12
彼女は、仲間を得たようでした。
空から聞こえたその声は、いつもと違ってとても人間的で、嬉しいのにどこか苦しい矛盾を孕んだ音に聞こえました。
彼女たちの行き先も、偶然私の知っている都市で、またそんなに遠くありませんでした。彼女がまた違う場所へ行くまでに、どうしても合流しなくてはなりません。
今回は偶然、彼女たちの行き先を知ることが出来たから良かったものの、次はどうなるかわからないのですから。
私は、窓を開け放ちます。涼しい夜風が私の長い髪を撫ぜていきます。空は綺麗に澄んでいて、たくさんの星々が瞬いており、勝手ながら私の出立をお祝いしてくれているみたいで、少し嬉しく感じました。
私は一つ、大きく深呼吸をして、ベッドに敷いてあるシーツを静かに剥ぎ取ります。窓にあるカーテンも同じように取ります。それらを繋ぎ合わせて、長いロープを作りました。念の為に足場として、所々に丸い結び目を作り、その端をベッドの天蓋の柱にきつく結び付けました。
逆側は窓の外に垂らすと、長さは若干足りないようですが、飛び降りても問題ない高さだと判断し、私はゆっくりとロープを伝っていきました。
無事、両足を地面に付けることができ、ふと安堵の息をもらしました。ですが、まだ敷地内であり油断は出来ません。誰かと出くわしてしまう前にと、私は足早に屋敷の裏側に回りました。
正面の門は警備員がいるので、そこから出ることは出来ません。私は裏口に向かいます。そこは、まるで隠されたように蔦が生い茂り、頑丈な南京錠で施錠されています。お父様もお母様も、この扉が開くことを知りません。
私はバスケットの中から、金色に輝く鍵を取出し、その南京錠へと差し込みました。ガチャと、鈍い音とともに、二度と開かないと思われていた南京錠の封印はあっさりと解かれました。
この鍵は、祖母から受け取ったもの。彼女は、私が必要になることを知っていたのでしょうか。
祖父母から頂いた、当時は疑問に思っていた品々は、この日のためにあったのでは、と思ってしまうほどです。
ともかく、早くここから離れなくては。悪いことはしていないつもりなのに、少し罪悪感を抱いているのは、やはり心の中では悪いことだと思っているのかもしれません。
裏口を開け、私は勢い良く外へと飛び出しました。
空は、朝焼け。綺麗な紅に染まっています。
彼女たちもこの紅の光が届くところにいるのでしょうか。
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