今日は珍しい非番。

書類整理も終わり、任務も入っていないため組頭がお休みをくださった。

一人で休むのも申し訳なくて他の人のところへ何か手伝えることがないかと顔を出したけれど、どの人も今日はほとんどお仕事がないらしく手伝いを断られてしまった。


いくらお休みだと言っても急な任務が入ったときに直ぐに出動出来るよう場内に居るべきだろうと思うと、何もすることがない。

特別読みたい書物も今は無いし、部屋の掃除もこの間してしまった。


「うーん…どうしようかしら…」


悩みながらも自室に戻ると、この間の給料日に買った上物のお菓子があることを思い出した。


「そうだ!」


そこで同時に一人の可愛い後輩を思い出し、足早に彼のもとへと向かう。




山本さんや陣左よりも比較的奥の方にある部屋に、私のお目当ての彼はいる。


部屋の襖は空いていた。


私は足早に近づき、部屋の中を覗き込みながら彼の名を呼ぶ。


「尊奈門君」

「えっ、あ!名前さん!」


どうやら彼は寝転がっていたようで、私の姿を見た瞬間急いで体を起こした。


「あら、寝てたわね?」

「す、すみませんっ!!」


尊奈門君は私に怒られると思ったのか慌てて謝る。

私は全く怒ってなどいないのだけれど、面白いからこのまま少し芝居でもしようか。


声をいつもより少し低くして、笑わないように表情を堅くする。



「今は一応勤務中でしょう?しゃきっとしなきゃ駄目よ。」

「はい、すみません……」


しゅんとなってしまった尊奈門君は可愛らしいけど、可哀想だ。

でも、まだネタばらしをするのもつまらないからもう少しだけ。


先程の声と表情をそのままに続ける。


「そうね…じゃあ尊奈門君、お仕事がないようならそこの縁側に座布団を二つ出しておいて?」

「はっはい!」


大きな返事をした尊奈門君に宜しくね、と一言かけて私は自分の部屋へと向かった。




自室に戻ると先程のお菓子を取りだし、台所へと急ぐ。

そしてそこで女中さんにお茶を入れてもらった。


それらをお盆に乗せ、多少浮き足立つのを押さえつつ大好きな後輩のもとへ向かう。