13


それからしばらく先生とお話ししていた。

卒業してからの10年間にあったことや学園での思い出など、話し始めると時間を忘れてしまう。

すると先生が思い出したように言った。

「そういえばお前、山本先生や山田先生にはご挨拶に行ったのか?」

「じ、実はまだ…」

私の答えに先生は驚き、また大きくため息をついた。

「お前なあ…、まずは山本先生に挨拶だろう。それに山田先生だって可愛がってくれてたじゃないか。」

「は、はい…でも、まずは厚着先生にお会いしたくて…」

「はあ…なら今から行ってこい。」
「はあい…」

決してシナ先生や山田先生に会いたくない訳じゃない。しかしまだ先生とお話ししていたいのに…。

まあしょうがないかと思い腰を上げようとしたとき、障子の向こうから声がかかった。


「厚着先生、土井です。宜しいですか?」
「ああ、どうぞ。」


え、土井さんて…
そう思っていると障子が開いて、そちらを見ると尊奈門君が言っていたように整った顔立ちの男性が立っていた。

「あっ、あの…こちらの方が!」

土井さんは私を見ると少し驚いたような表情をしたあと、彼は自分の後ろに立っている人物を見やった。

私もそちらに目を向けると、そこには良く見知った人物が。


「尊奈門君!」

私が名前を呼ぶと尊奈門君は前に出てきて気まずそうに、私と厚着先生に一礼した。

「お話し中にすみません…。」
「全然。そうだ、先生に紹介しないと。」

そう言って私は立ち上がり尊奈門君の横に着いて先生の方へ振り返った。


「先生。こちら私の後輩の、諸泉尊奈門君です。」
「は、はじめまして。」


尊奈門君が頭を下げると先生も立ち上がった。

「忍術学園で教師をしている厚着です。」

素敵でしょ、と尊奈門君に言うとそうですね、と尊奈門君は笑った。


「ところで尊奈門君どうしたの?」
「あ、その…お昼ご飯を食べに行かないかと思いまして…」


尊奈門君の話によると、土井さんとの手合わせが一段落ついたとき土井さんにご飯を誘われ、どうせ食べるのならと私も呼びに来てくれたようだ。


そういえば、もうそんな時間かと厚着先生を振り返ると「食べに行くか」と行ってくださったので、土井さんと尊奈門君にご一緒させていただくことになった。

食堂までの道で私と土井さんは自己紹介をする。


「私、タソガレドキ忍者隊で働いております日向繊と申します。」

「私は学園で教師をしております、土井半助と申します。」

二人でよろしくお願いします、と頭を下げる。すると土井さんは疑問に思っていたことを口にした。


「日向さんは厚着先生とどのようなご関係で?」
「私、ここの卒業生なんです。厚着先生は私の恩師でして。」

すると私の言葉に土井さんは大層驚いていた。

「え!忍術学園のですか!」
「はい。と言いましても10年も前の話ですから…」

「え、じゃあ…失礼ですが今年25歳ですか?」
「ええ。」

「私も今年25になるんです!」

同い年ですね!と笑う土井さんは少年のようで少し可愛らしかった。私もつられて笑っていると後ろからぐい、と腕を引かれた。

驚いて腕を引いた人物を見ると、そこにはいつも浮かべている輝く笑みはなく、若干膨れっ面の尊奈門君がいた。

尊奈門君の後ろでは厚着先生がクスクスと笑っている。


「尊奈門君…?」
「繊さん、お腹空きましたね。早く行きましょう。」

尊奈門君はそう言って、私の腕を引いたまま歩き出した。尊奈門、食堂の場所知ってるのかな。

振り向くと厚着先生は未だに笑みを浮かべていて、土井さんは少し焦ったような顔をしていた。




「私の教え子は人気者でしょう、土井先生。」

「ええ、そのようですね…。」




ねえねえ、
(彼、お優しそうな方じゃない。)






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