女子寮の階段を一段降りるごとに鼓動が速くなっていく。

言わなきゃ、ちゃんと。


あと三段、

二段、


一段………




「なんだよリーマス、そんなに落ち込むなって。」


よく知った友人が愛しい彼を慰めている声が聞こえた。

あと一段のところで足が止まる。


「そうだよリーマス、気にすることないさ。」

「でも、最近2人でいても、いつも心ここに在らずっていうか…」

「だからお前の考え過ぎだって。」

「そうだよ、センはちゃんと君が好きだ。」



どうしよう、行きづらいな…。

迷っていると聞き逃せない声が聞こえた。



「センが僕を本当に好きか何て分からないさ。」





え……?




「おい、リーマス何言ってんだ?」

「あのねシリウス、告白したのも僕。いつもデートに誘うのも僕。…全部、僕から言わないと彼女は2人になろうとしないんだ。」


リーマス…?


「もしかしたら、僕に気を使ってくれているのかもしれない。」


違う、違うよ、リーマス。
私、リーマスが好きよ。


「今付き合ってくれているのだって、僕の告白を断れなかったからか「違う!!!」


いきなりの私の登場にリーマスや、もちろんジェームズやシリウス達も驚いてたけどそんなの知らない。


「リーマス、私、気使ってなんかない…」

「セン、聞いてたの…、?ごめん、僕「黙って私の話聞いて…。」



普段は少し違う私にリーマスが狼狽えた。

そしてゆっくり話し出す。


「…私、リーマスが告白してくれたとき、凄く嬉しかった。もう、本当に…夢、みたいでっ…。」


やばい、泣いちゃいそう。堪えなきゃ。駄目、泣いちゃ駄目、

駄目、なのに…


「付き…合い、始めてからだって、もう、本当に…毎日っ、夢みたいで」


リーマスの笑顔を隣で見れることが嬉しかったの。


「毎日、っ…毎日、気持ちが、…おっきく…なって…っ!」


好きで好きで、触れたくなった。
そんな自分が嫌だったの。


「ほ…っ、本当、は…手、繋ぎたいっ…し…」


あなたが好きでいてくれるために私はおしとやかでいなくちゃ、って思ったの。


「…だっ、…抱き締めて、もら、い…たいし」


あなたが好きすぎて、
訳が分からなくなってたの。


「………き、…き、す…も…したい、のっ…」


どうすれば嫌われないかって考えてたら、いつの間にか避けるみたいになってた。



「ごめ、っ…リー、マスっ……私、本当に…あなたが…」




好きなの。





そう言うのと同時に、暖かくて優しい、大好きな腕に包まれてた。

突然のことに驚いて涙なんか止まってしまった


それに初めて抱き締められたあなたの腕は、暖かくて優しくて…でもどこか力強くて…どきどきした。




「…リー、マス?」
「………」


「ねえ、「ごめん。


ごめんね、セン。」


ギュウ、と私を包む腕の力が強まった気がした。



「僕、センが好きだ。」

「……っ!!」



初めてこんな近くで囁かれた言葉に一気に体温が上がる。


「僕、勝手に君に嫌われたと思って…酷いよね」

「そ、そんなことっ!」



「そんなことあるよ。僕、最近さ、…君が気を使って付き合ってくれてる、なんて思ってた。」

「違うってば…」



少し体をよじって否定しようとしたらより強く抱き締められ、リーマスは私の肩口に頭を埋めた。



「うん…、君はこんなに僕のこと好きでいてくれた…って、自惚れてもいい…?」


ああ、やばい、
キュンてきちゃった。



「自惚れてよ…、私、リーマスが好きよ。…リーマスだけを…その…、…愛してる」


そう囁いたときにピク、と揺れる体が可愛いだなんて思ってしまった。


「セン、ズルい…」
「え…?」


バッと離されたと思ったら頬を両手で包まれ上を向かされた。


そこにはいつもより血色のいい彼がそこにいて、


「僕だって…センを愛してる」


真っ直ぐな視線と言葉にまんまとやられてしまった。






「…あーっと、二人とも?」

「…俺ら忘れてないかー?」


…っ!
ジェームズとシリウス!!


二人でバッと離れる。


「「あ…えっと…!」」


今さらになってお互い恥ずかしさが込み上げてきた。


「僕らを忘れてしまう程二人が愛し合っていたとはね。邪魔者はお先に失礼するよ。」


そう言い後ろ手を振りながらジェームズは男子寮へと続く階段を上がっていった。



そしてシリウスは


「まあ良かったじゃねえか。でも…」


「「……?」」



何か企んでいるように私とリーマスを見るシリウス。

ニヤリと笑って


「今まで我慢してた分、今夜は激しくなりそうだぜ?寝させてもらえないかもな、セン。」


と言った。



私もリーマスもお互い子供という年でもないため、理解してしまい顔を真っ赤にすると

シリウスは一目散に男子寮へと駆けて行く。

「男は皆狼だからなー!」


「シリウスっ!!!」


リーマスはシリウスを怒鳴りつけるがもう姿は見えない。


「あ、ははは…」


まあとりあえず気まずくて笑うしかない。


するとリーマスも苦笑いをして近づいてきた。


「ごめんね、でも何もしないから安心してよ。」


そう言ってまだ赤い顔のまま頭を撫でてくれた。


ねえリーマス。こういう仕草で、私の"好き"がおっきくなってるんだよ。


「…リーマス?」
「うん?」


ほら、その優しい笑顔も好きなの。


「私、リーマスになら何されてもいいかも…。」
「……っ!!」


また赤くなった。

可愛いな。
でもかっこいい。


ああ、私、今凄く幸せ。


「セン、もう止めて…」
「ふふ、ごめんごめん。」


二人して真っ赤に染まる顔。


「ねえセン、もう一回抱き締めてもいい?」
「うん、」


優しく、包み込んでくれる彼の背中に腕を回してギュッと抱きつく。


「ああ、セン、愛してる。」
「わ…っ、私も…」


「私も、何…?」
「私も、っ…あ、愛して、る。」


「はは、僕幸せだ。」
「私も、幸せ…!」



たまには素直になるのもいいかもしれない。




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