03
タンッ
少し高めの塀の上に着地する。
まさか懐かしの学舎にこのような形で来ようとは。
上司の"お迎え"ねえ…。
しかも丁度よく在学中の頃を思い出していたときに。
「さて、保健室に行こうかな。」
忍術学園の保健委員長の元に組頭はいるだろうと尊奈門君が言っていた。
私が居たときと間取りが変わってないといいんだけど…
*********
「あの…ざ、雑渡さん」
「ん?どうした?…あ、このお茶請けやっぱり正解だ。伊作君もほら。」
「は、はい…。」
その頃保健室には案の定タソガレドキ忍軍の組頭と保健委員長がいた。
「あ、あの…お仕事に戻らなくて大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。何だい、早く帰ってほしいってこと?」
「いえ!ただいつもならこんなに長く居られないので…。」
そう伊作が言うと当の本人はふむ、と考えるような仕種をして言った。
「今日は伊作君に私の自慢の部下を紹介しようと思ってね。」
「諸泉さんですか?」
「いや、くの一でね。凄く美人だよ。おまけにとても頭が切れてて優秀だ。」
そう言う雑渡さんはどこか表情がいつもより柔らかい気がする。
「へえ…タソガレドキにくの一なんていたんですね。」
「数は少ないけどね、皆優秀だよ。」
「へえ…」
「あ、来た来た。」
「え?
「組頭。」
…ぅわあああ!?」
いきなり天井裏から忍装束に身を包んだ人が現れ目の前の雑渡さんの隣に膝をついた。
「…もう、組頭。お迎えに上がりました、帰りましょう。」
「えー、もう帰るのかい?」
「えー、じゃありません。尊奈門君だって待ってますよ。」
「尊奈門は別にいいよ。」
「よくありません。可哀想じゃありませんか、全く…。」
ほら、と雑渡さんを促す忍はきっとくの一。
落ち着いた綺麗な声の人だと思った。
それにしても全く気配を感じなかった。やはりプロのくの一、しかもタソガレドキともなると忍たまの自分たちとはこうもレベルが違うのだろう。
凄いなあ…。
「おや、伊作君そんなに見つめちゃって。一目惚れかい?」
「な!?ち、違いますよ!」
「伊作君はいい子なんだけどねえ。ちょっと年が離れてるからなあ。」
「違いますってば!!」
何を言い出すんだこの人は。
当の彼女はと言うときょとんとした後に雑渡さんに問いかけた。
「組頭、この人が…」
「そうそう、例の彼。」
例の彼?と思っていたら彼女がいきなり頭巾を取って深くお辞儀をした。
「挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。その節は私共の組頭を手当てをしていただきありがとうございました。」
「えっ、や、あの!頭を上げてください!僕がしたくてやったことですから!」
「…ありがとうございます。」
やっと顔を上げた彼女はとても美しかった。
髪の毛なんか仙蔵に匹敵するほどのサラストだ。
「私、タソガレドキ忍軍に勤めております日向繊と申します。」
「あ!ぼ、僕は忍術学園六年で保健委員長の善法寺伊作です。」
宜しくお願いします、と二人でお辞儀をする。
そのとき見た日向さんの微笑みはやっぱり綺麗だった。
はじめまして
(我が忍軍の恩人さん)
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