お粥を食べ進める組頭。

そういえば今気付いたが、風邪を召されてから組頭は忍び装束を着てらっしゃらなかった。

もちろんいつも口元を覆っている布も無いわけで、いつもより露出されているところが多い。

口元に加え髪や首筋、鎖骨なども見えて…

組頭が随分と男前なのだということが見てとれた。


随分と見つめてしまっていると、それに気付いた組頭がにやりと笑って言った。


「なあに、名前ちゃん。私に見とれてるのかい?」

「なっ!ち、違います!」


そうだ、この人はいくら見た目が色男だとしても中身に問題があるんだった!


「ねえ名前ちゃん」
「今度は何ですか!」

「これ、ご馳走さま」
「え、あ…はい」


気付けば組頭はお粥を平らげていた。


私ったらどれだけ組頭を見ていたんだろう!


ふと組頭を見上げると、可笑しそうに笑っていた。


この人はどこまで私をからかうんだ!


恥ずかしくなった私は急いでお盆を受け取り、この間組頭に処方したお薬とお水を渡す。


「お薬お飲みになってください!」
「うわ…、これ凄く苦いんだよね」

「良薬は口に苦し、ですから」
「うーん…」



お粥のとき以上に渋る組頭。

でもいつも私をからかうんだ、苦い薬くらい飲んでもらわなきゃ。


そう思っていたら組頭がふと顔を上げた。


「名前ちゃん、これ口移しで「飲んでください」

「ねえ「飲んでください。」



口移しなんかするもんか。

未だに渋る組頭を他所に、私はプイと顔を反らした。



しかし待て。

いつも私はこの人にからかわれていて、いつかは仕返しをしたいと思っていたのだ。

この人の余裕に満ちた顔をどうにかして崩してやる。




このときの私はどうかしていたのか、いつもなら考えられない暴挙へと出てしまった。




未だに水の入っている湯飲みと薬を両手に持っていた組頭から、それらを奪い取った。


そしてそれらを自分の口に含み




組頭に口移した。



「……ん、…ふ…」
「………っ」



組頭の体が強ばったのが分かった。

それがはたして苦い薬が口の中に入ってきたことに対してなのか、私がしていることに対してなのかは分からないが。


組頭が全ての薬を飲み込んだことを確認して、私はようやく唇を離した。


組頭の両頬に添えていた手も同時に外して、距離をとる。




「……はあ…は」
「………名前、ちゃん?」

「…あの水の量では胃に悪いですから、あと湯飲み一杯分くらいの水はお飲みください。」
「あの」

「それじゃあ、失礼します。お大事に。」
「名前ちゃん」




組頭の声など聞こえていないように、足早にここを去ろうと腰をあげようとしたとき、手を捕まれた。


「名前ちゃん」


思わず組頭を見ると、真剣な眼差しだった。

お互いに見つめ合い、組頭の次の言葉を待っている。

すると彼は言った。



「顔、真っ赤だよ」


「…っ!!」



そして彼は笑うのだ。

何よ、いつもそうやって馬鹿にして。


私はもう、恥ずかしさと惨めさで涙が滲み出てきてしまった。


「名前ちゃん、」
「やっ!もう、離してください!」

「名前」
「もう嫌だって言っ…―――!」



抵抗する私を組頭は引き寄せ、布団に組敷くと口付けてきた。



「…んぅっ…、…ふ…んっ……ん」


私の口内に侵入してきた組頭の舌は、熱のせいか熱い。


そして深く濃厚な口付けが私の頭を溶かすのに時間はかからなかった。


暫くすると組頭は下唇を軽く吸って、それを離した。



「…はっ…は、…ん」
「…名前ちゃんたら、可愛いなあ」

「…からかうのは、やめ…て、ください」
「からかってなんかないよ。本当に思ってる。」



そう言ってまた触れるだけの口付けを落とす。


「ねえ、さっきの口移しは期待してもいいの?」
「………」

「…きちんと付き合わないか?」
「…………」

「私、本気だよ。」
「……でも」



そこまで言ったとき、廊下から足音が聞こえた。


これは…諸泉くんだ!


私は働かない頭を気合いで動かして、覆い被さっている組頭を退かし立ち上がると乱れた髪と着物を急いで直した。



「名前ちゃん」
「諸泉くんが来ます、もう横になってください。」


手拭いを水で濡らし絞る。

諸泉くんがすぐそこまで来ているからか、組頭も渋々布団の中へと入った。


何か言いたげな組頭の額に手拭いをそっと乗せる。


そして立ち上がり部屋を後にしようと障子に手をかけた。


そこで振り返らずに言った。



「…あなたのお風邪が治る頃にお返事させてください…」
「…え」

「お大事にしてください。」



組頭の返事は聞かずに外へ出た。

丁度来た諸泉くんには適当に挨拶をして自分の診療室へと足早に戻る。


あの人の風邪が治る前に、お返事の言葉を考えなくちゃ。


でも、その返事がどちらかはもう既に決まっていた。



風邪っぴき
(いつもより強引な貴方)




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一万打企画◎雑渡さん夢
風邪っぴき雑渡さん


とまとっとー様へ!


大変お待たせしてしまって本当に申し訳ありませんでした!


とても細かく設定して頂けたので凄く楽に書けました(^.^)☆出来は別として…←

ありがとうございます\(^o^)/!


というか雑渡さんの夢を書くときいつもチュッチュさせてしまう私。

ごめんなさい(>_<)

連載はあまりチュッチュさせないようにしよう←

そして何より忍者なのに足音立てるのどうなの尊奈門君ていう…ごめんなさい。



それでは、とまとっとー様、この度は一万打企画に参加してくださり本当にありがとうございました!!



日向繊