先程座布団を出しておいてと頼んでおいた縁側に行くと、尊奈門君はきっちりと二つ並べていた。


どこか気分の落ち込んでいる尊奈門君に声をかける。


もちろん、"いつも通り"に優しくね。



「尊奈門君」

「あっ、ざ、座布団出しておきました!」


「うん、ありがとね。」

「それから…、さっきは本当にすみませんでした。もうあんなことがないよう気を付けます。」



いけない、予想以上にこの人は真に受けている。

早くネタばらしをしてあげなければ!



「あ、あのね尊奈門君!」
「はい…」

「私、本当は全然怒ってないの。」
「………はい?」


全く意味がわからない、という顔をした尊奈門君。まあそうだろうな。私だって先輩や上司にあんなことされたら怒られたと思ってしまうもの。



「あれね、怒ってるふりだったのよ。ごめんね?」


私がそう言うと尊奈門は次第に体の力が抜けていき、ついには座り込んでしまった。



「ご、ごめんね尊奈門君」
「あー、もう…良かったあ…。」

「え?」
「私本当に名前さん怒らせちゃったと思いましたよ!普段凄く優しい名前さんが怒るなんてめちゃくちゃ怖くて…どうしようかと」

「ご、ごめんね…」



なんだか本当に申し訳ない。

こんなことになるならするんじゃなかった。



「本当に怒ってないんですよね…?」
「ぜ、全然怒ってない!」

「なら、良かったです」


そう言って尊奈門君は安心したように笑ってくれた。

なんかもう、可愛いなあ。



そこで私はふと本来の目的を思い出した。



「あ、尊奈門君」
「何ですか?」


「お詫びと言っちゃなんだけど…良かったら一緒に、お菓子でもどう?」



私がそう言いながらお茶とお菓子が乗ったお盆を掲げると、尊奈門君はいつもの元気な笑顔で大きく返事をしてくれた。




二人ならんで縁側に腰掛け、お菓子をでも頬張る。



「うん、美味しい」
「ですね!ていうかこんなに高級なお菓子を貰っちゃって良かったんですか?」

「いいのいいの。尊奈門君と食べようと思って買ったんだもの。」
「……へへ、ありがとうございます」



お菓子を片手に、少しほほを染めながら照れたように笑う尊奈門君は本当に可愛い。



タソガレドキに入ってきたばかりの頃はもっと照れ屋で、今みたいなことを言うといつもほほを染めてそっぽを向かれていた。

そのときの尊奈門君も可愛かったけど、今の尊奈門君はもっと可愛くて大好き。


「それにしても、暇ですね…」
「そうね、でもたまにはいいわね」


「はい。名前さんとこんなに美味しいお菓子を食べれますからね。」
「ふふ、そうね。」


「でも、さっきみたいなドッキリは御免です。」
「う…ごめんなさい。」


「はは、冗談ですよ。それにあれは私が寝てたのが悪いんですから、名前さんは何も悪くないです。」



そう言って尊奈門君は笑った。

その笑顔はやっぱり可愛いのだけど、少しだけ、本当に少しだけ、凛々しさというかかっこよさがあった。


いつの間にか彼も成長していたんだとこんなところで実感するだなんて。

彼の成長はとても嬉しい。

だけど少し、寂しくもあった。




私はそのほんの小さな寂しさを打ち消すように、お菓子を頬張った。




二人ともお菓子を平らげ、お茶も飲み干してしまうと今度こそ暇になってしまった。


「本当に暇ね…」
「そうですね…何かすることないですかね」

「…………お昼寝しようか」
「…………はい?」



決まり!と言って尊奈門君の腕を引いて半ば強引に縁側に二人で寝転んだ。



「ち、ちょっと名前さん」
「暖かいし、少しだけ。ね?」


「ねっ、て…大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ、今日はお仕事こないような気がするもの。」



私の言葉に尊奈門君は少し呆然としたあと、諦めたように笑った。

二人向かい合わせになる。



「なんだか今日の名前さん、駄々っ子ですね。」
「………そう言う尊奈門君は今日はなんだかかっこいいわね。」


「えっそうですか?」
「ええ。私のこともそろそろ相手にしてくれなくなりそう」


「そんなこと絶対ないですよ!」


尊奈門君はずい、と顔を寄せてきた。


大きな目をした綺麗な顔立ちの尊奈門に間近で見つめられて、少し怯んでしまう。



「そ、尊奈門君」
「私が名前さんから離れるなんて絶対あり得ません。」


「う、うん」
「だから名前さんはそんなこと気にしないで、私にもっといろんなこと教えてください。」


そう言いきった尊奈門君はかっこよくて。

でもさっきみたいな寂しさは不思議となくて。

私は笑って頷いた。



そこからは暫く他愛のない会話をしていたのだけれど、気がつくと二人とも眠りについていた。


きっと起きたらまた仕事があるだろうけど、私の気分はずいぶんと良かった。


うんと沢山仕事がきても、今なら頑張れそう。これも可愛い後輩のおかげかしら。





本日限定
(駄々っ子な私とかっこいい君)




(「ねえちょっと陣内あれどういうこと。」)
(「あー、苗字と尊奈門ですか。あの二人本当に仲良いですよね。」)
(「何で寄り添って寝てるの!」)
(「え…さあ…」)
(「私ちょっと尊奈門蹴り飛ばしてくる。」)
(「ち、ちょっと組頭!!」)




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一万打企画!
大佐さまへ\(^o^)/


大変長らくお待たせいたしました!
本当に本当にすみません!!


お待たせした挙げ句ずいぶんと長く意味がわからないものになってしまいました…とにかく尊奈門君とたくさん絡めようとした結果こんな感じに←


よく勉強してきます!


この度は一万打企画にご参加頂き本当にありがとうございました!



日向繊