「………暑い。」
「……ああ、暑い。」
「……夏だからね。」
「……僕…もう駄目。」


本日の授業が全て終わった瞬間、ジェームズが言った一言に俺、リーマス、ピーターが続く。もうこのやり取りも何度目だろうか。


「これだから夏は嫌なんだ…!」


そう言ってジェームズはネクタイを外した。この暑い季節、ネクタイをしている生徒は少ない。いつもは注意する先生方もあまりの暑さに黙認しているのだ。

まあ俺は気温に関係なくネクタイをすることは少ないが。


「とりあえず涼しいところに避難しよう。」
「ああ、そうだな。」

どこかあったか、と俺が言うとリーマスが湖がいいと言った。

「あそこは水があるし、濡れても今日はもう授業ないからいいだろう?」

いい考えだ。

「そうと決まれば早く行こう!」

急にテンションの上がったジェームズが早く早くと急かす。


「おい、待てよジェームズ。先に寮に荷物を置いてきてからだ。」
「え!そのままでいいじゃないか。」
「こんな重いもん持って行けるかよ。」

俺の言葉にジェームズは不満気にしていたがじゃあ早く置いてこよう!と言って寮に向かって走り出した。

俺たちも遅れながらそれに続く。

「ジェームズったら元気だなあ…」
「暑すぎてさすがについてけねえ…。おい、ピーター大丈夫かよ?」
「大丈夫…早く湖行って涼もうか…。」
「ああ、そうだな。」






寮に荷物を置いて湖へ行くとそこには既に何人か先客がいた。皆考えは一緒なんだろう。

ピーターとリーマスは日陰にいると言うので俺とジェームズの2人で湖の中の巨大イカと遊んでいた。


するとジェームズがある場所を見て固まった。

「ジェームズ?」
「……なあシリウス、夏も捨てたもんじゃないさ。」

は?と思いジェームズの視線を辿ると数人の女子。そのなかにはエバンズと、……センがいた。

センというのは…まあ、所謂俺の想い人である。恥ずかしながら片想いだ。


確かに会えたことは柄にもなく嬉しいが夏も捨てたもんじゃないとはどういうことだろうか。


「彼女たちの格好をよく見てみろよ。」
「格好?」

彼女たちを見てみるが何を言っているのだと首を傾げているとジェームズが深く溜め息をついた。

「駄目だなシリウス。君には男のロマンたるものが欠けている。」
「はあ?」

俺が怪訝な顔をするとジェームズはほら、と言って語りだした。


「髪を上げているから見えるうなじ!開けられた第二ボタン!普段は靴下に隠された生足!」

そして…微かに濡れたワイシャツに透けて見える下着!



そう熱弁するジェームズにいつもなら変態だと言うだろう。しかし実際に好きなやつのそんな姿をみてしまうと…なんかこう、ぐっとくるものがある。

特にセンは普段比較的真面目な部類だから尚更だ。


なるほど、言われてみれば。


「なあジェームズ。」
「ああ、そうだろシリウス。」



「「夏って最高だ!!」」








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