うたかた
Because there was that pain, there am me now.
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貴方が空なら 彼は海
自分はその境を造る水平線
空はその大きさゆえ
全てを受け入れて
海は空の響きを受けながらも
優しさで包み込む
自分は何かと自問すれば
空と海を裂いているとふと気付く
それが哀しくて
それでも其処にいたくて
幼い独占欲に泣く自分に
彼らはそっと囁くのだ
水平線があるから
空と海があるのだ、と
会えなかった二人が
会うことが出来たのだ、と
此の想いが醜いことを知って
それでも、と願う代わりに
二人のために存在していくことを選んだ
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ふと見上げれば空を青く
それを見えない目で彼女は見ている
光を感じるのだ、と
そう微笑んだ彼女は
全てを理解しているように見えた
一枚隔てた先へは行けないと
内側が自分の世界なのだと
言外に含ませる雰囲気は
どこか、私と彼女の心のようで
いつか、と願えば
いずれ、と囁くように
確かに私と彼女の距離は
見えないほど広がっていた
それを未来というのか
それを逃避というのか
確かに私と彼女の距離は
等しくゼロであった
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結果の為に理由を作っていたと気付いたのは
年甲斐も無くあの子から逃げていた時
久しぶりに見た其の目は
諦めと悲しみと哀れみに満ちていた
あの子の目は真剣で
対する自分は臆病で
其の眼から逃げ出すために
忙しさという理由を造り出す
見透かされてると思えば視線を反らし
踏み込まれると感じれば壁を築いた
自らの弱さを認めたくなくて
それすらも気付かれてると
どこかで悟りながら
それでも時間は心を溶かし
いつか時間は距離を越えた
そして今
薄れた理由を笑い合えるなら
きっと二人は
違う道を辿りながらも
同じ光を掴めるだろう
確かに見た其の目は
憧れと信頼と少しのはじらいで満ちている
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不確かな其れに縋るのは
其の不確かさ所以
不確かであるからこそ僕たちは
あらゆる手段を以てして
確かであろうと抗えるのだ
見えない其れは
時に僕らを惑わせ曇らせ競わせるけれど
それでも全ての正負を連れて
歩いていける道標と成り得るのだ
言葉にすれば曖昧で
意味を問えば不明瞭
だからこそ僕らだけの定義を付けて
その不確かさを守っていく
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