ふと隣を歩く雑渡さんを見上げる。


"こん兄ちゃん"と呼んでいたときよりももっと大人びていて、年の差を思い知らされる。


スーツは似合ってて格好いいし、とっても優しい雑渡さんはモテるんだろうな…。


「どうしたの?」
「い、いえ…なんでも」


危ない。見つめすぎていたか。
そう思ってまた目線を足元に戻した。


「そういえばさ、名前ちゃん大学はどこ受けるの?」
「…黄昏時大学です。」

「え、本当に!」
「はい。確か雑渡さんもでしたよね。」


そう。私が大学に行きたい理由、それは雑渡さんの後を追いたい、ただそれだけ。


実を言うと私は小さな頃から雑渡さんに憧れていた。


でも5歳も年下だし、雑渡さんは優秀な人だから私なんて相手にしてくれないと思い、せめて大学は同じところに行きたかった。


親はそんなことは知らないけれど、良い大学ではあるし、ただ私がやる気になっていることに喜んでいる。




「そっか…名前ちゃんが後輩か。なんか嬉しいねえ。」



そう言って笑う雑渡さんはかっこよくて、頬が熱くなる気がした。夜道で良かった。



それからは大学受験のコツなどを聞いて家路を歩いた。

雑渡さんと話していたら、駅に着いたときにはなくなりかけていたやる気がずいぶんと出てきていた。


自分で言うのもなんだけど、単純だなと思う。



家の前に着いた。
別れの挨拶をしようと足を止めて雑渡さんと向き合う。


「じゃあ雑渡さん「それさ」


「え…?」
「今日会ってからずっと気になってたんだ、その雑渡さんて言うのやめよ。」



じゃあなんて呼べば…と思っていると、雑渡さんは何か企んでいるような、楽しそうな笑みを浮かべて言った。



「こん兄ちゃん。」
「!」

「昔はそう呼んでくれてたじゃない。」
「や、あの」

「駄目なの?」
「う…」


だって、18にもなってそんな呼び方恥ずかしい。

それに私はあなたに憧れているし、慕っているのだ。いつまでもお兄ちゃんと妹みたいな関係も嫌だ。


なんて思っても、それを言葉にはできなかった。




「こん、兄ちゃん……」


渋々私は、小さく呟くように言った。


しかし当の"こん兄ちゃん"からは何も返ってこなくて、ふと見上げてみると…こん兄ちゃんは口元を右手で隠すようにして目線を反らしていた。


「え、あの…どうしたんですか」
「や、なんでもないよ!」


こん兄ちゃんは口元から手を離して顔をパタパタと扇いだ。こんなに寒いのに何をしているのだろうか。



そこでふと自分の首に巻かれたマフラーを思い出した。

慌ててそれを外してこん兄ちゃんに差し出す。


「これ、ごめんなさい。ありがとうございました!」

「え、ああ。いいよ。それ名前ちゃんにあげる。」


こん兄ちゃんはそう言って私の首にそれを巻き直した。


「可愛くないやつで悪いけど、受験のお守りってことで。」


だから頑張ってね、とこん兄ちゃんは私の頭を撫でた。

こん兄ちゃんに、マフラーを貰ってしまった。

確かにグレーの無地のマフラーなんて女子高生で着けている子はすくないけど、慕っている人がくれたものだ。こんなに素敵なものはない。


なんだか色々と恥ずかしくなってきて、私はまたマフラーに顔を埋める。



「あ、ありがとうございます…」
「どういたしまして。」

「試験、頑張りますね。」
「うん。受かったらご飯でもご馳走するよ。」

「えっ本当ですか」
「名前ちゃんの好きなものを食べにいこう。」

「ふふ、楽しみにしてます」
「うん、私も。」


じゃあそろそろ…と声をかけて家の敷地に入ろうとしたとき、こん兄ちゃんは私の名前を呼んだ。


「名前ちゃん、次会うときは敬語も直してね。」

「え…あー、はい…」

「じゃあ、おやすみ。」



手を振って隣の家に向かって歩み始めた背中。私はずっとこの背中を慕い、憧れ、好いてきた。

久しぶりに呼んだ昔の愛称。

なんだかもう少し近づきたくなって、その背中に向かって叫んだ。


「こん兄ちゃん!」


大好きな広い背中は振り返り、大好きな人の顔が見える。

私達の距離はほんの10mくらい。


「受かったら、私、ハンバーグ食べに行きたい!」


久しぶりに敬語をなくして話すのは緊張してしまう。ああ、ハンバーグなんかじゃなくてもっとお洒落なものを言えば良かったな。


「うん、美味しいお店探しとくよ」


でもこん兄ちゃんは笑いながらそう言ってくれた。

よく考えれば今更大人っぽく振る舞ってもあんまり意味はないか。




「こん兄ちゃん」
「ん?」

「ありがとう、おやすみなさい」




そう言って私はそそくさと家の中に入った。

やる気は戻った。前よりも増して。

こん兄ちゃんと同じ大学に行くんだ。


早くあの人に近づきたい。
その思いが私を突き動かす。




隣のお兄さん
(少しでも近づきたいの)


(「こん兄ちゃん、受かったよ!」)
(「おめでとう、名前ちゃん」)



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夢野様へ◎雑渡さん夢 現パロ

まずは大変おそくなってしまって本当にすみませんでした!!

1ヶ月以上お待たせしてしまい申し訳ないです(T_T)


しかもこんな仕上がり…ごめんなさい!

妄想ぶっ飛びました←

そして途中で雑渡さんを見失いました←

かっこいい雑渡さんはどこへやら…むしろ誰っていう


ちなみに私はデブなのでスカート丈は膝上10cmが限界。この5cmは大きいと思います!

そして私は大学受験を経験していないのでそこらへんよくわからないんです……


本当にすみませんでした!!


最後に今回はご参加していただき本当にありがとうございました(^^)*

こらからもどうぞ宜しくお願い致します◎


日向繊