04


「さて。善法寺さんへの挨拶も済みましたから帰りましょう、組頭。」

「…まったく、繊ちゃんてばせっかちだなあ。」

「まだお仕事が残ってますから。」


もう、しょうがないなあ…と言ってやっと腰を上げた組頭。


まだ帰りたくないと言いたげな組頭の腕を掴んで善法寺さんの方を向く。


「善法寺さん、ご迷惑をお掛け致しました。失礼させていただきます。」

そう言って頭を下げると善法寺さんも慌てて立ち上がった。


「い、いえ!また是非…というのも変ですが、いつでもどうぞ。」
「ありがとうございます。それでは。」


一礼をして部屋を出ようとしたとき あ、と言って組頭が私の腕を引いた。今度は何だ。尊奈門君が待ってるというのに。


「…どうされました?」
「繊ちゃん、先生にご挨拶は行ったのかい?」
「いえ、行ってませんよ。」


すると私の言葉を聞いた組頭が顔を明るくした。(顔と言っても片目だけだが)


「なら「本日は手土産を持ってきておりませんので、また後日お伺いしようかと。」

……あ、そう…。」


組頭を遮った私の言葉に明るくなった表情は一気に落胆する。

「来週末に有休を戴きますね。もう申請は出しましたので。」
「え、じゃあ私も「駄目です。」


「あ、あの……」

私と組頭が言い合いをしていると善法寺さんが制止をかけた。そういえばここは保健室だ。申し訳ないことをしてしまったな。謝ろうとしたとき善法寺さんが私に問いかけてきた。


「日向さんは、どなたか先生とお知り合いなんですか…?」


ああ、そうか。
そういえば言っていなかったな。


「…私、忍術学園の卒業生なんです。」

「………。」
「………。」

「………ええ!?」


やっぱり驚くかあ。でも善法寺さんが今6年生ってことは…丁度10歳差(うわあ、私おばさん)。知るわけないよね。


「あ、じゃあ…山本シナ先生に…?」

未だに驚きつつある善法寺さんを可愛いなあ、なんて思いながら質問に答える。


「シナ先生にもご挨拶しようとは思っていますけど…本命は別の先生なんです。」
「え?…じゃあ誰に…」

「……厚着太逸先生は、まだいらっしゃいます?」
「厚着先生なら1年い組で実技を担当されてますよ。」


よかった。
まだ先生はいらっしゃるのね。
自分にも人にも厳しかったがそれは優しさ故の厳しさだった。私の進路を唯一後押ししてくださった、恩師。


「何故くの一である日向さんが厚着先生に?」

「私がいた頃はまだ忍たまもくのたまも生徒数が多くはなかったんです。ですから先生方も少なくて…実技が合同であったり、くのたまも委員会に所属してたんですよ。」


私は体育委員だったんです。と言うと善法寺さんは感心したように頷いてくれた。

「え、でも昔って…日向さんおいくつですか?」


と善法寺さんが言うと今まで放置されたいた組頭が善法寺さんの顔の前に手を広げた。


「まったく、伊作くん。いくらくの一だとしても女性に歳を聞いちゃいけないよ。」

すると善法寺さんは焦ったように顔を赤くした。


「す!すみません!」
「ふふ、大丈夫ですよ。この間組頭にも聞かれましたし。」
「…あら、そうだっけ。」
「ええ。直接的ではありませんが。」
「覚えてないなあ。」


未だに顔を赤くしている善法寺さんに微笑みかけて、25になります。と言うと凄く驚いてくれた。私もまだまだいけるかしら。

まだ善法寺さんとお話ししていたい気持ちはあるが城で可愛い後輩が待っているんだ、帰らなければ。


「あー…すみません、善法寺さん。もう帰らないと。」

「あ、すみません!引き留めてしまって!」


「いえ、全然。…また来週末お邪魔させていだだきます。本日は失礼致しますね。」

「あ、はい!」

「それでは。」


今度こそ組頭の腕を掴んで保健室を後にした。



また後日
(先生のお好きなぼた餅を持って)





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