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Zauber Karte

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ずっと親友


「今日から優月ちゃんは、この部屋を使ってね」
「はい…」


見覚えがあるような、無いような…。
毛利探偵事務所と書かれた建物の中は、私の予想に反して意外と広かった。


「…あの」
「ん?」
「ごめんなさい。ご迷惑かけて…」
「優月ちゃん…」
「……」


私に両親がいれば、英理さんや蘭さん達に迷惑かけずに済んだのに…。


「…何言ってるの」
「…え?」
「あなたは私の娘同然なのよ?遠慮する事なんて無いわ」
「英理さん…」
「そうよ優月、私と優月は姉妹みたいに育ったんだから!」
「蘭さん…」
「だから何でも言ってね?」
「…はい。ありがとうございます」


2人の温かい言葉に胸が熱くなる。
早く思い出せたらいいけれど…。


「あ、ねぇ優月。私の部屋においで?」
「え…いいんですか?」
「もちろんよ!夕飯まで少し話そう?」
「…はい!」


蘭さんって、すごく優しくて可愛い人…。
私、こんなに素敵な人が親友なんだ…。


ガチャ


「さ、入って?」
「お邪魔します…」


あ…。
何でだろう…。
部屋に入った瞬間、何となくだけど、懐かしい感じがした。


「…あれ?この写真たて…」
「あ、それ?優月がアメリカに引っ越す前にプレゼントしてくれたの」
「へぇ…」


ひまわりの花に見立てた写真立て…か。
手作りかな?
所々絵の具がハゲてるけど、埃も被らずにきちんとお手入れされてる…。


「その写真、優月が引っ越す前に新一と3人で撮ったんだよ?」
「そう、なんですか…」


写真の中の私は、新一さんと蘭さんに囲まれて、楽しそうな顔で笑っていた。
何だか小さい頃の新一さん、コナンくんに似てるような気がする…。


「新ちゃん、蘭ちゃん…」
「えっ…思い出したの優月!?」
「あ、いえ…勝手に口が動いてしまっただけです…」
「…そう」


何で勝手に…?


「…えっ、蘭さん?」


急に蘭さんが私を抱き締めてきた。
何だか、すごく落ち着く…。


「…いいよ」
「え?」
「…記憶が戻らなくても、私はいい…」
「…」
「記憶が無くなったって…私達は、ずっとずっと親友だもん!」
「蘭さん…」


胸が締め付けられた。
何で私は、記憶を失ってしまったんだろう…。
私がもっとしっかりしていれば、こんな事にはならなかったのかもしれないのに…。


「蘭さん、泣かないで?」
「…っ、ごめんね…。私っ…」
「…幸せです」
「…え?」
「今、蘭さんに抱き締められた時、とても幸せな気持ちになれました。ありがとう」
「っ…そっか」


蘭さんは、優しく微笑んでくれた。
早く、思い出したい…。
どうすれば思い出せるのかな…。


ガチャ


「ただいまー!」
「あ、コナンくんお帰り…」
「コナンくん、どこ行ってたの?」
「あ、ちょっとね…」


コンコン


「優月ちゃん。今日の夕飯は何が食べたい?」
「退院祝いで何かうまいもんでも食うか!?」
「英理さん…小五郎さん…」
「あ!じゃあ、久しぶりに私が腕を振るっちゃおうかしら?」
「「げっ…」」


英理さんの言葉に、コナンくんと小五郎さんが青い顔をし始めた。


「あら、なーに2人共…」
「な、何って、お前の料理は…」
「あ、じゃあ僕の分はいらないよ…。お、お腹すいてないから…」
「遠慮しなくてもいいのよ、コナンくん!オバサンが腕によりをかけて美味しーいビーフシチュー食べさせてあげるから!」


この光景も、懐かしい気がする…。


「あら、どこ行くの?あなた…」
「あ、いや…。近所のヤツらと麻雀の約束をしてたのをすっかり忘れてて…」
「優月ちゃんがこんな時に!?麻雀なんてやってる場合じゃないでしょ?」
「あ、いや…」
「それともなぁに?私の料理が食べられないとでも…?」
「ふふふっ!面白いなぁ…」
「…え?」
「おっかしい…ふふふっ」
「「……」」
「ははははははは!」


蘭さんはいいなぁ。
こんなに楽しい家族がいて…。


bkm?

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