タソガレドキに努めて早2年。

今日も私は忍のお仕事をする傍ら、ひとつ先輩の諸泉さんと共に組頭の身の回りのお世話をします。

私は専ら組頭の包帯を洗濯するばかりですが。

毎日変えられる大量の包帯。

酷く汚れたりはしないが、毎日綺麗に洗う。

初めは延々と続く同じ作業にうんざりもしたが今ではコツも掴んで楽しくなってきた。

今日の分も洗い終わり、それを全て干すと、もう乾いている昨日のものを一つずつ綺麗に巻いていく。


実を言うとこの時間はとても好きだ。


私が綺麗にした包帯を持っていくと、組頭はいつもお礼と供に、私を誉めてくださる。

私はそれが嬉しくて、その言葉を楽しみに包帯を巻いていく。

大好きな組頭のことを考えながら。


そう、私は組頭が大好きだ。
上司としてとても尊敬もしている。

だかそれと同じくらい、男性としての魅力を感じているのだ。



優しく誉めてくださるところ

厳しく叱ってくださるところ

実は小さい子が好きなところ

足を揃えて横座りするところ


どれも好き。

でも絶対に叶わない恋だから、諦めてもいる。今はただ組頭の包帯を任されているだけで十分だ。




シュッ、シュッ、


「よし…、と。」


綺麗に巻かれた包帯が多数私の部屋に広がった。全て巻き終わったそれを抱えて、ある部屋を目指して歩き始める。


目的地に着くといつもは閉まっている障子が開いていた。


「組頭、失礼します。苗字です。包帯を持ってきました。」

「どうぞー」

開いた障子の中を覗くと組頭がお茶を啜っていた。

失礼します、と言って中に入り指定の棚に包帯を入れていく。


「いつも綺麗な包帯ありがとね。」
「いえ、全然。」


内心嬉しく思いつつ、口ではそう言いながら作業を続け、全て入れ終わったので部屋を出ようとすると組頭に声をかけられた。


「名前ちゃんこの後の予定は?」

「特にありません。」

「じゃあ一緒にお茶しないかい?いいお菓子があるんだ。」


一人で食べても寂しいからねー、と後ろの棚からお菓子が入っているのであろう箱を出してきた組頭。


「え…よ、宜しいんですか?」

「当たり前でしょ。ほら、お茶入れるから座りなさい。」

「あ!私がっ、」

「いいから座っといて。」

「は、はい…」


おとなしく正座をして待っていると組頭がお茶と一緒に美味しそうなお菓子をお皿に出してくださった。


「はい、どうぞ。」

「ありがとうございます。…うわあ、美味しそう!」


お皿の上に並んだお菓子はどれも美味しそうなものだった。やっぱり組頭ともなるとお給料も良いから高級なものも買えるのだろう。


いくら戦好きのタソガレドキ城でくの一をやっているといってもやっぱり女の子である私は甘いものには目がない。


組頭に進められひとつ口にしてみると、上品な甘さが口一杯に広がった。



「んーっ、美味しいです!」


思わず頬が緩みつつ組頭に伝えると組頭は優しく笑ってくださった。


「名前ちゃんは本当に美味しそうに食べるねえ。」

「本当に美味しいんですよ。」


私の答えに組頭は満足げに笑ってお茶を啜った。









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