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Zauber Karte

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最高の親友


あの後しばらく、私と新一はその場で泣きじゃくってた。
が、突然新一が黙りこくってしまい、いきなり立ち上がったと思ったら無言で私の手を引いて歩き始めた。
私は何となく話しかけづらくて黙ってついていくと、工藤家の前で蘭が立っていた。
…待っててくれたんだ。
そう思っていたら、蘭が突然般若のような顔になって、新一もドス黒いオーラが出始め、私は身の危険をビンビンに感じながら、工藤家のリビングに連れて来られた。
そして、今…。


「……」
「……」
「……」


もの凄い黒いオーラを放ってる新一様と蘭様は、仲良くソファに並んでおられて…。
そして私は、2人の足元で正座させられてるという状況なワケで…。
もう、あのね?
怖いとかじゃない。
……さっきとは違う意味でここから消えてしまいたい。


「あ、あの〜…」
「「………」」
「…ひっ!」


そ、そんな怖い目でこっち見ないで!


「……優月」
「は、はい?」
「…いつからだ」
「…は?」
「いつからあんな事思ってたんだって聞いてんだよ」


さ、さっきまで可愛い事言いながら泣いてた新一が消えてる…!!
蘭もいつもの優しいオーラじゃないし…!


「ま、前から薄々感じてたんだけど……し、深刻化してきたのは…クリスマスの準備の日あたりからで…」
「深刻化した理由は何だ」
「……そ」
「「そ?」」
「…そ、園子に…『2人は中学の時はクラス公認のカップルだった』とか色々…聞いたの…そ、それでつい…」
「…犯人はあいつか」
「…そうみたいね」


こここ、怖い…!!


「優月?」
「は、はい?蘭様」
「いい事教えてあげる」
「な…何でしょう…」
「おい蘭」
「鈍感大バカ推理之介は黙ってなさい!!」


い、息が出来なくなるほどの恐怖ってこの事だ…!!


「…中学の時ね」
「は、はいっ!」
「新一が私に言ったの」
「な、何を…?」


何気なく新一を見ると、両手で頭を抱えていた。


「もしも神様が、俺と優月を二度と会わせないって決めてるとしても、俺は絶対に優月以外の女と付き合わないし、結婚もしないって決めてんだ…って」
「え…」
「俺の"人生"という名の、決められた短い時間を費やして、絶対に花宮優月を、この地球上から探し出してみせる…って、言ってたんだよ?」
「っ…!!」
「だから、最初から何も心配する事は無かったんだよ、優月」
「…蘭…」
「ごめんね…私のせいで、優月の事苦しめちゃったね…」
「っ…違うっ!蘭の…せいじゃ…っ」


蘭のせいじゃないよ。
私がバカだっただけ。
そう言いたいのに…。
伝えたいのに、涙が邪魔で話せないよっ…。
蘭は優しく私を抱き締めてくれた。
その優しさが、とてつもなく嬉しくて…。


「…うっ…ふぇっ…」
「ほら。泣かないの!」


涙を拭ってくれる指が、とてつもなく優しくて…。


「あーあ。可愛い顔が台無しよ?」


あの頃と全く変わらない優しさが嬉しくて…。


「ごめんなさいっ…!私…蘭に…蘭に…っ!」
「その先は言わないで?全部分かってるから…」
「ごめ、なさ、いっ…」
「優月が謝る事は何にもないんだよ?」
「うわぁっ…!ひっ…く…」


私は涙を止める事が出来なかった。
こんなに素晴らしい親友を疑ってしまった自分が腹立たしかった。
ありがとう、蘭…。
あなたという、最高の親友がいて、私はとっても嬉しい。
私の最高の親友、毛利蘭と…私の最高の彼氏、工藤新一。
2人にまた、出逢わせてくれた神様に…感謝したい。


「それにね?」
「…ひっく…?」
「…謝らなきゃいけないのは」
「え…?」


突然蘭が私から離れた。


「こいつよっっ!!」


ドガッ!!


「……あ…あ…」


ら、ら、蘭が…蘭の足が…!
新一の頭上の壁に…!
め、め、めり込んだっ!!


「そもそも優月をこんな不安にさせたのは…」


バキィッ!


「あんたよ!新一!!」
「…ひっ…!」


こ、今度はててて手が…!!


「今度また優月を泣かせたら…」


ドゴッ!!


「わっ…!」
「これ位じゃ済まないと思いなさいよ…?新一」
「……」


壁が、穴、だら、け…。


「…じゃあ私、もう行くねっ!」
「えっ…帰っちゃうの…?」
「次は園子の家に行くの」


そ、園子逃げて……!


「じゃあまた明日学校でね〜!」


バタン


……あ。
あの新一が茫然自失になってる…。
と、とりあえず、壁、片付けようっと…。
斯くして、様々な事があったワケだけど、私の悩みは何処かへぶっ飛んで行ってしまった。


bkm?

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