13


「はあ…」

リリーとセブルス君に悪いことをしちゃったなあ…

精神的に不安定になったとはいえ挙動不審になってしまったし、コンパートメントまで出てきてしまった。

せっかく友達になってくれたのに、変なやつだと思われただろうな。

「…嫌われちゃうかな。」


こんなことじゃ友達は増えないのではないか。そう思いながら自分が通りすぎて行くコンパートメントの中をさりげなく見る。

背の高い人たちが多い。
何年生くらいだろうか…

どのコンパートメントを見ても多くいる先輩方は皆仲が良さそうだった。


いいなと思いながら更に進んで行くと、1年生と思われる子達のいるコンパートメントがあった。気づかれないようにそっと覗いてみると


「……っ、!!」

危うく声が出てしまうところだった。


だってそこにいたのは

「…リー、…マス?」


大好きな幼馴染みだったから。

最後に会ったときから2年以上たっていたしも背も伸びていたけど、私には分かった。あれは、リーマスだ。

顔や首に傷跡があるのが見えた。
きっと身体中にあるのだろう。

私はリーマスに会えなくて寂しいと過ごしていた2年、リーマスは苦しんで生活していたんだ。

私は、馬鹿だ。
何が会いに来てくれないの、だ。
リーマスは凄く辛かったのに。


ごめんね…リーマス。


私がリーマスを見ていると、リーマスの隣に腰かけていた眼鏡の男の子が私に気づいてしまった。

眼鏡の男の子が私を指差して、リーマスがこちらを向こうとした瞬間、私はもと来た通路を走り出していた。





「はあっ、はあ、…」

何故、私はあの場から逃げたのだろうか。

そんなの決まってる。
リーマスに会わせる顔がないのだ。

リーマスは、私のことなんか忘れてるかもしれない。もう嫌いかもしれない。

それに…私を見たら、あの夜を思い出してしまうだろう。

私は自分の左肩を掴んだ。
そこにはまだ、あの夜の傷跡がはっきりと残っている。

深く刻まれた傷は消えなかった。


私は通路にしゃがみこむ。

リーマスはもう私のことなんか…

どんなにそう思っても、リーマスのくれたヘアゴムだけは外せなかった。

このヘアゴムだけが今私とリーマスを繋いでる。


「リーマス…」

「…ヒュウガ?」

「…え?」
いきなり名前を呼ばれて顔を上げるとそこにはセブルス君がいた。


「あ…、セブルス君…何で?」

「…やけに遅いから来てみたんだ。そらよりどうした?」

そういってセブルス君はしゃがみ、私と目線をあわせて聞いてくる。


「えっと、別に…何も。」


どうして私はこんなことしか言えないのだろう。セブルス君はわざわざ私を迎えに来てくれたのに。

セブルス君は少しの沈黙のあと、私の手を握った。


「……そうか。」


そして私の腕を引っ張り立ち上がらせ、そのまま私を引いて歩き出した。

「リリーが心配してる。戻るぞ。」
「…う、うん。」


セブルス君は、何かあったことを絶対にわかってる。でもそれを聞かないでいてくれた。

ごめんなさい。
ありがとう。


出会ったばかりの彼の優しさが、やけに染みた。


男の子と手を繋ぐなんて…リーマス以外で初めてだった。


私の手を握っているのはリーマスではないのに、何故か心地よかった。

優しくも強く握るその手は彼のようで。



そう、それは
(彼のように暖かかった)





「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -