福荒とみかん

・かわいい福ちゃんを求めた結果

・箱学時代の荒北が一人暮らし設定

・ペダルカフェほぼ毎週行ってますが死ぬほど楽しいです(無関係)


ある晴れた日の午後に実家から届いた馬鹿でかい段ボールはそれはそれは重くて、玄関から居間まで運ぶのにさえ苦労した。
何かを送ってくれと頼んだ覚えはない。
重ねて言うなら実家から仕送りが来るのはこれが初めてだったりする。
はっきり言うと不気味だ。
何を企んでいるのか、いやな予感がしてならない。

「爆発物とかじゃねェだろうな…?」

とにかく開けなければ話は始まらない。
意を決してカッターナイフを取り出し、厳重に貼られたガムテープを少しだけ切りあとは力任せに破り捨てる。
そうして開き晒された中身は―

「…あァ、なるほどネ」

箱いっぱいにこれでもかと言うほど積められたまぶしいほどに鮮やかなオレンジ色を放つ果物、みかんを目の前にして俺はそんな言葉を吐き出すしかなかった。
食べ助け募集中かよと悪態をつきながらとにかく旨そうなのを選りすぐりして、部屋にあった紙袋に入れていく。
幸い傷んでいるものは無いようで、少しなら放置しても大丈夫そうだ。

「荒北」

そんな時に福ちゃんが来てくれたのはナイスタイミング以外の何物でもない。
ダンボールをいじる手を止め、俺の背後に立つ箱根学園主将に体を向ける。

「福チャン、みかん食べる?」

ほら、見ての通り大量だからと差し出した袋の中にはおよそ数十のみかん。
押しつけていることに変わりないのだがいかんせん数が数だ、新開でも完食できるか怪しい。

「…いいのか」

「俺持ってても喰いきれないしネ」

「なら、ありがたく頂こう。」

部屋の隅にあったゴミ箱を福ちゃんの前に出せば、あぐらを組んで座って皮を剥き始めるその姿がまるで巨大熊か何かのようで思わず癒される。

「みかん好きなの?」

「りんごの次にな」

「相変わらず甘党だねェ」

かくいう俺もみかんは嫌いではない。
これを完食するまでどのくらいかかるかは分からないが、新開たちを呼ぶのは最終手段にしよう。
今はまだ、必死でみかんの皮と格闘する福ちゃんを堪能したい。

「…荒北」

「ナァニ」

「りんごを剥いてくれ」

「福チャン!!!!!」

こうしてわがままな主将の要望通り俺はりんごを剥いてみかんを頬張りつつ、穏やかな1日を過ごすのだった。





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