私苗字名前は忍術学園で新米事務員として働いている。 同期の小松田くんは皆にへっぽこだとか言われているし、よく失敗もするけど凄くいい人だと思う。 いつも笑顔で頑張っているうえに入門表と出門表のサインをもらうことに関してはプロ級だ。 しかしそんなプロ級の腕を持つ彼でも学園内に入ったことを気付かない人物がいる。 それが… 「名前ちゃん、こんにちは」 「……っ!?…雑渡さん。先生方呼びますよ。」 「うん、そんな照れ屋な名前ちゃんが可愛いよ。」 それがこの人、タソガレドキ忍軍忍組頭。 雑渡昆奈門さん。 いつも飄々として 掴み所の無い人。 でもタソガレドキの組頭ということで忍者としての実力はとてつもなくあるのだろう。 そんな組頭ともあろう御方がこの忍術学園に何の用かと言うと、保険委員の善法寺君や伏木蔵君に会いに来てるんだとか。 だが、 「急に現れるのやめてください…。今日も保健室ですか?」 「そうそう。ただ名前ちゃんが見えたからね、先に君の方へ来てみたんだ。」 そう、何故だか分からないが私も彼のお気に入りに入っているらしい。 これで会うのは数回目になる。 「そうですか。保険委員会は昨日皆で薬草を摘みに行ってましたから、今日はそれを薬にしているところかと。」 「そっか、じゃあ伊作君もいるね。良かった。」 そう言って頷いた雑渡さんは私の隣に並んだ。 そんな彼を不思議そうに見上げる私に、雑渡さんは包帯の隙間から覗く片目を優しく細めて言った。 「手に持ってるものからして、名前ちゃんも保健室だろう?一緒に行こうか。」 私の手にあるのは大量の包帯。 この間やっと予算が降りて買った新しい包帯だ。 私はというと注文しておいたものが先程事務室に届いたので保健室に持っていくところだった。 「ほら、持つよ。」 「あ、ありがとうございます…」 こうやっていつも私に優しくしてくれるところに…少しときめいてしまっているのは秘密だ。 そうして二人で保健室に向かった。 保健室に行くと障子は開いていた。 中を覗くと伏木蔵君と乱太郎君が疲れたように座っている。 そんな二人に声をかけた。 「こんにちは、二人とも。」 すると二人は驚いてこちらを振り返るも、私の姿を見ると笑顔になった。 「名前さん!こんにちは!」 「こんにちは〜…」 「あれ、善法寺君は?」 「今自室に忘れものを取りに行かれてますよ。」 「そっかあ…」 「名前さん今日はどうしたんですか〜…?」 「あのね、注文されてた包帯を届けに来たの。」 「え!やったあ!」 二人にの手をとって喜び合う姿に思わず頬が緩んでしまう。やっぱり下級生は可愛いなあ。 と、思っていたのに。 「さて、この包帯はどこに置けばいいんだい?」 雑渡さんの登場に乱太郎君の表情が一変した。 「く、曲者っ!」 しかしそんな乱太郎君をお構いなしに伏木蔵君は表情を輝かせて雑渡さんへ駆け寄った。 「こなもんさんだあ〜」 「やあ、伏木蔵君。久しぶり」 なんというか放ったらかしにされている乱太郎君が可哀想だけれど、雑渡さんと伏木蔵君が楽しそうだからいいか。 私はというと然り気無く雑渡さんの足元から包帯の入った箱を引き寄せて保健室の中へ入る。 「乱太郎君。この包帯どこに入れればいいかな?」 「えっ、あ…その薬棚の中にお願いします」 そう言う乱太郎君に返事をして薬棚に向かって歩き出すと、私の隣に乱太郎君が並んだ。 そしてにっこりと笑って言うのだ。 「私も手伝います!」 「ふふ、ありがとう。」 なんて可愛いのだろう。 そんな笑顔を向けられたら自分の頬が緩んでしまうのを止められなかった。 「確か包帯はこの引き出しだったと思うんですけど…」 そう言って乱太郎君はたくさんある引き出しの中でも少し高めの位置のものを引っ張り出す。 その間に私は乱太郎君の隣にしゃがんで包帯を箱から出していた。 しかし中々引き出しが開かないようで、乱太郎君は苦戦している。 「うーんっ!」 「大丈夫?乱太郎君、私が開け「うわあ!!」 私が開けるよ、と言おうとした瞬間、乱太郎君が引き出しを力一杯引っ張った勢いで薬棚が私達目掛けて倒れてきた。 危ない、と気付いたときにはもう自分は逃げられない体制だったので、咄嗟に乱太郎君だけを突き飛ばした。 乱太郎君の少し痛そうな声が聞こえた。 ごめんね、乱太郎君。 じきに来るであろう大きな衝撃に身構えていると、不思議なことに私を襲ったのは小さな衝撃と暖かなものに包まれた感覚だった。 驚いて顔を上げると、そこにいたのは 「いたた…案外重いんだねこれ」 顔をしかめた雑渡さんだった。 「………え?」 「大丈夫かい?名前ちゃん」 「な…何してるんですかっ」 「何って…名前ちゃんが怪我しそうだったからね。」 「そんなっ、「名前さんっ大丈夫ですか!」 「名前さん…こなもんさん…」 雑渡さんに言い返そうと思っていたら、少し離れたところから乱太郎君と伏木蔵君の心配そうな声が聞こえた。 「二人とも、大丈夫よ。今出るから…」 そう言ってグッと薬棚を押すも私の力だけでは持ち上がらない。 「雑渡さん、あなたも押してください。」 「ごめんね名前ちゃん。そうしたいのは山々なんだけど…ちょっと痛めたみたいで。」 「「ええっ」」 雑渡さんの言葉に声をあげたのは私だけではなく、乱太郎君もだった。 「わ、私たち伊作先輩呼んできます!」 そう言った乱太郎君は伏木蔵君を連れて保健室を飛び出していった。 「……雑渡さん…大丈夫じゃ、ないですよね。ごめんなさい。」 「何、名前ちゃんのせいじゃないさ。」 私なんかを庇って怪我をしたなんて、申し訳なさすぎる。 「でも、痛めたのでしょう…?背中ですか?肩ですか?」 「肩、かなあ…」 「…本当に、ごめ「なんちゃって」 「へ…?」 雑渡さんはさっきまでの痛そうに歪められた表情などどこへ行ったのか、楽しそうに笑ったあとグッと薬棚を押すといとも簡単にもとの位置へと立て直してしまった。 私は未だに呆然と座り込んだままである。 「ざ、雑渡さん…お怪我は?」 「うん?大丈夫大丈夫。これでも私タソガレドキの組頭だからね、あれくらいの衝撃なんともないよ。」 「なっ!じゃあどうして!」 怪我したふりなんかしたんですか、と聞くと雑渡さんは片目だけでにっこり笑って言った。 「名前ちゃんと密着してたかったって言ったら怒るかい?」 「あ、当たり前ですっ、心配して損した!」 「はは、怒ってる名前ちゃんも可愛いねえ。」 そう言うと雑渡さんはこちらに近づいてきて私に目線を合わせるようにしゃがんだ。 そして私の頭に手を乗せる。 「嘘ついてごめんね。心配してくれてありがとう。」 「次やったら許しません…」 「うん、気を付けるよ。」 そう言い終わると雑渡さんは私の頭から手を離して立ち上がった。 「さて、これだけ散らかってるのを見といて申し訳ないけど、今日は失礼しようかな。」 「善法寺君に会われなくて、宜しいんですか?」 「うん今日はいいや。」 「そうですか…お気をつけて。」 廊下へ向かい歩き出した雑渡さんを見送っていると、雑渡さんは何か思い出したのかこちらに戻ってきた。 「どうしたんですか?」 「うん。忘れ物。」 忘れ物?と思った矢先、雑渡さんは口元の布を素早くずらして 私の頬に口づけた。 「え」 「じゃあまたね、名前ちゃん。」 「あっ!ちょっと!」 私が声をかけようと思ったときにはもうそこに雑渡さんの姿はなかった。 何よ今の。 きっと巷で有名なセクハラとかいうやつだわ。 頭のなかでいくらそんなことを思っても、私の頬は熱くなる一方だった。 違う、違う、 (ときめいたりなんかしてないわ) *********** 一万打企画◎uri 様へ 大変遅くなってしまって 本当に申し訳ありません! しかも今までにないほどの 駄文…ごめんなさい(´;ω;`) 途中で訳がわからなくなりました← しかし今回リクエスト していただいて本当に ありがとうございました(T_T) これからもっと勉強 していこうと思いますので 次の機会にまた参加 していただけたら嬉しいです! 私にリベンジさせて下さい← それでは、本当に ありがとうございました! 日向繊 |