15
あれからセブルス君に手を引かれコンパートメントへ戻ると、リリーがとても心配してくれていたようだった。
正直なことはまだなにも言えないから適当に言い訳をして制服に着替える。
校則でアクセサリー類は禁止だと聞いたのでリーマスから貰ったヘアゴムは外して手首に付けておいた。それをしっかりと見えないように袖で隠して。
そして列車を降りてボートへ乗り継ぎ、先程ホグワーツへと着いたのだ。
そこはとても大きな城で、新入生全員が圧倒される。
「とても大きいのね…」
「ええ、どうしましょうセン。私凄くドキドキしてきたわ。」
リリーが不安そうな声で言い、私の手を握った。
私はその手を握り返してリリーに言う。
「大丈夫よリリー。」
「でも、組分けでもし違う寮になっちゃったら…?」
「もしそうなっても友達なのは変わらないわよ。ね、セブルス君。」
そう言ってリリーを挟んで向こう側にいるセブルス君に笑顔で言うと、セブルス君も小さく笑って頷いてくれた。
「ああ、大丈夫だ。」
「ほらね、リリー。それともリリーは寮が別れちゃったら…私と友達でいてくれないの?」
「そんなことないわ!」
「ふふ、じゃあ問題ないわね。」
リリーはそうだけど…とまだ渋ってはいるが、組分けを始めるという先生の掛け声によって私たちの会話は途切れた。
厳格そうな女の先生が少しよれている帽子の近くに立ち、最初の生徒の名前を呼んだ。
名前を呼ばれた女の子は緊張した面持ちで、用意された椅子に座る。
そしてその子の頭の上に先程の女の先生があのよれた帽子を被せた。
するとほんの数秒後、帽子が大広間全体に響く声で叫んだ。
「ハッフルパフ!!」
その声がすると共に、黄色のネクタイをした先輩方が大きな拍手と歓声で女の子を歓迎していた。
先程リリーを励ましていた自分だが、私も正直とても緊張していた。
リリーと寮が離れてしまっても自分で友達を作ることができるのか…
そう思っていると、あの厳しそうな先生がリリーの名前を呼んだ。
「……っ」
「大丈夫よリリー。行ってらっしゃい。」
リリーが隣で一気に強ばったのがわかって、そっと背中を押した。
リリーは小さく頷くと椅子へ座り、帽子を頭に乗せる。
そして
「グリフィンドール!!」
帽子がそう大きな声で叫んだ。
リリーが少し赤い顔でこちらを見たので、私は小さく手を振った。
リリーはグリフィンドールか…。
できれば同じ寮がいいのだけれど…
だんだんと俯き、下を向いていた私の肩に手が置かれた。
思わず見上げるとセブルス君が苦笑気味に私を見ていた。
「さっきまでの威勢は何処へ行ったんだ?」
「セブルス君…」
「まだ別々の寮に決まったわけじゃない。それに寮が別れても友達なんだろう?」
「ええ…それは変わらないわ。でも…」
「組分けなんてすぐに終わる。」
「うん…。」
でも緊張は中々解れない。
今呼ばれたイニシャルは私までもう直ぐだった。
「ねえ、セブルス君…」
「何だ…?」
「セブルス君も、もし寮が別れても…友達でいてくれる?」
私はあまり背丈の変わらないセブルス君の目を見て言った。
汽車の中でさっき会ったばかりのセブルス君を早くも友達だなんて言ってしまって、セブルス君は気を悪くするだろうか。
しかしセブルス君は小さく笑った。
「当たり前だろう」
セブルス君がそう言った直ぐ後に、私の名前が呼ばれた。
さあ、組分けだ。
緊張はしてるけど、私の顔には少し笑みが浮かんでいた。
セブルス君に小さく笑い返して私は椅子へと向かった。
こわくない
(友達がいるもの)
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