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「それじゃあセン、気を付けてね。」
「うん。」
「寮が決まったら手紙書くんだぞ。」
「うん、わかったわ。」
「…それじゃあ」
お父さんとお母さんに抱き締められ、私は汽車に乗り込んだ。
乗り込むまでに何度も振り返り手を振ったけれど、その全てに、お父さんもお母さんも、振り返してくれた。
トランクを引きずりながら空いているコンパートメントを探す。
お父さんに下級生なら最後尾に近い方が先輩に睨まれずに済むと教えられていたので、その教えの通り一番後ろまで行った。
そこに入ると誰もおらず、少しホッとする。
コンパートメント内に入り大きなトランクを座席の横に置いた。そしてその中から一冊の本を取り出す。
それは魔法薬学に関する本である。
入学案内が届いたことが嬉しくて、次の日にはもうダイアゴン横丁に行き、教科書や制服、もちろん杖も全て揃えてしまった。
それからというもの、学校が楽しみで教科書を読み始めたのだ。買ったものは全て読んでしまって、そのなかでも一番面白かったは魔法薬学だった。
毎日のように薬学の教科書を読んでいると、先日お父さんが簡単な薬学書のようなものを買ってきてくれた。
それを今日も列車の中で読もうと持って来たのだった。
しばらく読書をしていると、コンパートメントのドアが開いた。
驚いていてそちらを見ると、とても可愛らしい赤毛の女の子と、綺麗な顔立ちをした黒髪の男の子がいた。
「ごめんなさい…。ここ、相席してもいいかしら?空いてなくて…」
赤毛の女の子が申し訳なさそうに聞いてきたので、私は急いで首を縦に振った。
「も、もちろんです!」
「ありがとう!ほら、セブルス。」
「…ああ、…礼を言う。」
急いで迎えの席に置いていたトランクを退かし、そこに座ってもらった。
すると赤毛の女の子はこれまた可愛らしい笑顔でお礼を言ってくれる。
「ありがとう!」
「いえっ、どういたしまして。」
「あなた、1年生?」
「はい。今年、入学です。」
すると赤毛の女の子は嬉しそうに笑って、「私たちもなの!」と言った。
「私、リリー・エバンズよ。リリーって呼んで!あー…、敬語もやめてくれると嬉しいわ」
「ふふ、わかった。私はセン・ヒュウガ。宜しくね。」
「こちらこそ宜しくね!友達第一号だわ!」
そう言ったリリーと目を合わせると、お互いに微笑んだ。
リリー、か。とても可愛い。
そして気になるのはリリーの隣に座る男の子。ちらりとそちらに目線を向けると、リリーも気付いたようで男の子に声をかけた。
「ほら、セブルスも自己紹介しましょうよ。」
すると男の子は私に目を向けた。正面から見るとますます綺麗な男の子だ。
「セブルス・スネイプだ。」
「…よ、宜しくお願いします。」
なんだかクールな感じがして、思わず敬語になってしまった。するとリリーはくすりと笑った。
「やだわ、セン。セブルスも同い年なんだから敬語はいらないわよ。」
「え、あ…うん。」
「センもセブルスって呼んであげて?」
「え!でも…」
スネイプ君を見ると無表情でリリーを見ていた。リリーはそんなスネイプ君を見返して言う。
「セブルスもいいわよね?」
「…ああ。」
ほら、と言ったようなリリーに私は相づちをうった。
それにしてもこの2人はとても仲が良さそうに見えるが、どのような関係なのだろうか。
「えっと、リリーと…セ、セブルス君はとても仲が良いのね。」
するとリリーがこちらを向いて笑った。
「私たち幼馴染みなの。」
「…へえ。そうなんだ!」
私は今リリーにきちんと笑顔で返せていただろうか。
"幼馴染み"
その言葉で思い浮かべるのは、
大好きだった彼。
同じ汽車に
(貴方は乗ってますか?)
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