――――リゲル、
    ベテルギウス、
    プロキオン、

    シリウス。



寒く凍えそうな冬の夜、1人空を見上げる。数多くある星の中でもふと目に止まるのは、

愛しい“彼”と同じ名を持つ1等星。


私の中で、いや、きっと数えきれない程の人の中でもあの人は、あの星と同じように強く輝いているのだろう。


サラリと柔らかそうになびく黒髪、スッと通った鼻筋、誰をも惹き付ける、灰色の瞳。


そんな誰もが羨むような容姿を持っている彼だけど、彼は見た目だけで人々を虜にしてるんじゃなくて

クールぶってるくせに楽しそうに悪戯してるところとか、仲間のためならどんな困難でも乗り越えてしまうところとか、そんな内面が大きな理由なんだと思う。

わたしも彼に魅了された1人。




************


寮の窓から空を見上げる。そこにあるのは眩く光るいくつもの星。



その中で強く輝く自分と同じ名をもつ一等星

"シリウス"

昔はこの名が嫌いでしょうがなかった。純血主義のあの人達につけられた名前なんて。しかしそんな考えを消し去ったのは1人の少女の言葉だった。

あれはまだ2人が出会ったばかりの頃だったか……





*


「グリフィンドール!!」


組分け帽子が叫んだ言葉で拍手と歓声、そして驚きの声が大広間に広がった。何故かは俺があのブラック家の長男であるから。


ブラック家の者がグリフィンドール寮だなんてありえないことなのだ。何故スリザリンではないのかという驚きの声が耳に入ったが、俺は清々していた。グリフィンドールであることが嬉しくてしょうがなかった。


幼い頃から俺はブラック家というものが嫌いで嫌いで。


上辺だけの笑顔で話す大人達
悪に染まっている親戚
家名によって態度を変える人々


そんなものと、自分が一緒にされると思うと怒りが込み上げてくる。


組分けが終わった後は列車の中で仲良くなったジェームズ、リーマス、ピーターと共に入学式を楽しんだ。入学式から大分日がたって、ジェームズが真剣な顔立ちで相談があると言ってきた。


「なぁ、皆。僕はね……恋をしたみたいなんだ!!」


何を言うかと思えば。

いまいち反応ができない俺とリーマスとピーターを放りジェームズは何やら語り始めた。


「リリーという子でね!とても美しくて優しいんだよ!!…んー、いつも隣にいるセン・ヒュウガという子もなかなか美人だけれど、リリーには敵わないかな!!それでね…」


「あ、僕センのことは知ってるよ。」


ジェームズの言葉に反応したリーマスが口をはさんだ。まだまだ語りそうなジェームズを止めてくれて正直助かった。


「僕ね、センとは結構仲がいいんだよ。」


そう、にこやかに話すリーマスだが俺とピーターは2人のいう<セン>とかいうやつを知らないから話についていけない。


「ちょっ、まず誰だ。その……セン?とかいうやつ。」


隣でピーターが少しホッとしていた。


「えっとね、僕達と同じグリフィンドール寮の1年生だよ。少し恥ずかしがりやだけどとても優しいいい子だよ。」

「ふーん。」


リーマスが答えてくれはしたが、正直女ってのはあんまり好きじゃなかった。いつも家名目当てに近寄ってきては気持の悪い猫撫で声で話しかけ、ベタベタと触ってくる。

むしろ、嫌いだ。


「どうしてリーマスはヒュウガと仲がいいんだい??リーマスが女子をファーストネームで呼ぶなんて珍しいじゃないか。」


ジェームズが割り込み聞いてきた。


「うん、前に1人で図書室に行って魔法薬学のレポートを仕上げていた時に一緒だったんだ。」


そういえばリーマスは薬学が苦手でレポートをいつも期限ギリギリに提出していたな。


俺やジェームズはさっさと終わらせてしまうがリーマスは図書室に行って本を参考に仕上げていた。


「その時闇の魔術に対する防衛術のレポートを仕上げてた彼女のペンがまったく動いてなくてね、手伝ってあげたんた。それから仲良くなって時々僕が薬学を教えてもらって、かわりに彼女に防衛術を教えてあげてるんだ。」


「へぇー…。」


リーマスは薬学が本当に苦手だから教えるのに苦労するだろう。


「あ、ちょっと!!僕のリリーの話を忘れないで聞いてくれよ!!」

……また始まった。


その後もジェームズの熱のこもった演説は続いた。




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