06
「いやああああああ!!!」
私の叫び声は、
夜の静けさに良く響いた。
私の叫びを聞いてお父さん達が慌てて外へ飛び出してくる。
「セン!?」
「センちゃん!…きゃあ!!」
リーマスのお母さんがびっくりするのも無理はない。だって駆けつけた庭には、星を見ていたはずの子ども2人が…
血だらけで倒れているのだから。
そして我が子の隣に立つ、人狼。
「貴様っ…ステューピファイ!!」
「インペディメンタ」
バン!
私のお父さんが人狼に向かって呪文を放つが、どこから飛んできたのか違う魔法に相殺される。
すると人狼を庇うように深々フードを被った真っ黒なローブの男が現れた。
「よくやったな、グレイバック」
「誰だお前は…!!」
「ふふふ…そう怒鳴るなヒュウガよ。これは見せしめなのだ」
「見せしめ、だと…?」
「ああ、そうだとも。そこの哀れな父親にな」
黒い男が杖で指す先にいるのは、リーマスのお父さん。
「私に、見せしめとは…!」
「お前が闇の勢力に逆らいなどしなければ、息子は普通に暮らせたのになあ?」「な、んだと…?」
その男がにやついていることは声で分かった。
「ルーピン、お前の息子は人狼になったのだ。」
時が止まったように思えた。
リーマスが、人狼?
嘘、嘘よ。
でも、私は確かに見てしまっていたのだ。リーマスが咬まれた姿を。
リーマスのお父さんとお母さんは体の力が抜けたように座り込んだ。
「貴様ああ!!」
私のお父さんがまたも杖をむけると男はバカにしたように笑った。
「なに、お前の娘は咬んじゃいないよ。その命令は出ていないんでね。」
「許さんぞ…!!」
「今お前と戦う気はない。失礼する。」
「待て!!」
バチ!
その男は姿を消した。
「ちくしょう…!」
「あ、あなた…センが!」
「…!セン!!」
お父さんとお母さんが駆け寄ってくる。
リーマスのお父さんとお母さんも、意識を取り戻したようにリーマスに駆け寄った。
「セン、セン!ああ、こんなに怪我して…!」
「ああ、セン。早く来てやれなくてごめんな…!」
お母さんは私の顔を撫で、お父さんは私を優しく抱き締めてくれるけど、私の意識はリーマスにしか向いていない。
「リ…マ、ス…が……」
「ああ、セン…見たのか?」
あの光景が蘇る。
リーマスの肩口に、深々と刺さるもの。
「リーマス…!リーマス…!!」
「あああっ…!…うう…!」
リーマスのお父さんとお母さんが泣いているのを見て、罪悪感でいっぱいだった。
もっと前に叫び声をあげられていたら。
もっと私が抵抗できていたら。
リーマスは、
人狼になることはなかったのに。
ごめんなさい、ごめんなさい、
ごめんなさい…
頬を濡らすのは
(ひたすらに、後悔の涙)
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