ディオスコロイ計画 小説 | ナノ
彼方と此方の物語【Fourth】
牢の彼方はあちらの世界。
牢の此方はこちらの世界。
そう隔たれるは空間だけでなく。
人間としての世界までもがそれにより隔たれる。
此方にいるのは、刹那に生まれが遅かった者。
彼方にいるのは、初めに生まれ出でた者。
其れが定義するものは、全てが時間だけでしかなく。血筋や場所、その他の全てが意味なきモノへと変わりゆく。
嘆きの姫御子は、病の淵に沈みゆく。
何故、同じ顔であり同じ日に生まれながら、これほど無慈悲な差があるのだろうか。
これが彼の子の運命なら、何故私は生んでしまったのか。一人ならば柵は無く、後ならば哀しみも無かったものを。
片や時代の寵児でありながら、片や時代の忌子。
生まれながらにして定められた、変えられぬ約束。古の時代から続く、根拠の無い風習。
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