07
あれから3日。
今日は私の誕生日。
まだ9年しか生きていないけれど、こんなに苦しい誕生日は始めてだった。
左肩の深い傷を始め身体中は痛い。
だけどそれよりも痛く苦しいのは幼馴染みを助けられなかったこと。
私みたいな子供が守れた訳がないけれど、あの場面でお父さんたちを呼べていたら違う結果になっていたはずた。あのとき機能をなくした自分の喉を恨む。
ごめん、ごめんねリーマス…。
ガチャ。
「セン、調子はどう?」
私の部屋に入ってきたお母さんの手には消毒液と新しい包帯などが握られていた。私は毎日2回、傷口を消毒をして包帯を変えてもらう。
「…大丈夫。」
「…そう。」
あの日からお母さんは少し痩せた。
お父さんはあの翌日リーマスを咬んだ人狼の件で魔法省へ行ったきり帰ってきていない。
「…ねえ、お母さん」
「なあに?」
「リーマスは、どうしてるかな…」
「……」
傷口にガーゼを当てていたお母さんの動きが止まった。
「リーマスは…」
リーマスは、どうしてる?
泣いてる?苦しんでる?
助けられなかった私を、
嫌いになった…?
ふと感じる頭の上の温もり。
それはお母さんの手のひらだった。
「セン…リーマスはきっと、元気になるわよ…。」
大丈夫、大丈夫よ。
そうお母さんは繰り返してくれるけど私の不安は薄まることはなかった。
「センが元気になったらお見舞いに行きましょう。」
「…うん」
私の返事を聞いてお母さんは消毒を再開した。そしてそれが終わると「あとでバースデーケーキ食べましょうね。」と言って部屋を出ていった。
正直そんな気分じゃない。
だけどお母さんのあの疲れた顔を見たら、辛いのは私だけじゃないと分かったし、頷くことしかできなかった。
リーマス、私、今凄く泣きそう。
私はお父さんもお母さんも大好きだけど、リーマスに出会ってからは泣くときは決まってリーマスの前だった。
仕事が忙しい二人に迷惑をかけたくなくて。最初はそんな思いだったけれど、今は違う。
リーマスといると落ち着くから。
リーマスなら本当の私を受け入れてくれるから。
リーマスが、大好きだから。
前はあんなに側にいてほしかったお母さんが、付きっきりで看病してくれているのに私はリーマスのことばかり考えてる。
こんなに苦しいのならお母さんと一緒じゃなくていい。
あの頃みたいに、遅くにお仕事から帰ってきていいから。
だから、
神様、お願い。
あの頃に戻して。
お願いします。
(大好きな彼を返して)
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