ぽとり、涙 | ナノ


  そろり、今夜もひみつの




それから毎日、俺らは一緒に帰ることになった。


「神山さん!ごめん、待ったッスか?」
「ううん、大丈夫だよー」


校門の方が楽だけど、目立つから教室で待ち合わせ。
今までの彼女は俺のことを自慢したかったのか公衆の面前でベタベタとしてきたが、神山さんはそんなこと一切ない。まぁ、彼女じゃないんスけどね。目立つようなことをするの嫌いなタイプだし。
それもなんだか新鮮。恥ずかしいとか、すっげー可愛い。神山さん、付き合ってくんないッスかねー。本気で。




「黄瀬くん、今日宿題やり忘れちゃったの?」
「そーなんスよ!持って帰るの間違えちゃって!」
「昨日私が早く帰ろうって急かしたせいだ…!」
「違うッスよ!俺が勝手に慌てただけだから」




今じゃ、2人で話すこの時間が特別で。部活で疲れていたはずなのに、何だか体が軽い。楽しい。離れていた距離もだんだんと近づいて、今じゃ人が1人はいるか入らないかの距離だ。

てかもうむしろ告白してもいいんじゃ、と思うかもしれないけど…神山さんの気持ちがわからない。俺のことどう思ってるんだろ。友達として見てるかもしれないッスよね。
正直、この関係が壊れるの怖いんスわ。情けないしヘタレだと思われるかもしれないけど。

それだけ彼女が大切で、失いたくない存在で。
本気って、ことなんだと思う。




「黄瀬くんってスタートメンバー?ってやつなんでしょ?」
「え、よく知ってるッスね!」
「うん。テツヤくんがね、教えてくれたの」
「黒子っちが?」




2人って仲よかったんだ。全然知らなかった。
前に同じクラスになったことがあるんだとか。きっと神山さんは気が使えて周りをよく見える子だから、黒子っちの存在も簡単にわかるんだろう。廊下ですれ違った時に話しかけて聞いたとか、すごいと思うし。俺なんて未だに気付かない時もある。




「黄瀬くんがバスケしてるの見てみたいな」
「今度大会あるから見に来るといいッスよ!電車ですぐのとこだし、会場広いし!」
「そうなの?でも部活がなー…行けないかも」




そうだった…吹奏楽忙しいんだった…。
残念、ちょっと……いや、かなり落ち込んだ。だって俺がバスケしてるとこ見たら、少しは惚れてくれるかもしれないじゃないッスか。女子は男子運動してるとこ見るとかっこいいって思うもんだって、いろんな子が言ってるし。神山さんもそうかもしれないじゃん。

どうにかして振り向かせたいけど、相手はあの紫原っちのお気に入りで黒子っちとも仲がいい神山さん。
一癖も二癖もあるような気がしてならない。




「でも、行けたら行きたいなぁ」




その言葉に一喜一憂する俺は、もうすっかり彼女の虜。
普通の女子だったら脈アリの言葉だけど、神山さんの場合はわかんない。だって純粋だし、素直だし。ただ単に、そう思ってるだけかもしれない。下心があるようには…思えない。
読めないのって辛いッスわ、本当。大体の女子はわかりやすくて楽なんスけどねぇ。溜め息を着いた。




「黄瀬くん、今日すっごく疲れてる?」
「そんなことないッスよー」
「でも今溜め息つかなかった?嫌なこととかあったの?」




バレたか。気が利きすぎるのもな。彼女は鞄をいじって、あのレモン味のアメを俺に1つくれた。




「しょっちゅうくれるけど、いいんスかー?なくなっちゃうッスよ」
「食べるために持ってるんだもん。いいのー」




神山さんはそう言いながら口にアメを入れた。おいしい、と幸せそうな顔をする彼女。

あぁ、可愛い。俺が襲いたくなるわ。…いやいや、ダメじゃんこれじゃ!!送ってく意味ない。

頭を振り、汚い感情を消し飛ばしてアメを口に含んだ。うん、おいしい。
神山さんの影響で、俺もレモンが好きになった。




「おいしいッスね、これ」
「でしょ?すごく美味しいんだよ〜」




可愛い笑顔を浮かべる彼女の隣が、居心地良すぎて。
誰かに取られたくないし、ずっと神山さんの傍に居たいと思う。神山さんのこと他に狙ってるやついたらそっこー潰しにかかる勢い。

そのくらい、彼女のことが本気で好きだ。








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