」
「私、ハワイに行った事ある…?」
「…ああ!一緒にな!」
やっぱり…!
あともうちょっとで、記憶が…!
「あっ!追ってきたよコナンくん!」
「ああ!」
ギンッ!
「きゃっ!」
船に銃弾が…!
「あっ!コーラが!」
この後、ほんとに小学生なの?って思うぐらいの運転を見せたコナンくん。
滝から落ちたものの、無事に着水してコナンくんの誘導で誰もいない山に登った。
「この岩陰に隠れろ…」
「わ、わかった…」
言われた通りに岩陰に隠れると、その直後、風戸とコナンくんの話し声が聞こえた。
コナンくんは、風戸へ今回の事件の真相を話し始めた…。
風戸は7年前、東都大学附属病院で若手ナンバーワンの外科医だった。
しかし、仁野という人が誤って風戸の手首を切った事故により、腕が落ちてしまい心療科へ転向…。
そして、友成さんに罪を着せるために行ったトリック…。
それを聞いていた時、何故だかワクワクしている自分がいた。
真相を聞けば、記憶を取り戻せるかなって少し期待したけど、そう甘くはないみたい…。
───冒険と開拓の島
「だからあの時、アンタからは硝煙反応が出なかったんだ!手袋は恐らく、男子トイレから流したんだろう…」
「正解だよ、コナンくん…。やはり死んでもらうしか無いようだ…」
風戸がこっちに来る…!
「コ、コナンくん…」
コツ、コツ、コツと、風戸の足音が徐々に近づいてくる中、縋る思いでコナンくんの服の袖を掴んだ。
「くっ…」
険しい表情で、私の手を強く握るコナンくん。
…何で、なの?
「ねぇ」
「…え?」
「どうしてコナンくんは、こんなに一生懸命私の事を守ってくれるの…?」
どうしてなの…?
コナンくんと私の関係って…。
「…ふっ」
あ…。
この笑み…。
ぱしっ
コナンくんが私の手を取り、走り出した。
「愛してるからだよ…」
「…え?」
「この地球上の誰よりも、オメーの事を愛してるからだよ…。昔も今も、そしてこれからもな…!」
コナン…くん…?
−この地球上の誰よりも、優月を愛してるぜ…−
あ、違う…。
コナンくんじゃない…。
もしかして…この子、新一さんなの…?