幸せ


歩き続けて幾星霜。
蒼き空より堕ちたるは、天使が如く輝ける光。
私の意志は強くまた脆く。
今未だ叶わぬ理想を思ゆ。


眼前に広がるは、この世の全て。
見えぬモノは無きにしも、解せぬモノで溢れつる。
ならばと歩むのは我が手と足で、永遠の旅路へ門う。誰か誰かと嘆く彼の子は、涙を流し蹲る。
何故なのかと悩む其の子は、頭を抱え立ち止まる。
歩みを止めた弱者を見捨て、私はひたすら明日を見る。
始まりにすら並べてはおらぬ、未熟なこの身を奮い立たせ、始まりの大地へと飛び立つ。


風は緩やかに此の髪を撫ぜ、まるで母のように我が身を包む。
未だ幼い心を躰を鼓舞するかのよう我が背を押す。
我が願いを知っているかのような振る舞い。
ならばと抱き締め返すは空なる胸。
一人でありながら独りではないと知り、熱くなるはこの鼓動と涙。
必ず成し遂げんとぞ誓うは他ならぬ自分自身に。
願いは広大でまた曖昧。
意味は多数に存在し、対象は無限。
だからこそ願うのだと謳う己は、実に滑稽と見られただろう。
真に理解してはおらぬ、またしようとせん輩は腐るほど転がっていよう。
自分が信じた願いならば何に恥じようか。
所詮は我というモノと他人というモノしか在り得ぬ世界故。
理解されよう等と考えることこそ、己には滑稽に映る。
我とは我であり、他は他。
決して交わらぬ混じらぬ久遠の天地。
それでも互いに歩み寄るのは交じらぬからこそ行い。
自分を自分だと確かめるが為の対比物。
自分が如何なる存在か映しだす為の鏡。
だからこそ愛しく思ゆるモノ。
他に対して求めるは真の理解ではなく、緩やかな距離とその温度。
真の理解はできるもので無しにまた、してはならぬモノである。
我が内だけに秘めし願いはまた我のみのモノ。
理解は求めず。


行動こそが全てであると学び幾年。
躰は傷つき、足は土を纏い汚れておらぬモノは無し。
ただ一つ、この願いを秘めた心のみが輝ける唯一のモノ。
迷いを払い、甘言を断ち切り、誘惑に打ち勝りし誇り在る魂。
何事にも弛まぬ其は我が道標なりて、闇が如し先を照らす。
幾度となく迷い悩み埋もれしが、其の心の、魂の願いが全てを導く。
願い続けた願いは、望み続けた望みは何モノにも負けぬと識る。
喩え私の願いを嘲笑われようとも、蔑まれようとも、真に信じたものならば誇りを保ち続けることは、なんと容易い事か。
泣き苦しんだ過去も、これからの未来を創る為と識れば、なんと輝くモノか。


未だ果ては見えぬ。
空は絶え間無く続き、私を先へと歩ませる。
嘲笑うかのように居る影は付かず離れず、弱さを突き刺す。
共に行かんと云うたモノは尽く去り、付き添わんと訴うモノは何時の間に消ゆ。
躰は一人。
しかし心は独りにあらず。


一つを得んとし、一つを殺す。
我が身を生かそうとし、汝らを殺そうとする。
儚い運命とは識りながらも解りながらも、此が頬を伝う涙を何と云う?
悲しみではなく哀れみでも無し、ただただ抗えぬことにぞ気付かされし、無力の涙。
血を纏い臥すのは汝が躰か、我が心か。
涙を流し眼を閉じるのは汝が無き眼か、我が眼か。
生かすは我か。
はたまた汝か。


願いを抱き幾星霜。
旅立ちの時は遥か昔と、流れた季節を思い出す。


……
幸せ関係が多いのは、自分自身が幸せになりたいからかも知れない。


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