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Zauber Karte

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私は、誰?


「……!」


ん……。


「………!」


誰かの、声…?


「……優月!」


優月…?


「……ぅ、ん…」


目を開けると、白い天井が見えた。
その両端には…女の人が、2人?


「優月…!!」
「よかったぁ!気が付いたのね!」


え…?
誰、かな…。


「あの、」
「あ、ここは病院よ!」


いや、そうじゃなくて…。


「…あなた達2人は、誰?」
「「えっ!?」」


え…?
何でそんなに驚いた顔、してるの…?


「も、もう優月ったら!変な冗談はやめてよね?」
「そうよ!あんた私達をからかってんでしょー?」
「あ、あの…」
「え?」
「優月ってどなたの事、ですか…?」


私が尋ねると、2人の女の子は今にも泣きそうな顔になった。


「な…何言ってるの?優月…」
「え?何って…」
「ちょっとどうしちゃったのよ優月!ねぇ優月ってば!!」
「あ、あの…」


何で、そんな顔、するんだろう…。


「私、先生とみんなを呼んでくる!」


あ…なんか、心がズキズキって、痛い気がする…。


「ねぇ優月、私が、誰だか…わかる?」


そう言って私に尋ねてきた子は、凄く可愛い顔立ちの、ロングヘアの女の子だった。


「……ごめんなさい、分からないです」
「えっ!?」
「だって…初めまして、ですよね?」
「っ、優月…!」


えっ?
この子、何で泣いてるの?


バンッ!!


「優月!!」
「優月姉ちゃん!!」


あ…また知らない人が入ってきた…。


「花宮さん」
「え…?」


白い服着てる…。
お医者さん…かな?


「心療内科の風戸です。今から、簡単な問題を出すから、答えてくれるかな?」
「あ…は、はい」


心療内科?
問題?
何?
何なの?
意味がわからない…。


「日本の首都は?」
「…東京」
「じゃあ、アメリカの首都は?」
「えっと、ワシントンD.C…」
「5×8は?」
「40…」
「じゃあ…このボールペンの芯出してみて?」


ちょっと、何なのこれ?
こんなの普通に出来るよ…。


カチッ


「フム…では、自分の名前は言えますか?」


名前…?
えっと……。
あ、そういえば…。


「…花宮さん?」
「あ、あの…」
「どうしましたか?」
「さっきから皆さん、花宮さんとか、優月って私を呼ぶんですが…。それが私の名前なんですか…?」
「そ、そんな…!」
「どういう事!?」
「…花宮さん、この人達の中に、誰か知ってる人はいますか?」
「…いいえ?全員、初対面の方達…でしょう?」
「「「なっ!!」」」


なんでみんな、驚いた顔してるんだろ…。


「優月…」
「うっ…」


あ…。
さっきの女の人達、泣いてる…。
…何だろう、胸がチクチクする。


「では…何でもいいので、最近あった出来事は何か覚えてますか?」


最近…?
えーっと……。


「…分からないです。あの、何で病院にいるんですか?怪我…してないみたいですし…」
「優月姉ちゃん!」


不意に、私の傍に黒ぶち眼鏡をかけた男の子が駆け寄って来た。


「僕が誰かも分からない!?」


わぁ…!
凄く可愛いっ!


「随分可愛い坊やね?初めまして。何年生かな?」
「…優月、姉ちゃん…」


っ…。
この子も、泣きそうな顔してる…。


「おい優月!俺はどうだ!?」
「え…?」
「お前が父親同然に慕ってた毛利小五郎だろ!?」
「えっ…と…」
「こっちは俺の妻の英理だ!俺達はお前の事を本当の娘の様に想ってたんだぞ!!それも分かんねぇのか!?」


父親…?
母親…?
わ、分かんない…。
何で…みんなさっきから私が分かんない事ばっかり言うの?
なんで、怒ってるの…?
なんで、泣いてるの…?
分かんない…!
分かんないよ!!


「…や、だ…っ…!」
「優月…?」
「みんな…怖い…!」
「優月姉ちゃん!?」
「やだっ!怖いっ!みんなキライッ!あっち行ってよ!!」
「…皆さんは外に出て下さい!」
「先生!この人達やだっ!怖いよ!みんな意味がわからない事ばっかり言うんだもん!早く追い出してっ!」
「落ち着いて!花宮さん!」
「わからない!わからないよ!みんな怖い顔してる!いやーーっ!!」
「キミ!急いで鎮静剤を!!」
「はい!」
「やめて!触らないで!みんな怖いよ!出てって!どっか行ってよ!」


何でみんな意味がわかんない事言うの!?
自分の事も、みんなの事も…。
全然分からないよ…!!


bkm?

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