08
あの日から1か月が経とうとしている。
私の怪我は左肩以外もうすっかり痛くない。左肩も、もうすぐ包帯が外れる。
今日は、リーマスの家に行くのだ。
「セン、準備できたかい?」
「うん、大丈夫…」
今日はお父さんもお母さんもお休みを取って一緒に行くのだ。あれからリーマスには一回も会っていない。もちろんお父さん達もだ。
さあ行こう、とお父さんが差し出してくれた手をとって家を出る。
たったひと月通らなかっただけの道。
それがひどく懐かしく感じた。
あの日までは毎日通っていたのに。
「セン、着いたよ。」
「あ…、」
お父さんに言われて顔をあげると、もうリーマスの家の前だった。
でもそこにあったのは見慣れた綺麗なリーマスの家ではなかった。
いつもおじさんが綺麗に手入れしていた庭の芝生は雑草ばかりだったし、おばさんが毎日水を上げていた綺麗なお花は枯れていた。
芝生の手入れも、お花の水やりも魔法を使ったものではあったけど、とても綺麗だったのに。
私が呆然としていると私の右肩にお母さんが手をおいた。
「あなた、セン、…ご挨拶しましょう。」
「ああ…」
玄関の扉の前に行きノックする。
だが応答はない。
「留守かしら…」
「どうだろう…」
もう一度ノックをし、呼び掛ける。
コンコン。
「ルーピンさん、ヒュウガです。いらっしゃいませんか。」
中から音は聞こえない。
「お留守ね…。」
「ああ、…今日は帰ろうか。」
お父さんが私の頭に手をおいてドアの前から退こうとしたとき、その扉が小さく開いた。
「……ヒュウガさん…?」
そこから顔を出したのはリーマスのおばさんだった。
随分と痩せていて、目の下の隈は凄かった。その顔からは前に見せてくれた笑顔なんて全く想像できなかった。
するとお母さんはおばさんに駆け寄って手を握った。
「ああっ…ルーピンさん…。こんなに痩せて…大変だったでしょう…」
「それは…お互い様だわ……」
「旦那様は…?」
そうお母さんが聞くとおばさんは首を横に振った。
「あれから…自分のせいだ、って…ずっと…」
「そう……その傷は…?」
お母さんが指したのはおばさんの腕や頬にある傷。するとおばさんは涙を流してしゃがみこんだ。
「…この間っ…ま…満月で…っ!」
私はそのとき、お父さんの手を強く握りしめた。
やっぱり、嘘じゃないんだ。
リーマスは…人狼に。
優しい彼はきっと、自分の大事な人を傷つけて悲しみ、苦しんでいるに違いない。
リーマスに会いたい。
誰もが悲しみ、
(彼は独り苦しんでる)
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