smaragd | ナノ

Zauber Karte

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呼びかける私


「…ではこれで検査は終了です。こちらお返ししますね」
「あ、どうも…」


昨日から気になってたけど、この指輪…何だろう?
裏側には文字が刻まれてあるし…。
…何語なんだろう?
英語じゃなさそうだし、読めないや…。


「優月姉ちゃん!」
「あ、検査終わった?」
「あ、はい…」


この人達なら、この指輪の事分かるかな…。


「あ、あの…」
「うん?どうしたの?」
「この指輪…何ですか?」
「ああ、それは新一からのクリスマスプレゼントよ!」
「しん…いち?」
「あんたの恋人の、工藤新一よ!」


工藤…新一…?


「いっ…!!」
「優月!?」
「どうしたの!?」
「優月姉ちゃん!?」


頭が…!
割れるように痛いっ…!!


−……きゃ−


え…?


−早…た…きゃ!−


誰…?


「優月!!」
「っ!!」
「大丈夫!?」
「頭、痛いの!?」
「優月姉ちゃん!?」


今の…誰?


「今…」
「「「え?」」」
「今、頭の、中で…誰かが…叫んでました…」
「だ、誰が!?誰が叫んでたの!?」
「ちょっとコナンくん、大声出したら…」
「分からない…。でも、何か…凄い、焦ったような声で…」
「……」


そう、焦ったような声で、何かを必死に…。


「あ、そうだ!」
「…え?」
「今少年探偵団のみんなが来てるんだったわよね?」
「少年…?」
「いいから!中庭行こう?」
「あ、はい…」


この2人、何で私に優しくしてくれるのかな…。
それに、このコナンって男の子…。
何だか懐かしい感じがする…。


「私、吉田歩美!」
「灰原哀さんに、円谷光彦くん、そして小嶋元太くん!みんな、コナンくんの友達で、優月お姉さんを心配してやって来たの!」
「そっか、ありがとう…」


みんな可愛いなぁ。


「でもごめんね?みんなの事、わからないんだ…」
「そんな…信じられません!」
「あんなに遊んでくれたじゃねーか!」


…ごめんね、みんな。
どうしても、思い出せない…。


「ワシの事も覚えとらんか?阿笠博士じゃ!」
「え?」
「ほれ、キミの幼なじみで恋人の工藤新一くんちの隣に住んどる天才科学者じゃよ!」
「工藤…新一…」


まただ…。
さっきも聞いた、妙に懐かしい響き…。


「ねぇ、新一兄ちゃんの事何か思い出したの!?」
「ううん、わから…っ!!」
「優月姉ちゃん!?」


まただ。
また頭が、っ…!!


−じゃあ……私……にいたの……ったの!?−


あ…何か見える。


−……に対して冷たい態度をとると………らそういう事だっ………ホントは私………るのが苦痛だ……て事でしょ!?−


…誰?
何でそんなに、怒ってるの…?


−ごめ…なさい…−


え…?


−テメェと………結婚なんかし………か!!っざけんじゃ……よ!俺はな、テメーみた…女…1番大っ嫌いなんだよ!−
−わた…悪か…たの…!−


誰…?
誰なの…?
あなた達は、一体、誰?


−早く…伝え…きゃ…!−


「優月姉ちゃん!?」
「っ!!」


な、何だったの…?
今のは…何?


「優月!?大丈夫!?」
「また頭痛がしたの?」
「優月姉ちゃん、何か思い出したの!?」


あれは、きっと…。


「謝ってた…」
「えっ!?」
「頭の…中で…私…謝ってた…」
「な、何て言ってたの!?」
「えっと…途切れ途切れだったんだけど…多分、ごめんなさい…私が、悪かったの…早く…伝えなきゃ…って…」
「そ、それって…!」
「恐らくそれは、優月くんの記憶が呼び掛けているんじゃろうな…。優月くんは人一倍…いや、それ以上に頭が良かったからの…。記憶が無くなる前に、自らの手で記憶を脳のどこかへ避難させたんじゃろうな…」


あれが、私?
じゃあ、あの怒ってた人は…。


「あ、あと…」
「まだ何か聞いたの!?」
「ううん、見たの…」
「な、何を!?何を見たの!?」
「えっと…多分、私だと思うんだけど…私と…誰かが…ケンカ、してた…」
「っ!!」
「あ…あんた、そういえば新一くんと喧嘩したって言ってたわよ!」
「うん、言ってた!」
「そう、なんですか…」


じゃあ、あの人が…工藤新一?


「でも…ボヤけてて、よく見えなかったです…」
「……」


私が付け加えると、みんなはガッカリした様に肩を落とした。
…何か、申し訳無い気持ちになる。


「あ、あの…私、工藤新一さんに…何か悪い事…しちゃったんでしょうか…?」
「違う!そうじゃないよ!」


えっ?


「新一兄ちゃん、言ってたんだ…。俺が優月を傷つけてしまった、俺が悪かったんだって…」
「そう、なの…?」
「うん…。すごく、後悔してたよ…。だから優月姉ちゃんは、何も悪い事してないんだよ!」
「…なら良かった」


コナンくんの言葉を聞いて、私はホッと胸を撫で下ろした。
でも、何でかな…。
さっきの光景見ていた時、すごく息が苦しかった。
それに、心臓を思いきり握り潰されてるような感じもして…。


「…何だか少し疲れちゃったので、少し眠ってもいいですか?」
「あ、うん。じゃあ病室まで一緒に行こう?」
「あ、ありがとう…蘭さん…」


蘭さんは、少し悲しげに微笑み、私の肩を支えてゆっくりと歩いてくれた。


bkm?

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