空を見上げて 本章 | ナノ



15


 次の日、朝日が昇るとともにメゾたちは起床し、再び都市ユニコットへの道を歩き始めた。

 その道中、だんだんと少なくなっていくすれ違う人の数に、メゾはふと気付いた。
 一応、メゾたちが歩いているのは一番使われているはずの道。草は払われ、恐らくユニコットから近い場所まで来ているのだろう、先ほどまでの土の道ではなく、石畳が整然とひかれている。

「人通りが少なくなっていくと思うのだが」

 メゾは前を歩くバスに声をかけた。バスは歩みを少し緩めると、メゾの隣に並んだ。そして、あまり聞かれたくないのだろう、少し小さめの声で言った。

「……ユニコットの状況を知っているだろう。 いくら人の出入りを制限したとしても、噂は少しずつだが確実に広まっている。 あそこへ行くのは物好きか、悪党か、本当に何も知らない奴くらいだ。 もちろん入ってしまったら、簡単には出られない。 人通りも少なくなるはずさ」

 バスはそれだけいうと、また歩く速度を早め、メゾたちの前に行った。


 辺りの景色は静かで、鳥のさえずりさえ聞こえてくるほど。こんな道が、この先そんなに悲惨な都市へと続いていくなんて、メゾにはにわかに信じられなかった。

 しかし、十数分ほど歩いたその後、ユニコットの真実が少しずつその壁から漏れだしてきている事を、メゾとテノールは身を以て知ることになる。



 木々の間に蹲る、何か黒いものをテノールは見つけた。
 テノールは立ち止まると、その黒いものを指差し、2人に尋ねた。

「なぁ、あれなんだ?」

 テノールが指差した方は木々が生い茂り、ぱっと見では何も無いように見える。しかし、田舎育ちのテノールには緑の中にある黒点に素早く気付くことができた。

「……あぁ、あれか。 何だろう、何か布切れのようにも見えるが……」

 メゾがテノールの指差した方を見る。
 メゾにもその黒いものが何なのか、遠めに見ただけでは分からなかった。




「あれは、脱出者の末路だ」




 前を歩いていたバスは、静かにそう言った。
 メゾとテノールは前を歩くバスの背中を凝視する。今度は、バスの足が緩まることはなかった。
 2人は再び足を進ませ、バスの後ろに並んだ。
 2人が近づいたことを察し、バスは話した。

「……よくある光景だ。 奴は正規の方法での出都を拒まれたのだろう。 そういった奴は、憲兵の目を掻い潜り、数多の罠を越えなくては出都は出来ない。 たとえ違法出都が出来たとしても、その時の怪我が元で、あんなふうにのたれ死ぬのが落ちだがな」

 出来るだけ感情を乗せずに、バスは後ろの二人に言った。それは本当に何も感じないのか、憤りを隠すための手段なのか、二人にはわからなかった。


 それから、何かとそういった物がぽつぽつと目につくようになった。先ほど、テノールと見た黒いものが酸化した血の色なのだというのも、メゾは次第に気付いた。



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