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先ほどのように、自らの血を分けた子どもにさえそのような扱いをするのだ、フェルマータにとってたかが領民である人々への扱いは、それ以上に厳しいということは言うまでもない。
まずは、土地と建物の全てを公有のものとし、フェルマータが許しを与えたもの以外の私有を一切禁じた。
それに引き替え、今まで入荷を制限、徹底管理されていた銃火気類の販売や所持の規制緩和を行い、売春や麻薬などの一部許可を行った。
それは、今まで父親が築き上げてきた成果の全てを壊すという選択に他ならない。
そんなフェルマータにいつまでも領民が黙っているはずがない。しかし、フェルマータへの冒涜とも取れる行為をしたものは、すぐに捕らえられ罰せられた。
女も子どもも関係無く、等しく『死』が与えられるのだ。
処刑場となる中央広場には、前領主の時代では人々が集まる憩いの場であった面影は全く無くなっている。石畳に染み付いた黒い染みが、そこで何が行われているのか想像に容易かった。
そんなフェルマータの横暴に耐えきれなくなった領民は、故郷を捨てて新たな地へと引っ越そうとした。
しかし、領民がいなくなっては税を取ることが出来なくなり、贅沢な暮らしが出来なくなる。
何より、領民が中央へと訴えてしまってはフェルマータの全てが無くなってしまう。
それを良しとはしなかったのだろうフェルマータは、領土をぐるりと高い壁で覆い、唯一の門には屈強な兵士を数十人も配備した。壁もただ単なる壁ではなく、越えようものなら、無数に張り巡らされている高圧電流線によって炭と化すのだ。
領民は逃げられない事に愕然とし、またフェルマータからの搾取が終わらない事に呆然とする。
何故、あんなやつなために働かなくてはいけないのか。
どうせ、働いたところで、結局はフェルマータへの税となって消えてしまうのなら。
そんな考えが人々に芽生えるのは想像に難くないことであった。
真面目に働くことへの意義を見失い、酒や女に荒れる者。
または、金にものを言わせ、フェルマータに取り入ろうとする者。
様々な悪業が都市ユニコットにはびこり、フェルマータ治世下になってから、瞬く間に都市ユニコットは以前の輝きを失っていったのだった。
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