少し呆然と俺を見ている彼女に問う。



「その本、お前のか?」


彼女の手にしている本を指差し言う


「えっ?あ、うん。家から持ってきてたやつ…。」


彼女の手から本を取り、借りていいかと聞くと良い返事が返ってきたのでそれを小脇に抱え立ち上がる。



「じゃあ、俺寮に戻るわ。ありがとな。」


「う、うん!」



立ち去る前に振り返り

「俺、星と同じ名前なんて言われたの初めてだぜ。じゃあな、セン」


と笑顔で言った。


すると彼女はまた顔を真っ赤にしていた。


そんな彼女を置いて寮に戻る。



寮に戻った後、先程借りた本の、あのページをずっと眺めていた。








そんな出会いから月日は流れ、今や彼女は、



俺の愛しの人




お互いの想いが通じ合った時、嬉しくて少し涙が出そうだった。



こんな風に人を愛すことができたのも彼女と出会えたから。



昔を思い出したら無性に彼女に会いたくなって。


忍びの地図を取り出し、愛しの人の名前を探し、そこへと走る。




しかし季節は冬、思い返して部屋へとコートを取りに行く。



これは自分のためじゃなく、彼女のため。



なんだか自分が必死になっていることに少しだけ恥ずかしくなる。


でも、それだけ大事な人なんだ。



彼女のいる場所へと走り出す。









―――――




いけない。
凄く寒くなってきた。


まだまだ星を見ていたいけど、そろそろ体が限界だなと思い、腰を上げようとした瞬間。



背中からとても大きな温もりに包まれた。



振り向かなくてもわかる。



「どうしたの?シリウス」


そう問いかけると抱き締めてくれている腕の力が少し強まった。


「いや、ただセンに会いたくなって。」


耳元でそんな甘い台詞を囁くから、少し恥ずかしい。


でも嬉しくて。



「そっか、私も会いたかった。」


そう言って彼と向かい合わせになって抱きつく。



「フフッ、シリウスってばあったかーい。」


ぎゅう、と抱きしめ言うと彼の匂いのするコートをかけられる。


「コートくらい着ろよ、凄い冷えてんじゃんか。」


ちょっと悪態つきながらもちゃんと抱きしめてくれるから嬉しい。






「シリウスが来てくれると思ったから忘れてきたんだよって言ったら、どうする?…ってきゃあっ」


抱きつきながら聞くとそのままの体勢で地面に倒れこんだ。


「な、何し「もー、…好きだ。」



「えっ!…ん、――」



触れるだけの、不意打ちキス。



私の唇は冷たかったけど、シリウスのそれが暖かかったから、丁度いいね。




唇を離して額をくっつけ合う。






「ふふ、急にどうしたの?」


「いや、何か無性にしたくなった。」


そう笑って言うあなたに、今度は私から一瞬触れるキス。


「な…!」


「私も無性にしたくなった。」


驚くあなたにそう言うとと少し顔を染めて


「もー、大好きだ。」


と言って抱き締めてくれた。




幸せだな、なんて思って見上げた空には、









あなたと同じ名前の一等星。






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