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※リーマス視点
ジェームズが指差した方を見ると、一つにまとめられたなびく黒髪だけが微かに見えた。
「誰かいたの?」
僕がそう聞くとジェームズは不思議そうに言った。
「黒髪の女の子がいたんだ。でも僕が気づいた瞬間急いで行っちゃったよ。」
「そう…。」
"黒髪の女の子"
その言葉から連想されたのは彼女。
かけがえのなかった幼なじみ。
大好きだった セン
あのとき僕は彼女になにも告げずに姿を消してしまった。
あれだけの辛い状況だったとはいえ、あの夜から一度も顔を合わさず、何も残さずに消えた僕を彼女は嫌いになっただろうか。
嫌われているに違いない。
僕は人狼なんだから。
そんなことを考えていたらジェームズが声を上げた。
「それより、皆はどこの寮に入りたい?僕はやっぱりグリフィンドールだな!」
ジェームズは元気のいい男の子で、クィディッチが好きなんだとか。
ジェームズの声にまず反応したのは僕の斜め向かいに座るシリウス。
「俺もだな。とりあえずスリザリンだけは御免だ。」
彼はかの有名なブラック家の長男なのだが家の考えに従うことは嫌らしい。
そしてその横で挙動不審にしているのがピーター。
「ぼ、僕もスリザリンは嫌だな…」
ピーターはコンパートメントに入ってきたときからおどおどしているが、人の話はすごくよく聞いている。
「で、リーマスは?」
そう聞いてきたジェームズに、僕は微笑みながら答えた。
「君たちと一緒なら、どこの寮でも楽しそうだ。」
その答えにジェームズとシリウスはニヤリと笑い、ピーターは照れたように笑った。
「僕もそう思うよ」
「俺もだ」
「ぼっ僕も!」
ジェームズは僕たち三人の前に手を出した。
そしてこう言ったのだ。
「僕たちは今日から親友だ!」
その言葉に思わず笑みがこぼれて、そして出されたジェームズ手の上に僕たち三人も手を乗せたのだ。
ただ笑顔の裏で考えていたのは、センとの過去だった。
「ねえセン、僕たち親友だよね?」
「もちろん!リーマスは私の親友。」
「はは、セン大好き。」
「私もリーマス大好き。」
あの頃の僕たちはどこへ行ってしまったのだろう。
あの夜、すべてが無くなった。
ねえセン、
君は今どこにいるの?
この汽車に乗っているかい?
あの夜、星を見ようと
誘った僕を恨んでいるかい?
ねえセン、
僕は新しい親友ができたんだ。
だから君には 会いたくない。
僕の過去を、
僕の正体を知っている君に
会いたくない。
そんなことを思っている僕を
こんなに弱虫な僕を
どうか恨んでくれていい。
ごめん、セン
確かにあのときは
君が大好き"だった"のに…
もうこれ以上
(失いたくないんだ。)
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