SHRも終わりクラスの皆が帰り支度や部活に行く準備を始めた。


「名前、帰ろ」
「誕生日だから奢るよ!」
「…ごめん、生徒会入っちゃった。」


私の言葉に友達は一瞬驚いた顔をしたけれどすぐに呆れた顔になった。


「ふざけた理由で生徒会なんか入るからよ」
「…その通りです」
「まあ生徒会ならしょうがないか」
「…ごめんね」


謝る私に友人たちは嫌な顔ひとつしないで笑って許してくれた。

「明日は帰りどっか行こ!」
「うん!」
「じゃあお先に」



ばいばい、と手を振って別れて私は生徒会室へと向かった。

廊下へ出た瞬間からもう既に寒く生徒会室に行く足取りが重くなる。


別に生徒会の面々が嫌いだとか気が合わないということではないのだけれど、こういう急な会議が嫌なのだ。


それにあの部屋ストーブ無いんだもんなあ…


そうこうしているうちに生徒会室の前に着いた。

遅いって怒られるかな…と思いつつ扉を開けると、そこにいたのは。



「お、来たか」


水沼君だけだった。

普通の教室よりも狭い生徒会室を見渡しても他の役員はどこにも見当たらない。

「他の皆は?」
「ああ…まだ、来てないよ」
「そっか」


とりあえずいつもの私の席に荷物を置いて座る。


「会議どれくらいかかりそう?」
「そんなに長くはやらないよ」
「そう…」


私の言葉に水沼君はふっと笑った。
あ、この顔好きかも。

高校生には見えないような余裕のある感じ。たまに悔しくもあるけど。


「そんなに会議が嫌かい?」
「い、いや!…ほら、この部屋寒いし」
「まあ、そういうことにしておこうか」

本当は予定があったから来たくなかったなんて会長殿に言えるわけもなく誤魔化したけど、絶対気付いてるわ。

そこからはお互い黙り込んで何も言わなかった。

水沼君との沈黙は、苦にならない。
なんとなくこの人が発する空気は落ち着くのだ。相手がどう思っているかはわからないけど。


私はなんとなしに生徒会室を見渡した。数ヵ月前に先輩方から引き継いで私たち二年生のものになった生徒会室。

先輩が引退しても正直心配事はなかった。だって次の会長はあの水沼君だもん。今までにない良い生徒会になるわ。



「名字」
「…えっあ、何?」


考え事をしていたせいか、急に話し掛けられて少し肩がびくついてしまった。

水沼君を見ると凄く真剣な顔をしている。


「先に謝るよ、ごめん」
「水沼くん?」


「今日本当は会議なんてないんだ」

「……………へ?」



どういうことだ、会議がないなんて。


「えっと…ちょっと意味が」
「会議とでも言わなきゃ君は来てくれないと思って」


そう言って水沼君は自分の学生鞄から小さな可愛らしい箱を取りだして、私の前に差し出した。


「これを渡したかったんだ」
「え…?」


「誕生日おめでとう」



私は驚いて、思わず水沼君を勢いよく見上げる。

すると水沼君は私の手をとってその上に箱を置いた。


「水沼君、私の誕生日知ってたの?」
「君が前に覚えてねって自分で言ってきたんじゃないか」
「あ、あれ…そうだっけ」


なんだかそんなことをした自分が恥ずかしくなって俯く。


「これ、開けてもいい?」
「ああ」


そっと包装を解いて箱を開けると、そこには薄い紫色をした花の装飾が輝く髪止めが入っていた。


「わあ、綺麗…!」


私がそれに見とれていると水沼君が箱からそれを取り、すっと私の髪に止めた。
髪にも神経が通っているかのように錯覚してしまうほど、水沼君に触れられたところがどきどきしてしまう。


「やっぱり、君によく似合うよ」
「あっありがとう…凄く嬉しい!」

「それは良かった。じゃあこれで会議が嘘だったことも許してくれるかい?」

「…もう、怒るタイミングを逃したわ」

なんだか笑みが込み上げてきた。
友人たちとの約束は行けなかったし生徒会の会議もなかったけど、こんなに素敵なものを貰えたんだもの。

結果的には良かったのかも。


「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「ええ、そうね」


惜しいけれど付けてもらった髪止めを外して優しく箱に戻す。

そこでふと疑問が浮かんだ。


「ねえ水沼君」
「なんだい?」
「この紫色のお花って何の花?」
「え?」


あれ、私何か変なことでも言ってしまったのだろうか。こんな風に驚く水沼君はめったに見たことがない。

すると水沼君は呆れたようにひとつため息をついた。


「嘘だろ、君の誕生花じゃないか」
「えっそうなの!」

「…わざわざそれを探した俺が馬鹿みたいだ」
「う、ごめんなさい…」

「何の花かは自分で調べて見るといいさ」
「あ、ちょっと水沼君!」



水沼君はさっとマフラーを巻いて生徒会室を出ていってしまった。

かといって慌てて追いかけると扉を出たすぐのところにいて驚いた。


「ふっ、置いてなんか行かないさ。戸締まりもあるんだから」
「そ、そうだよね…」


戸締まりをしていざ帰ろうと二人並んで廊下を歩き出す。


「ねえ、水沼君」
「うん?」
「本当に、ありがとう…大切にする」


そう言って水沼君を見上げると私の好きなあの大人びた笑みを携えていた。


「ああ。」



すみれ
(小さな幸せ)


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*あとがき*

Aliceさん〜!\(^o^)/
お誕生日おめでとうございます

こっそりひっそり
水沼会長の夢を書いておりました!

と言ってもこの間お誕生日の日にちを聞いてしまった時点で気づいてしまわれていたでしょうか…


Aliceさんのように素敵な水沼氏にはなりませんでした(。´Д⊂)

ナマエ変換ほぼ意味ありませんでしたね…


途中で水沼氏を完全に見失いました←

ちなみに私も自分の誕生花なんてものは知りません←

そして港南高校のストーブがだるまストーブだったかもわからないのに勝手に登場←

うーん、難しいです!


ただAliceさんのお誕生日と聞いていてもたってもいられなくなった、私の押し付けがましい愛を受け取っていただけたら嬉しく思います(^.^)←


それでは最後に改めて
お誕生日おめでとうございます
生まれてきてくださって
ありがとうございます!
素敵な一年になりますように*


2012.02.19

日向繊