tulipano porporino(ギャグ甘)









『ハロウィン、ね…』










こう長生きしていれば、嫌でもいろいろな知識が頭に植え付けられる。
ハロウィンもまた然別だ。


誰からハロウィンについて聞いたのだろう、銀は仮装が云々言っていた。
結構なことだよ、銀の仮装だなんて
楽しみじゃないか。
仮装する、とハロウィンの前に僕に伝えるということはよほど菓子が欲しいのか、
単に嬉しくて考えなしに伝えにきてくれたのか。…後者だったら可愛いな、なんて
口には出さないけど。





目の前に並ぶ色とりどりの菓子。
そう、僕は人生で初めて
“真面目に買い物をしようとしている”。
銀のために。
彼女の可愛いイタズラも面白そうだけど、やはり喜ぶ顔に勝るものはない。
それに、僕はイタズラされるより、する方が好きなんだ。


しかし…どんな菓子がいいのだろうか…


『………悩むな……』





「お客様何かお探しでしょうかー
おおー、お狐の白楼サンだー」


『?…君は確か…………誰だっけ』


「(うわなんか寂しいんですけど)…ほら、
ジーク君でーす」


『ああ』


アルバイトでもしているのだろうか、あの人の家に行くとたまにいる双子の弟が、
店指定のエプロンを身につけ立っていた。


「白楼サンお菓子見てるとかウケるー」


『(ムスッ)…ねぇ、女性にあげるとしたらどんなお菓子がいいの』


「誰かにあげるんですかー?」


『うん、妻に。ハロウィンでね』


「へーなるほどー」


多少ムカついたが子ども相手にムキになる気はない。それに、流行に詳しそうな
双子(弟)に会えたのは好都合だ。


「ハロウィンなら、カボチャのケーキとか妥当なんじゃないかなー」


『カボチャ…』


銀、カボチャ食べるかな。
それに、ケーキって。ハロウィンの菓子にしては豪華過ぎやしないか。
もっと小さくて気軽に手渡せるものが主流ではなかったか。
まあ、銀には調度良…いや、
むしろ貧相過ぎるのかもしれない。


「クリームたっぷりのケーキだったらさ、白楼サンが好きそうなことも出来るんじゃないですかねー」


『僕の好きそうなこと?』


「生クリームプレイとか」


『(僕はどんな風に見られてるんだか)…うん、楽しそうだね』


「ね、ね」


そんな変な趣味はない、わけじゃない。
楽しそうだけど、きっと子ども達もいるだろうし…親として、やはり子どもの前では避けるべきなのではないか。
うわ、いつの間にこんなイイ父親になったんだろうね、
帰ったら銀に褒めてもらわなきゃ。

とにかく、ケーキなんて買ったら
イケナイ方向へ走ってしまいそうだ。


『却下』


「えー良いと思ったんだけどなー」


『良いけどハロウィンは駄目』


名案を却下され若干拗ねている双子(弟)。
その変わらない声のトーンはなんとかならないのか、感情がないわけじゃあるまいし…現に、君が頭の中で呟いてる僕への文句も、しっかり聞こえてるんだよ。
今日は燃やさないでおいてあげるけど
いつか燃やす。


『ハロウィンには子ども達もいるからね、下手な事は出来ないんだ』


「それを早く言いたまえよ、ジョン」


誰なのジョンて。
そう心の中で俗に言うツッコミというものを双子(弟)に入れる、僕らしくないな。
当の双子(弟)は、ポムと効果音がつきそうな具合に手を鳴らし、僕の目の前辺りのお菓子棚で何かを探しだした。


「ちょ、白楼サン邪魔どいて」


…………………。
怒るな僕、好意で探してくれてるんだから、怒ったら駄目だ。とりあえず今は燃やしちゃいけない、今は。
苛々しつつも双子(弟)の視線を一緒に追っていると、あるお菓子で静止した。


「見ーっけ、はいどうぞ」


『飴?』


手渡されたのは飴だった。それも、かなりありふれた極普通の飴。
僕の妻がどんなひとか知っているだろうに何故こんなありふれたものを勧めるのか…本人はどうだと言わんばかりだが。


「これ、本当にピッタリだと思うよー」


そんなに勧められると、却下するのも気が引けたりする。もう一度見てみると、袋には紫色のチューリップが一輪。それを見ていたら、なんだか心が落ち着いた。
銀にもよく似合いそうだと思う。






…飴なのは、少しだけ気に食わないけど。





『これ、買うよ』


「え?お金払ってくれるのかねジョン」


『うん。今回は特別にね』


「おー、それはまいどありー」








僕が君にあげる飴は




君に溶けて消えてしまうけれど








飴のように甘美な君は




僕に溶けても




消えないでいて――














END






















「花言葉、知ってるのかな…ジョン」









のチューリップ

花言葉:永遠の愛





君が僕から離れていっても

必ず君を見つけてあげるよ




















『何シリアス風味に終わらせてるのさ』

(いや別に)

『ま、あなたにしては頑張った方だよね』

(私はいつも気合い十分)

『嘘つき』

(ノンノン)

『双子(弟)って意外に物知り?』

(気になればなんでも調べるヤツだからね)

『ふぅん』

(あの子見た目はアレだけど頭は良いよ)

『(今回は燃やさないでおいてあげよう)…あの店、今度銀を連れて行こうかな』

(飴はちゃんと口移しであげるんだよ?)

『ああ、それいいね』

(ニヨニヨ、銀月夜さんへのイタズラは
何にするんだいジョン)

『(またジョン…)…楽しみは夜まで
とっておくよ。銀にお菓子を用意させないようにしなくちゃね』








白楼はさも当たり前のように猫の王様とかやりそう(*^p^)



イタリア語
tulipano porporino[トゥリパーノ ポルポリーノ]
=紫色のチューリップ
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